ぼくのりりっくのぼうよみ『Noah's Ark』(2017)
2ndアルバムにしてこの圧倒感。アルバムの主役が現役大学1年生の10代とは思えないほどの深みを持つ……いや、10代という若さがあるからこそ生み出せる深みと言ったほうが正解なのかもしれない。新年早々こんな衝撃と感慨深さを与えてくれる1枚の誕生に、彼の倍以上生きているオッサンは「2017年、始まったな」と思わずにはいられないよ。
「ノアの方舟」と題された今作は“救い”をテーマに進行する、非常にトータル性の高い作品集。単なるヒップホップの枠には収まりきらない、若い世代がリアルに感じる雑多なサウンドに、洪水のように溢れ出るものの非常に詩的で、一言一句がボディブロウのように効いてくるリリックが乗ることで生まれる不思議な高揚感と刹那感(と、ほんのちょっとの絶望感)に満ち溢れています。
もし今自分が彼と同世代だったら、きっとこの世界観に己を投影しすぎてこじらしてしまうんじゃないか……こんなに最高なアルバムと共生できる現代の10代が、ただただ羨ましい。今後日本の音楽を語る際に「『Noah's Ark』以降」と表現されるべき、テン年代の重要作品と断言させてください。
※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。
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