WHILE SHE SLEEPS『SLEEPS SOCIETY (SPECIAL EDITION)』(2022)
2022年6月3日にリリースされたWHILE SHE SLEEPSの5thアルバムのリパッケージ盤。日本盤未発売。
昨年4月に発表しUK総合チャート59位、同ロック&メタルチャート7位を記録した『SLEEPS SOCIETY』から、一部楽曲の別バージョンや新曲などを追加・差し替えする形で、オリジナルの11曲から16曲へとボリュームアップした本バージョン。カラフルなオリジナルのアートワークから、黒地で木目調のシックなデザインへと変更され、不思議とゴージャスさが増す結果に。これはこれで好きだな。
気になる内訳のうち、差し替えになったのがM-3「Systematic」。こちらはラウ・レイノルズ(Vo/ENTER SHIKARI)のラップをフィーチャーした新バージョンに変更され、これはこれでカッコいい仕上がり。もともと本作、「Nervous」にはサイモン・ニール(Vo/BIFFY CLYRO)、「No Defeat For The Brave」にはデリック・ウィブリー(Vo/SUM 41)がそれぞれゲスト参加していたので、より豪華さが増しましたね。
また、新たに追加されたトラックのうち「Eye To Eye」「The Enemy Is The Inner Me」「Fakers Plague」「The Long Way Home」の4曲がアルバム未収録だったナンバー。このうち「Fakers Plague」は2019年12月にデジタルリリース済みだった1曲で、前作『SO WHAT?』(2019年)発売後に配信された楽曲なので、マインド的には前作寄りなんじゃないかと思ったら今作側だったんですね。
「Eye To Eye」はこのリパッケージ盤からのリード曲ですが、キャッチーなシンガロングパートを含むアップテンポのモダンメタルチューン。『SLEEPS SOCIETY』オリジナル盤にはなかったタイプで、今作の印象を良い意味で変えてくれる効果を持つ1曲です。一方、「The Enemy Is The Inner Me」は適度なデジタルテイストを含むキャッチーなナンバー。路線的にはアルバムの流れを汲むものですが、方向性的にはさらに一歩踏み込んだ感があるのでは。そして、「The Long Way Home」はヒップホップやエレクトロニカの影響下にあるチルナンバー。アルバムではひとつ前に置かれた「Fakers Plague」が同じくデジタル色の強い方向性だけに、この流れは非常に良いのではないでしょうか。さらにその前に配置されたタイトルトラック「Sleeps Society」からの3連続で、このバンドが新たに放つ強烈さが増幅される結果になっていますしね。
そして、「The Long Way Home」に続くのがもうひとつの新録曲「You Are All You Need (Acoustic)」。M-2に配置された楽曲の別バージョンですが、同じ“静”でもエレクトロニカからアコースティックへと流れる構成は非常に興味深いものがあり、これはかなり良いのではないでしょうか。ハーモニー/コーラスワークを強調したアレンジも好印象ですし。これがあるから、最後の2曲(「Call Of The Void (feat. Sleeps Society)」「DN3 3HT(The End)」がより活きていますし。
2021年に発表したものの、同作を携えたツアーが思うように行うことができず、1年前よりも状況が好転し始めたこのタイミングに新曲を追加してアルバムをもう一度プロモーションしよう、というアイデア自体はいろんなバンドが試みています。WHILE SHE SLEEPSの今作も同様なのですが、彼らの場合バンドが昨年の時点で挑戦した新規軸がちゃんと伝わり切らなかったので、このリパッケージ盤は彼らの変化をよりわかりやすい形で伝えるという意味でも好企画なんじゃないかと思います。全16曲/67分とかなり長尺な作品になってしまいましたが(オリジナル盤は約44分でしたしね)、アルバム自体の印象はより良くなった気がしています。
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