2003/11/17

浜崎あゆみ『A BEST』(2001)

  「何故『浜崎あゆみ』はつまらなくなってしまったのか?」

  いきなりファンに怒られそうな書き出しでアレですが、本心です。「じゃあ以前は面白いと思ってたのかよ!?」と突っ込まれそうですが、ええ、面白いと思ってましたよ。少なくともこのベスト盤の頃までは。正確に言えば前年(2000年)リリースしたサードアルバム「Duty」まではね。いや、俺がちゃんと彼女に興味を持ったのが「Duty」からなので、期間としては半年くらいになっちゃいますが。

  このアルバムは彼女がデビューしてからの約3年の間にリリースされたシングル曲を中心に、一応「彼女自身が選曲した」というような触れ込みで2001年3月末にリリースされています。確かリリース同日に宇多田ヒカルが待望のセカンドアルバム「Distance」をリリースし、共に400万枚を上回る売上げを記録して話題になったりしました(で、同日に2枚両方買ったバカがここにもひとりいるわけですが‥‥)。初期(デビュー~ファーストアルバムリリース時)の楽曲(ここでは"A Song for XX"、"Trust"、"Depend on you" の3曲)に関してはボーカルを再録音し、ミックスもやり直す等して最近の楽曲との均等化を図っています(どうせだったらそれ以外の曲も録り直せばよかったのに‥‥なんていうのは贅沢でしょうか)。全16曲中、シングル曲が14曲というのも非常に判りやすい選出ですし、アルバム曲が "A Song for XX"(ファーストアルバムより)と "Who..."(セカンドアルバムより)というのも理解できるんですが‥‥これ、本当に浜崎自身の選曲なんですかね? 単なるシングルコレクションじゃないですか、これじゃ。俺は彼女のライヴとか行ったこともないしライヴビデオなんてのも観たことないような門外漢なわけですが、それでもアルバムはリリースされれば聴いてきた口なんですね。そんな俺でも「‥‥へっ!?」と思うような選曲なんですね。曲順にしても頭3曲の再録音とラストの "Who..." は除くとして、それ以外の曲がただリリース順に並べられてるだけ。しかも比較的最近(このアルバムの半年前)リリースされたばかりのサードアルバムから4曲も選んでいたり‥‥

  ま、そうはいっても、どの曲も非常によく練られたメロディとそれを盛り上げる煌びやかなアレンジを持つ、高品質なポップソングなんですよ。だから選曲や曲順の違和感は感じつつも、それなりに聴けてしまう。そこはさすがと言わざるを得ないでしょうね。集大成的なベスト盤として十分な役割を果たしてるんではないでしょうか?

  と同時に、このアルバムが浜崎あゆみと『浜崎あゆみ』との分岐点であるようにも感じています。

  何故、浜崎あゆみと『浜崎あゆみ』という風に区別したのか‥‥前者(『』なし)がそれまでの浜崎であり、後者(『』あり)がシングル "M" 以降の浜崎なのでは‥‥という区別を、俺の中ではしています。例えばジョン・オズボーンというアル中男と『オジー・オズボーン』というマッドマン、ブライアン・ワーナーという繊細で知的な青年と『マリリン・マンソン』という邪悪なキャラクター‥‥今の浜崎を見ていると、どうしてもこういったアーティスト達と同じ「キャラクターとしての『浜崎あゆみ』」を強く感じるんですね。判りにくいので「浜崎」と「ayu」という風に書き分けますか(最初からそうしろよ俺)。

  "M" というのは浜崎が初めて「CREA」というペンネームで作曲に関わったシングル曲。それまでのシングル曲が所謂職業作家や他のミュージシャンによって作られたものであったわけで、当然それなりのクオリティーを保っていたわけです。ところがこの "M" という曲‥‥ミリオンに達する程売れたのは知ってるんですが‥‥俺、全然面白いと思わなかったのね。メロディに抑揚もないし、非常に彼女が歌いやすいメロや節回しを多用(悪い言い方すれば使い回し)してるし‥‥浜崎自身が他者から見た自分のイメージに忠実に、自らセルフパロディを演じてるような‥‥そんな印象を受けたのよ。で、その後連発されるシングル曲‥‥これがね‥‥ドンドンつまらなくなってくんですわ。個人的に引っ掛かる曲もあるにはあったんですが、これがアルバムとしてまとまると‥‥4作目「I am...」のことなんですけどね‥‥非常に平面的なイメージなわけですよ。上に書いたようなオジーやマンソンみたいに、浜崎がまるで『ayu』というキャラクターを演じてるかのような(そういえば、かの「rockin'on JAPAN」に取材を逆オファーしたのもこのベスト盤リリース時期でしたよね。その辺も関係あるのかしら?)‥‥このベスト盤のリリースから既に2年半以上経っていますが、その傾向は現在更に強まっているんではないでしょうか? 先日、ある歌番組でこの秋行われたツアーの映像が少しだけ流されたんですが、これが完全に「エンターテイメント・ショー」なわけですよ。つまり、それまで「コギャルの教祖」だの時代の代弁者だのと言われ続けた浜崎が、完全に割り切って『ayu』をエンターテイメントとして演じている‥‥と。最近の楽曲も完全に彼女のイメージの範疇内のものでしかなく、逆にそこにこちらは窮屈さを感じてしまうんですよね‥‥だから俺は「何故『浜崎あゆみ』はつまらなくなってしまったのか?」と最初に書いたわけです。少なくともこのベスト盤までは楽しめたはずなのに、と‥‥

  別にキャラクターを演じることは悪いことだと思わないし、それが上記のアーティスト達のように成功していれば尚更彼女にとっては良いことなんじゃないかと思うんですが、残念ながら今の浜崎を見ていると「窮屈さ」しか感じられないんですね。勿論常にシングル曲が「CREA」名義じゃないことも知ってますし、アルバムでは他のソングライターが参加していることも知ってます。けど‥‥もうひとつ何かが足りないんですよ。その欠けたパズルのピースが何なのか‥‥その答えは、もしかしたらこのベスト盤の中にあるのかもしれませんね?

  個人的に好きな部類の歌声に入りますし、あの賛否両論ある歌詞もそんなに嫌いではないんです。けど‥‥いや、だからこそもっと凄いものを期待しちゃうんですけどね。贅沢ですかね?



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投稿: 2003 11 17 01:47 午前 [2001年の作品, 浜崎あゆみ] | 固定リンク