サザンオールスターズ『涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~』(2003)
サザンオールスターズとしては2年半振りくらいですか? 2001~2年って桑田佳祐がソロで散々動き回ったせいか、そんなに長く出てなかったって気が全然しないんですけどね。まぁそうはいっても、その間にギターの大森隆志の脱退という大事件があたりしたので、結局はそれが原因でサザンとして活動しなかった(できなかった)のかなぁ‥‥なんて邪推してみたり。まぁ最終的には残された5人で活動を続行することを選んだのですから、良しとしましょう。
今年でデビュー25周年。そういう年にリリースされる新音源1発目は、新曲5曲も収録されたボリューム満点の1枚。5曲中(とはいっても、3曲目"OH! FRESH!! ~ドクダミ・スパークのテーマ~"は1分にも満たない、パロディ的コマーシャル形式の1曲なんですが)3曲にタイアップが付き、既に6月からテレビでバンバン流れているという露出振り。相変わらずです。
タイトルチューン"涙の海で抱かれたい ~SEA OF LOVE~"は、某月9ドラマの主題歌。トレンディドラマ(死語)主題歌ということもあって、それらしい内容の出来になっていて、セルフパロディになるかならないかのギリギリラインにある1曲でしょうね。別にネタ切れとかワンパターンとは思いませんよ。むしろ聴き手(ここでは我々音楽ファンではなく、普段あまりCDを買わないような層)はこういうものを一番求めているでしょうからね。それにやはりサザンは、そういったポップ・イコンをこれまでも引き受けてきたわけだし、25周年という記念すべき年だから尚更余計に意識してるんじゃないですかね。「好き」か「嫌い」かで分けるなら、断然「好き」で。
2曲目"雨上がりにもう一度キスをして"は、某航空会社のCMソングとして6月からテレビで流れてるポップチューン。メンバー本人が出演してることでも知られてますよね。これも過去のサザン節をそのままなぞらえたような楽曲で、特に目新しい要素・実験的要素は皆無。聴き手が安心して手を伸ばせるという意味では、これら2曲は大成功を収めていると思います。当然「好き」だし。
3曲目"OH! FRESH!! ~ドクダミ・スパークのテーマ~"は割愛して、4曲目"恋人は南風"も、上記の2曲同様の流れを持つミディアムポップ。3曲に共通してるのは、「夏にリリースする楽曲」と「25周年を記念するリリース」という2点でしょうね。家で、カーステレオで、町中で、リゾート地で、とにかくどこで聴いてもハマるようなポップチューン。これらが最高の出来とは言いませんが、ある意味最強ではあるでしょうね。3曲の中では、実はこれが一番趣味に走ってるように感じられます。コーラスアレンジにしろ、凝ってますしね。
ラストは"経験II(セカンド)"。某歌番組でのゲームで桑田が負けたことから、その番組テーマ曲として作らされた、的設定を持つこの曲、唯一のロックチューン。こういうナンバーを聴くと何故か安心するんだよね。サウンド的には初期~中期のような「毒」は感じられないし、ここ数作のアルバムにあったような実験要素もない直球なんだけど、中盤の静かになるパートのアレンジと歌詞に救われてるような。アレンジやコード進行が単調だから余計にそう感じるんでしょうね。それと、ここんところ桑田ソロで極太ロックチューンを聴かされてきたので、どうしてもそっちを比べちゃうんですよね‥‥仕方ないわな。
というわけで、今回のシングルはマニアックにはならず、サザンを長く支えてくれたコアな層というよりも、もっと広い層に向けて放たれたシングルという気がしますね。コア層には「勝手にシンドバッド」の限定盤を用意し、みたいな(んなわきゃないか)。多分、この後数枚シングルを切って、来年の夏~秋にはアルバムが待ってるんだと思いますが(いや、もしかしてもっと早いかも!?)、個人的にはそっちでの爆裂具合に期待。ただ、だからといってこのシングルをないがしろにするつもりはないですよ。これはこれで「ひとつの作品集」としてちゃんと完成されているし。これを書いてる今、まだ梅雨明けしてないので、きっと梅雨明けした後に改めて聴いたらもっと気持ちよく響くかもね。
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