MOTLEY CRUE『THE DIRT SOUNDTRACK』(2019)
3月22日からNetflixにてついに配信開始となりました、MOTLEY CRUEの自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』。本当は『DOWNLOAD JAPAN 2019』関連の取材やそれに伴い遅延していたほかの仕事の影響もあり、実際に映画を観るのはこの土日になりそう……と思っていたんですが、金曜深夜に観てしまいました、結局(苦笑)。率直な感想についてはこちらにてご確認いただけると幸いです。
で、公開と同時にリリースされたサウンドトラックアルバム(と呼んでいいのかな?)のほうは発売開始と同時にしっかりダウンロード購入して、先に聴かせてもらいました。
ということで、本日紹介するのはMOTLEY CRUEの自伝映画サントラにして最新ベストアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』です。
アルバムには映画公開前に先行配信された、映画の主題歌的楽曲「The Dirt (est. 1981)」やマドンナの名曲カバー「Like A Virgin」など新録楽曲4曲と、映画の主軸となる80年代前半(1981年の1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』、1983年の2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』)の楽曲を中心とした過去のナンバー14曲を収録。バンド創世記の話も多く含まれていることから、インディーズ時代の楽曲で構成された『TOO FAST FOR LOVE』収録曲が最多の5曲含まれているのは納得。『SHOUT AT THE DEVIL』からも、普段のベスト盤で選出される機会のない「Red Hot」を含む4曲が選出されています。
と同時に、バンドとしてはネガティヴな話題(ヴィンス・ニールの交通事故、ニッキー・シックスのオーバードーズによる心停止など)が続いた3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)、4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)の楽曲がそれぞれ1曲ずつ、そこからバンドとして起死回生を図った5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)の楽曲が3曲選ばれているのは、まあ理解の範疇かな。特に『DR. FEELGOOD』からこの3曲(「Same Ol' Situation (S.O.S.)」「Kickstart My Heart」「Dr. Feelgood」)というのも、予告映像を観る限りでは納得いくし。
問題となるのはやっぱり新録4曲ですよね。「The Dirt (est. 1981)」は映画でトミー・リー役を演じたラッパー、マシン・ガン・ケリーをフィーチャーしたアンセミックな1曲。活動停止から3年以上経った今でもトミーっぽいドラミングに、いかにもミック・マーズなギターフレーズやソロ、ヴィンスのこの声が乗れば間違いなくMOTLEY CRUEになることを証明してくれた意義は大きいと思います。うん、単純にカッコいい。現時点でのラストアルバム『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)の延長というよりは、90年代末のトミー脱退直前からオリメンが再度揃う2枚組ベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』(2005年)あたりまでの彼らを彷彿とさせるカラーや雰囲気がある楽曲だなと。当然ながら一発で気に入りました。
「Ride With The Devil」もその延長線上にあるダークな楽曲。派手さはないものの、最近のニッキー・シックスらしさ……SIXX: A.M.っぽさも見え隠れする“アルバムの中の1曲”といった印象。うん、悪くない。3曲目「Cash And Burn」も同系統のヘヴィチューンで、いかにもニッキーらしい。モダンさも提示されており、正直この3曲の路線でアルバム1枚聴いてみたいと思ったくらい。『SAINTS OF LOS ANGELES』もあれはあれで悪くなかったけど、どこか“品が良すぎる”ところもあったので、これくらいのアクの強さがある楽曲で占められた作品ならきっと『SAINTS OF LOS ANGELES』がイマイチだと思ったファンも納得させられるはず。あと、プロデュースがボブ・ロックというのも大きな鍵になっているんじゃないかな。先に挙げた時期からのつながりは、これによるものもあるでしょうし。
ラストは「Like A Virgin」。これはギャグとして受け取っておきます(笑)。バカだなあ、もう。まあ、80年代や90年代だったら彼らがこの曲を選ぶことはなかったでしょうし、これも2019年ならではかなと。
思えば80年代の楽曲を軸にしたベストアルバムって、メンバー公認ではこれまでありそうでなかったものだと思うので、映画を楽しむという意味はもちろんのこと、輝かしいバンドの最盛期に思いを寄せるという意味でも興味深い1枚かな。新鮮味のない既発曲が半数以上ですが、個人的には楽しめる内容でした。
▼MOTLEY CRUE『THE DIRT SOUNDTRACK』
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