FACTORY(エレファントカシマシ、インビシブルマンズデスベッド、downy、ナンバーガール)@フジテレビ(2002年5月3日)
フジテレビで以前は月イチ程度で土曜深夜に放送されていた「FACTORY」という音楽番組をご存じだろうか? 勿論この番組は今現在も続いていて(関東地方ではこの4月から火曜深夜に30分番組として毎週放送)、今回俺が参加したのも、その番組の収録だった。
収録とはいうものの‥‥噂には聞いていたが、普通のライヴイベントそのものだった。会場自体はお台場にあるフジテレビ局内の大きいスタジオにそのままあのセットを組み込んで、ステージ上には手際の良いスタッフが沢山いて(セットチェンジにどのバンドも15分程度だったことに驚く。フェス慣れしてるので、30分とか1時間とか当たり前だと思ってるし。まぁあれは野外とか大会場だからってのもあるんだろうけど)、非常に飽きさせない構成だった‥‥唯一、受付の午後3時から、ライヴ終了の午後10時まで、ずっと立ちっぱなしだった事を除いては‥‥あれはキツいって。フェスでもそりゃ疲れるけど、まだ途中で休んだり(座ったり寝転がったり)出来るし、何よりも同じ立ちっぱなしでもフェスは移動する為に歩いたり動いたりするから、同じ位置に立ちっぱなしの今回とは全く違うんですよ、疲れ具合が。正直、後半倒れそうだったもんなぁ‥‥
まぁ冗談はこの辺にして(いや本気なんだけど)‥‥今回観た各アーティストの感想を簡単に書いて行きたいと思う。
◎スペシャル・オープニング・アクト
前回の収録(4/19。ROSSOやLOSALIOSが出演。これも平日じゃなきゃ行きたかった‥‥)の際、当日会場でいきなりオープニング・アクトが付くことが発表され、しかもそれがモーニング娘。の安倍なつみだったという二重のハプニングがあったのだが、少なからず「また今回も娘。から誰かが‥‥」と期待していた人は多いようで、実は俺もそのひとりだったりした。
会場に入った時、ステージ上にアコースティックセット(グランドピアノや譜面台に椅子、パーカッション等)を見つけ、今回も誰かやるんだ‥‥と期待に胸躍らせていた。圭ちゃんか、かおりんか‥‥なんて具合に。
が、実際に登場したのは、FOLDER5のアキナだった。最初、ステージ後方のスクリーンにその名前が表示されても「AKINAって誰!?」って人が多かったようだ。名前が出る前に、その顔観て「アキナたん萌え~」とか言ってた俺って‥‥
バックを務めたのは、ピアノが武部さん、パーカッション及びスタンディングドラムにスティーヴ衛藤、エレキベースに吉田健、アコギに蘭丸こと土屋公平、コーラスに愛しの加藤いづみさん。演奏された曲は、やはり今回も「古き良き時代の日本のロック」というコンセプトから、RCサクセションの"ドカドカうるさいR&Rバンド"と"いい事ばかりはありゃしない"の2曲。アキナの、子供の割にハスキーな歌声にこの選曲は合ってたように思う。かなり堂々としてたし、非常に好感が持てた。1曲目が終わった後にトラブルがあって、一生懸命MCで繋ごうと努力する姿が健気だったなぁ(可哀想だよな、スタッフのトラブルなのに)。
しかし、個人的に一番嬉しかったのは、7年振りに間近で生加藤いづみさんを拝めたことでしょうか。相変わらず麗しゅうございましたが。
◎エレファントカシマシ
15分程のセットチェンジを挟んで、今回のMCであるナンバガの向井が登場。相変わらず笑わせるMCで会場大賑わい。向井ってエレカシの「生活」が大好きなんだね。その話を聞いた時、妙に納得した。「男・宮本浩次35才~」ってMC、やたら多過ぎ。面白かったからいいけど。
ちなみに、当日の向井の前説は以下の通り(「FACTORY」サイトより転載)。
最初に登場するバンドは、男=宮本浩次=35歳が、この浮き世に向けてブッチかまします。宮本浩次の生活からにじみ出た、生まれ出た数々の名曲たち。思えば12年前、己の生活の心情の吐露を作品化した、すばらしい傑作アルバム『生活』というものがありましたが、この度、男=宮本浩次=35歳の現在の生活をありのままに、そしてやさしく、激しく唄った傑作アルバム『ライフ』を発表しました。宮本浩次が唄います! 吼えます! がなります! エレファントカシマシの登場だ、馬鹿野郎!
とまぁ、とにかくエレカシである。てっきりトリだと思ってたら、いきなりトップバッターかよ‥‥こころの準備が出来てねぇってぇの‥‥と思ったら、聴き覚えのあるリズムをトミが叩き出す‥‥うげっ、いきなり"奴隷天国"かよっ!? なにげに初・生「奴隷天国」だわ‥‥超感激なんですけど‥‥けど、心の準備が出来てなかった分、ノるにノれなくて、ただ立ち尽くすのみな俺。いや、衝撃的だったんだけど。
そのまま、これまたセカンドから"おはよう こんにちは"という反則技。やっぱりエピック時代の曲は否が応でも盛り上がる。そういうハードコアな作りだし。そして最近のライヴではお馴染みのデビュー曲"デーデ"へ‥‥そうか、これって3月に出た「SINGLES」からの選曲ってことなのか‥‥な? とにかく、来てよかったと思わされた瞬間だった。
その後は、前日にリリースされたばかりの新作「ライフ」からの選曲。まだ1回しか聴いてなかったにも関わらず、耳に残った印象的な曲ばかりが演奏されたので、ちょっと安心。宮本曰く、今日は5/6からスタートするツアーの前哨戦らしいので、もしかしたら今回の選曲はツアー本編のショートバージョンといった感じなのかもしれない。
興味深いのは、今回はステージ上にサポートメンバーがいること(キーボード)。最近ではA-DATを駆使していたが、新作の曲にはシンセやらブラスのパートが多いので、機械を多用するのではなくて、あくまで生身の人間を向かい入れた‥‥という点に非常に好意を持った。機械を多用すると、ライヴでのアドリブが効かなくなるので、これはこれでいいのでは?
ラストは小林武史プロデュースシングル3部作。思ってた以上に"あなたのやさしさをオレは何に例えよう"がいい感じだったな。これが本ツアーでも本編ラストになるのかな。
まぁイベントで45分のステージってこともあるし、新譜出た後なので古い曲が少なくなるのは判ってたけど、やっぱりガストロやコレスポのどっちかは聴きたかったなぁ‥‥
[SETLIST]
01. 奴隷天国
02. おはよう こんにちは
03. デーデ
04. 女神になって
05. 部屋
06. 秋 -さらば遠い夢よ-
07. 普通の日々
08. 暑中見舞 -憂鬱な午後-
09. あなたのやさしさをオレは何に例えよう
◎インビシブルマンズデスベッド
このバンドに関しては全く知識もなく、名前を聞くのも初めてという状態。一応知らない人の為にオフィシャルサイトを紹介しておきましょう(→こちら)。
‥‥はい、ヴィジュアルを目に焼き付けましたでしょうか‥‥そういうバンドです。ただ、音は見た目以上に激しく、グラムというよりもエモがかったSONIC YOUTH的な轟音・爆音で、演奏もしっかりしてる、ただヴォーカルの彼が見た目以上に面白いキャラでして‥‥更に悪趣味の岡村ちゃんというか(いや、これは最高の誉め言葉なんだけど)。マイク股間に当ててしごいたり、ギタースタンドにマイクくっつけたり、スピーカーの上によじ登ったり、最後には布団持ってきて客席に投げ込んだり(爆)‥‥正しく布団がふっとんだといったところだろうか‥‥んなわきゃないし。
個人的には進んで聴くタイプのバンドじゃないが、こういう機会でしか出会えない音だと思うので、それなりに堪能しておいた。好きな人は思いっきりハマるタイプじゃないだろうか?
[SETLIST]
01. 玉砕
02. 接触
03. 踊るオンナ
04. 限りないギター
05. 摩擦
06. 交わる吐息
07. デリー
◎downy
名前だけは聞いたことあったが、このバンドもこの日初めて音に触れた。始まる前にステージ後方の壁に白い布を被せ、楽器のセッティングもステージ四隅にそれぞれドラムセットやアンプを置くといった感じで、始まる前からかなり風変わりな印象を受けた。
で、実際に始まってみて、その印象は間違いではなかった。この日のライヴは常に明るい状態で進行していたのだが(あくまでテレビ収録がメインなので、通常のライヴより明るいのだろう)、downyの時だけ真っ暗に。ステージ上には4人(ボーカル&ギター、ギター、ベース、ドラム)しか目に入らないが、実際には5人組だそうで、残りのひとりはVJだそうだ。成る程、ステージ後方の白い布に音とシンクロするように映像が映される。まるでテクノ系のイベントにでも来たかのように。
サウンド的には‥‥判りやすく言えば、RADIOHEAD以降のバンドということになるのだろう。ギター2本が複雑に絡み合い、ディレイだとかコーラスを多用し、それでいて轟音爆音だという。何となく「THE BENDS」辺りのレディヘみたなサウンドプロダクションだった。リズムもドラムとベースが複雑に絡み合ったり変拍子だったりと、どことなく「OK COMPUTER」以降のレディヘを思い浮かべる。ボーカルの線の細い歌声もまた、トム・ヨークのそれを彷彿させたし。
ただ、まるっきりレディヘというわけでは勿論ない。曲調は独特な印象を受けるし、轟音に飲み込まれそうなボーカルも一聴して英語詞のようだが、実は日本語だったりするし(今日CDを買ってきて、初めてその事実に気付いたのだが)、かなり独特なバンドだと思う。
面白かったのは、1曲1曲が終わった後、どこで拍手をしていいのか判らない観客。それだけヒンヤリとした緊張感が常に漂っていたということだろう。エレカシやナンバガで暴れようと思ってた若い子達にはこういうバンド、どう写ったんだろうか?(当然ながら、俺的にはストライクゾーンだったが)
UKロック好き、レディヘファン、KING CRIMSON辺りのプログレ好き、そしてアブストラクト系テクノが好きでギターロックも行ける口の人に是非オススメ。
[SETLIST]
01. 酩酊フリーク
02. 葵
03. 野ばなし
04. 象牙の塔
05. 黒い雨
06. 無空
07. 左の種
◎ナンバーガール
バンド史上最高傑作といえる「NUM-HEAVYMETALLIC」リリース後、最初のステージがこの「FACTORY」だった。勿論、レコーディング終了後にも幾つかのイベントをこなしているが、我々がその全貌に触れてからという意味では、まさに初お披露目と言えるだろう。個人的には、今年聴いた中でブッちぎりのトップ、いや、早くも今世紀を代表するロックアルバムだと思っている。それくらい凄い内容なのだ、このアルバムは。
司会アシスタントのキタキマユが登場し、向井の代わりにMCを務める。そして登場したナンバガ‥‥ドラムセットがやけにステージ手前にあるのだが‥‥実は、そのくらいしかまともに覚えてなかったりする。というのも、演奏が始まった途端に俺、頭が真っ白になるくらいの轟音にやられ、そして気持ちよく踊っていたからだ。曲、なにやったっけなぁ‥‥"TATTOOあり"とかはやってたなぁ‥‥新作からは"CIBICCOさん"、"MANGASICK"、"delayed brain"とかかなぁ‥‥あ、当然名曲"NUM-AMI-DABUTZ"も。後はそのシングルのカップリングとかかな?(買ってないので判らない)
最後は"OMOIDE IN MY HEAD"(実際にはラスト前だったみたい。熱くなっててもう1曲やったの忘れてた/汗)、そしてアンコールに"鉄風 鋭くなって"。これはよく覚えてる(だって一緒に唄って踊ってたから)。全然ライヴレポートらしいこと書けてないが、そのくらい久し振りに熱くなったライヴだったってこと。普段ライヴ観てても、一瞬素に戻る瞬間ってのが一度はあるんだけど、それがなかったもんなぁ‥‥45分、本当にやったの? 実は20分くらいしかやってないんじゃないの?なんて思った程で。そのくらい内容の濃いライヴだった。
とにかくね、各メンバーの演奏もいいし(特にひさ子さんは更に凄いことになってたような)、向井のMCも相変わらず素敵だし、音は馬鹿デカいし、曲は抜群にカッコイイし‥‥まさかこのバンドがこんな風に化けるなんて、去年の夏、誰が想像した!?
ナンバガについては‥‥言葉で表現する以上にアルバム聴け、と。昨年夏のフジロックでのステージより、更に凄いことになっていた。こりゃ単独公演、観なきゃマズイだろう‥‥そう思わせるに十分なライヴだった。
MCに向井が決まった時点でトリが決まったのか、それともアルバムを聴いたスタッフが決めたのか判らないが‥‥正直に言う。大好きなエレカシが‥‥いくら"奴隷天国"を演奏しようが‥‥完全に霞んでしまった程、今のナンバガの勢いは凄い。悪いことは言わない。絶対に今回のツアー、観ておいた方がいい。仮にもロックファンを自称するあなたなら‥‥
[SETLIST]
01. TATTOOあり
02. CIBICCOさん
03. NUM-AMI-DABUTZ
04. FIGHT FIGHT
05. delayed brain
06. MANGASICK
07. OMOIDE IN MY HEAD
08. I don't know
--アンコール--
09. 鉄風 鋭くなって