2002~2003年は何かと話題になることが多かったクレイジーケンバンド。テレビCMでのタイアップや地上波音楽番組への出演、更にはテレビドラマへの出演や和田アキ子への楽曲提供&プロデュース等、他ジャンルのアーティストとのコラボーレート等々。とにかくサブカル界だけでなく、段々とその名前や風貌、そして音楽が一般のシーンへと浸透しつつあったのが2003年だったように思います。
そんなCKBの人気を決定づける為に発表されたのが、通算5作目となるアルバム「777」。既に前作「グランツーリズモ」でその下地は出来ていたし、そこへ間髪入れずに連続リリースされた一連のシングルがチャートのトップ20入りしたり等、注目だけでなく結果が伴い始めていた時期でのアルバムリリースで、見事14位という結果を叩き出したのでした。それまでは「大人が熱狂する、大人のためのロック」なんて触れ込みで語られることの多かった彼等が、10代~20代の子達にも受け入れられることになったのです。正に「昭和歌謡」的なものが新しいと持てはやされていた時期と見事合致したのも多きかったといえます。
が、CKBの魅力はそんな型にはまったものだけじゃないんです。それこそホットロッド調ロックンロールあり、ジミ・ヘンドリクスばりのブルージーなヘヴィロックあり、お洒落なポップソングやボサノヴァあり、以前にもコラボレートしているRhymesterと再共演したヒップホップ調あり、ダニー・ハザウェイやマーヴィン・ゲイも真っ青なエロR&Bあり、とにかく何でもあり。それら全てを指して‥‥俺は「大人のパンクロック」と呼びたいですね。そんな型破りなところ、正にパンクじゃないですか。あのダンディな風貌で、こんなことやっちゃうんだから‥‥カッコイイったらありゃしない。
とにかく、これだけいろんな要素をひとつのバンドの中に取り込もうとすると、普通は散漫になってしまいがちなんだけど、そこは百戦錬磨の大人。とにかく何をやっても「CKB風」ロックとしてちゃんと成立しているのは、さすがとしか言いようがないです。バンドとしての力量もとにかくハイレベルだけど、やはりここは横山剣というソングライターの突出した才能、ここに注目したいところです。10年近く前から特に変わったことをやってるわけじゃない。つまり、いろんな要素を取り込みつつも、根底にあるものは頑固一徹に守り通した。その結果、時代が彼等に追いついた‥‥横山剣やバンドがその間にやってきたことはといえば、個々の力量に磨きをかけることと、如何に聴き手を惹き付けるか・楽しませるか、ということ。それらに対してちゃんと結果が伴うようになったのが、ここ数年ということなんでしょう。ホント、全てはタイミングなんだなぁと思わずにはいられませんね。
途中に入る寸劇的なジングルも面白いし、何よりも箸休めとして十分機能している。70分強、全21曲というかなりの長丁場なんですが、全く飽きさせないのはそういったバラエティ豊かさ、それらを説得力を持って聴かせるバンドの力量からなんでしょう。勿論、魅力的な歌声や歌詞もですけどね。
ここまでくると、次はどんな楽曲を聴かせてくれるのか‥‥と期待が大きくなるばかりですが、次のアルバムはどうやらベストアルバムになるようです。オリジナルアルバムに未収録のシングル曲、沢山ありますしね。ここらでひとつ大きな区切りをつけるのもいいでしょうし、そういった入門編的作品をこの時期に発表して、更にファンを増やすことにも一役買うことでしょう。とにかく、本格的大ブレイクを前に、今一度この最新作で予習しておくのもいいかもしれませんね。2003年の10枚には選ばなかったものの、これも年間通してよく聴いたアルバムの1枚です。
▼クレイジーケンバンド『777』
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