TERENCE TRENT D'ARBY『INTRODUCING THE HARDLING ACCORDING TO TERENCE TRENT D'ARBY』(1987)
1987年夏にリリースされた、テレンス・トレント・ダービーのデビューアルバム。デビューシングル「If You Let Me Stay」が全英7位/全米68位という好スタートを飾ると、続く「Wishing Well」が全英4位/全米1位を記録。その後も「Dance Little Sister」(全英20位/全米30位)、「Sign Your Name」(全英2位/全米4位)とシングルを続発し、アルバム自体も全英1位(5xプラチナム)/全米4位(ダブルプラチナム)の大ヒットとなりました。
デビュー当時は“マイケル・ジャクソン的ポピュラリティの高い、汎用性プリンス”的なポジションで受け入れられていた記憶が。マイケルの部分は納得するものの、プリンスとの比較はすべての楽曲を自作自演するという点と黒人というルーツ的な部分が重なることで、この比較が始まったのかな。確かにこの頃のプリンスといったら、ソロ名義でどんどんマニアックな方向に突き進んでいましたし(けど、楽曲自体はポップなものが多かったんですけどね。ただ、わかりやすさという点では80年代前半と比べて弱かったかもしれないというだけで)、そう言われてしまっても仕方なかったのかな。
ロック、ファンク、R&Bをベースにしながらも、ポップミュージックとしての完成度も非常に高い楽曲ばかり。ヒットシングルはどれも耳馴染みが良く、なおかつ一度聴いたら忘れられないキャッチーさが備わっている。「If You Let Me Stay」のサビの突き抜け感といったら、ねえ。
かと思えば、「Wishing Well」みたいなプリンス直系のダークファンクもあるし、小気味良いテンポ感&リズムのポップチューン「I'll Never Turn My Back on You (Father's Words)」もあるし、アカペラのみで構成された「As Yet Untitles」もあるし、フロアを賑わすダンスチューン「Dance Little Sister」もある。この曲なんて、のちのジャズファンクにも通ずる要素が垣間見られるし、スモーキー・ロビンソン率いるTHE MIRACLESのカバー「Who's Lovin' You」では自身のルーツもしっかり提示している。そして、ミニマル感のあるセクシーなバラード「Sign Your Name」もこの時代ならではといいますか。本当に捨て曲なしの1枚です。
プリンスのみならず、例えばINXSのようにファンクやR&Bをベースにしたロックバンドにも通ずるカラーが至るところから感じられる本作。リリースから30年近く経っていますが、サウンドやアレンジ的な前時代感は否めないものの、それでも楽曲の良さはあの頃となんら変わらず、いつ聴いても気持ちよく楽しめる内容ではないでしょうか。この方、1989年にデビューするレニー・クラヴィッツと先代であるプリンスをつなぐ、貴重な存在だと思うんですけどね。
現在もサナンダ・マイトレイヤ名義で音楽活動を継続中。日本では4thアルバム『VIBRATOR』(1995年)までのイメージが強い彼ですが、まずはこのデビュー作から触れてみることをオススメします。
▼TERENCE TRENT D'ARBY『INTRODUCING THE HARDLING ACCORDING TO TERENCE TRENT D'ARBY』
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