ぶっちゃけた話、最初は行く気はなかった。だっていくら「元」とはいえ、そこは「モーニング娘。」だった人、絶対にチケット争奪戦になるのは判っていたし(しかも熱望された復帰だし)、それに‥‥正直、モーヲタの皆様と同席するのも何かなぁ‥‥と消極的になっていたのも事実。
が、発表からチケット発売まで日が経つにつれ、当初の気持ちとは裏腹に「どうしてもこの目で見たい」という気持ちが勝ってしまい、それと同時に自身も「モーヲタ」と化してしまっていたという泥沼状態(笑)。多少の躊躇はあったものの、もう怖いものなし状態に突入しつつあったので、何がなんでもって気持ちでチケットをゲットした(しかもヤフオクまで使って全2公演押さえる力の入れよう)。
ライヴ10日前にアルバムがリリースされた。正直、たじろいだ。「だ、大丈夫なのか、市井ちゃんはよぉ?」と。1年半のブランクは、こんなにも大きいものなのか? と同時に、決して隠居していたわけじゃない中澤姐さんまで‥‥ライヴへの不安要素が、最も核となる「歌」だったというのも、如何なものだろうか?(苦笑)
まぁ観たまんまの感想を書いていこうと思う。まずは1回目の昼公演から。入場時間が約30分近く遅れ、急激に寒くなったこの日は日中でも肌を刺すような冷気で、身体がガタガタ震えていた。しかも自分の整理番号は「B300番台」‥‥Aが800番台まであるらしいので‥‥結局、入場までに更に30分近く要し、結局開演予定時間にフロアへ‥‥おいおい、冗談だろ!? 先日のエレカシが嘘のように、後ろの壁まで人でギュウギュウだ。こんなライヴハウス、観たことねぇぞ!?って位に人、人、人。ミキサーを囲う金網にまでへばりついてる奴らもいる。とりあえず俺は、出来るだけ前へ移動しようとしたが、結局ステージ向かって右側、ミキサー卓の脇辺りを陣取る。段差が付いているとはいえ、かなり前が見えにくい状態。普段女性客が多いライヴにばかり足を運んでいたが、今日の客層はご存じの通り。が、意外と女性も目に付いた。1割いたかどうかは疑問だが、とにかく結構高校生以上の女の子~OLさんぽい人までいた。映画「ピンチランナー」で市井が着ていたジャージのコスプレをした女の子もいれば、「恋のダンスサイト」衣装を着た男の子(爆)もいる。あ、「ちょこっとLOVE」の水色パーカー&ホットパンツの娘もいた。かなり寒そうだったが。
客入れのSEはカントリーだった。フォークライヴなのにカントリーかよ‥‥と思いながら開演を待つ。ステージ上には両脇にキーボードが各1台、中央にドラムセット。その両脇にギターアンプがある。エレキとアコギのサウンドチェックをしてたので、どうやらギタリストはふたりいるらしい。そしてベース‥‥6人編成バンドのようだ。フォークのわりに大所帯だなぁ‥‥まぁアルバムを完全再現するんだろうけどさ。ステージとフロアの間には薄い、透ける横断幕のようなもので仕切られていた。ちょっとALICE IN CHAINSの初来日を思い出したよ。
さて、ようやく暗転し、幻想的なシンセサウンドが会場を包む。アルバムの冒頭をアレンジしたようなストリングス系の音を、ヲタ共の「さっ、やっ、っかぁ~!」コールが引き裂く。そしてステージ上にバンドメンバーが現れ、準備を始める。一通り準備終了した後に、更にステージ中央に人影がふたつ‥‥それまでのメンバーと比べれば小柄で、明らかに女性だというのが判った。いよいよだ‥‥シンセの音がそのままアルバム冒頭の"この広い野原いっぱい"へと続く。その音に合わせて市井が唄い出す。直線的な、クセの強くない彼女の歌声が会場内に響く。思ったよりも力強かった。そしてバンド全体が演奏に加わった時点で、例の横断幕が落ち、我々の目の前に市井紗耶香が登場する。ステージ向かって右側が中澤姐さん、左が市井だ。アルバムでは結構不安定だった市井のボーカルも、思ったよりも力強くて安心して聴いていられた。きっとレコーディング終了時点から反省点を生かして、練習に練習を重ねたのだろう。唄い込んだ事によって、感が戻ってきたのかもしれない。最初の2曲は市井がリードで姐さんがハーモニーをつける形で進む。が、姐さん。ピッチがずれてる‥‥聴いててちょっと気持ち悪く感じる瞬間が結構あった。テレビとかでもフラット気味で唄ってる事が多く、前半は「??」と思うことが多々あった(が、ソロで唄った辺りからエンジンがかかり始め、その後は特に気にする程ではなかった)。1曲唄い終えた後に、市井が「ただいま~!」と挨拶。大歓声、いきなりジンときてしまった。
"待つわ"や"あ~よかった"はふたりでパートを分け合って唄う。特に後者はアルバムでは地味な印象のアレンジだったが、ライヴでは原曲に比較的近いアレンジに修正されていた。中盤のブリッジでのふたりの掛け合いも結構迫力があって、この日の聴き所のひとつとなった。
その後MCが入り、ふたりで過去の娘。時代の幻のユニットについての話やたいせーについて触れた後、中澤姐さんコーナーへ突入。姐さんもそのままひとりでMCを続ける。夏のハロプロライヴでちょっと唄ったけど、実質本格的なライヴは娘。卒業の4月以来なので、前日から緊張していた、とか。ライヴハウスで唄うのは初めてなので、ド緊張してた、とか。そうか‥‥きっと冒頭のフラットは緊張からきたものなのかもしれない。
そしてアルバムにも収録されている"かもめはかもめ"を披露。アルバムではちょっとヤバめな箇所もあるにはあったが、この日のライヴではすごくいい感じにキマッていた。いやらしくならない「艶っぽさ」は娘。では感じられない要素。この日の姐さんは自身の持ち味を思う存分発揮したと思う。それは続く自身の持ち歌"二人暮し"で更に浮き彫りに。たいせーがリアレンジした「ピアノ+ガットギター」バージョンは、彼女の儚く切ない唄い方にピッタリなのだ。正直、俺は姐さんの歌には何も期待していなかったのだけど、このライヴを通過した事によってかなり見方が変わった。やっぱりこの人、つんくと一緒に仕事してちゃダメだ。もっと外に出てっていろんなプロデューサー/ソングライターと仕事しなきゃ。かなりの人見知り屋らしいが、外に出ることを恐れちゃいけない。この人の魅力、まだ完全に出切っていないのだから。
ここで衣装替えした市井とバトンタッチ。姐さんが引っ込み、ワルツのリズムに合わせて名曲"サルビアの花"が唄われる。姐さんと違って、少年のようなストレート歌唱。これを「下手」ととるか「素直」ととるかで、彼女への評価はかなり違うものになるだろう。俺は、こういったフォークの名曲群‥‥エヴァーグリーンと呼ばれるような楽曲に対して、彼女がこういう唄い方を選んだ事を支持するつもりだ。娘。の頃みたいなコミカルな唄い方だって出来る人なのだから。それに、市井はまだ「自分探し」の最中でもあるのだから。ここで出来上がってしまっては、今後が面白くない。まだまだ先は長いのだし、焦ることはない。外野が何を言おうがマイペースで、「これだ!」と胸を張れる「市井紗耶香スタイル」を見つけて欲しい。
唄い終えると、市井がMCを始める。来年1月に写真集が出る事や、来春にはたいせーとユニットで再デビューする話など、初めて聞く話題から既に知ってる話題まで、とにかく「これからの市井は走り続けるので、みんなついて来てね」この一言に尽きるだろう。1年半の休憩後、彼女はやはり走る事を選んだ。けど、娘。時代のような「なりふり構わない/周りが見えてない走り」から、「余裕を持って、走る事を楽しむ」姿勢へと成長した彼女がそこにはいる。大丈夫だ、きっと彼女は更に飛躍するだろう。そんな彼女が「この曲は自分にとっても思い入れがある、大切な曲。この曲を皆さんに捧げます」と言って始まったのが、"なごり雪"。確かにファンにとっては「市井の復活」こそが「春」なのかもしれない。けど、俺にとっての「春」はまだお預け。焦ることはない。
2曲続けてスローテンポの曲が続き、急に照明が明るくなる。アップテンポの曲のスタートだ。姐さんが衣装を替え後方に位置し、"ルージュの伝言"が始まった。アルバムには入っていないユーミンナンバーだ。姐さんはバックアップコーラスに回り、完全に市井の独壇場。こういう曲が市井には一番似合ってるな。やはりボーイッシュで元気な印象が強い分、こういう明るくてポップな曲の方がさっきのバラードよりも魅力的に感じられた。リズムの取り方が娘。時代と何ら変わってなくて、ちょっと微笑ましかったな(娘。の「真夏の光線」でのリズムの取り方、あれと一緒だった)。
続いて今度は姐さんがフロントに立ち、市井が後方でタンバリンを持ってコーラス。"木綿のハンカチーフ"という意外な選曲。姐さんの声がまたこの曲にピッタリ。太田裕美と声が似てると思ったのだが、どうだろう? 彼女自身、初めて演歌でソロになった時、キャンペーンでよくこの曲を唄っていたそうだ。だから唄い慣れてるってのもあるのだろうけど、これまでのどの曲よりもハマッた。
ここで一段落。アルバムにも参加してる人がゲストで来てるらしい。そして紹介されたのは、ばんばひろふみだった。「最初、この話をいただいた時、市井の事を知らなかった」とか「レコーディングスタジオに行った時、市井が『おはようございます』と挨拶しに来てくれたが、てっきりバイトの女の子だと思った」というファンにとっては顰蹙モノのMCの後、アルバムでもデュエットしてる"或る日突然"を披露。市井が急に緊張気味に。気心知れた姐さんと違って、さすがに大先輩を前にしては市井も怖じ気づいてしまったのか、急に声が小さくなったような気が‥‥単にばんばの声量があるだけか。そうそう、市井の声量がちょっと弱いかな、ともこの日は感じた。姐さんが気怠い感じの唄い方のイメージあるけど、実際には相当声量があったし(これもミュージカルをこの1年に2回も経験した賜物だろう)。ちゃんとボイストレーニング、やってたんだろうか?
そして更にゲストがいるとの事で、紹介されたのが堀内孝雄。要するにふたりとも事務所の大先輩って事か。軽くオヤジギャグを挟んで、アルバムにも収録されているアリスの"秋止符"を、この日は大先輩を立てて市井はコーラスに回り、堀内がメインで唄った。それまでの「ライヴハウス」感覚が急にここで「NHK・堀内とばんばの、ふたりのビッグショー」状態になってしまったのは言うまでもないだろう。更に堀内は持ち歌をもう1曲"君の瞳は10,000ボルト"も熱唱し、「2回目もヨロシク!」と残しステージを去った。ここでMC込みで結構な時間を食ったなぁ。
そのままの勢いで、アルバム未収録の井上陽水"夢の中へ"で盛り上げ、バンドメンバー紹介を挟んでフィナーレへ。続けて本編最後の曲"白い色は恋人の色"へ。アルバムよりもアップテンポで盛り上げ系アレンジになっていた‥‥ような。既にこの頃には俺もヒートアップして、我を忘れていたので(笑)正確な記憶が‥‥気付けば熱狂の中、市井と姐さんはステージを去っていた。あっという間だった。勿論、アンコールを求める大きな拍手と紗耶香&裕子コールが会場を包む。
アンコールはモーニング娘。のセルフカバーとなる"ふるさと"。アルバムでは頼りないイメージが強かったこの曲も、更に練習したのか、かなり聴けるようになっていた。特にコーラスが工夫されていた‥‥というよりも、娘。バージョンのコーラスになっていただけだが。その方が違和感なく聴けて、こちらとしても嬉しかったな。この曲は娘。の曲の中でもかなり難しい部類の曲なのだが、ふたりはよく頑張ったと思う。そして、唯一選ばれた娘。の曲がこの"ふるさと"でよかったなぁとも思った。
ここで再び戻ってこれた事に対する喜びと、待っていてくれたファンに対する感謝の言葉が述べられる。そして13人になった娘。同様、今後も市井と姐さんは走り続けていくので、今後も応援ヨロシクと締めて、そのままアルバムラストの"翼をください"へ。どうやらこの曲で終わるようだ。頭と最後はアルバムと同じ構成。盛り上げ方としてはかなりよかったな。ちょっと姐さんの喉がキツそうかなぁ、と感じる瞬間があったものの、そこまで気にする程でもなかった。感動の嵐の中、ふたりはステージを後にした。最高だ。もうここまできたら俺、モーヲタでもなんでもいいや。いいもんはいい、それだけだよ。
これで終わりと思われたが、それでも拍手や歓声は鳴りやまず、そして客電も付かないまま。もしかしてダブルアンコールなのか? 時計に目をやると、既に17時を大幅に回っている。次の回の開場時間は18時‥‥夜公演もどうやら多少ずれ込むようだ。
そんな事を考えていたら、急にステージが明るくなり、サンタの格好をしたふたりが‥‥か、可愛い‥‥(爆)そして「みんなへのクリスマスプレゼント」と称して、この日2曲目のユーミン"恋人はサンタクロース"を我々に送ってくれた。この曲は前半キーの低いパートがあるのだが、市井はまだいいけど、姐さんがキツそうだったな。まぁサビになるとふたりとも、かなりいい感じなんだけどさ。やっぱり市井にはこういう曲がいいな。たいせー、頼むよ(笑)
結局17時半近くになってライヴは終了。さすがにこの後もあるせいか、終わりは淡々としたものだった気が。まぁ俺はもう1回観れるから気にはしないが。
[SET LIST]
01. この広い野原いっぱい
02. 恋人もいないのに
03. 待つわ
04. あ~よかった
---MC---
05. かもめはかもめ(姐さんソロ)
06. 二人暮し(姐さんソロ)
07. サルビアの花(市井ソロ)
---MC---
08. なごり雪(市井ソロ)
09. ルージュの伝言(市井ソロ)
10. 木綿のハンカチーフ(姐さんソロ)
---MC---
11. 或る日突然(市井&ばんば)
---MC---
12. 秋止符(堀内:リード、ばんば&市井&姐さん:コーラス)
---MC---
13. 君の瞳は10,000ボルト(同上)
14. 夢の中へ
15. 白い色は恋人の色
---ENCORE---
16. ふるさと(娘。カバー)
---MC---
17. 翼をください
---ENCORE---
18. 恋人はサンタクロース