HOLLYWOOD VAMPIRES『RISE』(2019)
アリス・クーパー(Vo)、俳優のジョニー・デップ(G, Vo)、AEROSMITHのジョー・ペリー(G, Vo)を中心に結成されたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESの2ndアルバム(2019年6月発売)。
前作『HOLLYWOOD VAMPIRES』(2015年)では「70年代の狂騒の果てに死んでいったロック・スターたちを称える」というバンドコンセプトのもと、60〜70年代に活躍し亡くなったアーティストたちの楽曲をカバー。オリジナル曲(歌モノ)はたった2曲と潔さを感じさせる内容でした。
そこから4年を経て届けられた2作目では、カバーとオリジナル曲の比率が逆転。全16曲のうちインタールード4曲を除く12曲が歌モノで、今回カバーは3曲のみ。計9曲が新たに書き下ろされたオリジナル新曲ということになります。
オリジナル曲はアリス・クーパーの新作と言われても違和感がないほど、彼のパブリックイメージにぴったりなものばかり。新鮮さこそ皆無ですが、要所要所にジョー・ペリーらしさも感じられるし、何よりもHOLLYWOOD VAMPIRESが持つ従来のイメージにもリンクした“古き良き時代の、ゴージャスで危うさを伴うロックンロール”が展開されており好感が持てます。ぶっちゃけ、アリスのファンにとっては最新オリジナル作『PARANORMAL』(2017年)に続くニューアルバムと捉えてもらっても満足できる内容だと思います。
また、前作では多彩なゲスト参加も話題になりましたが、今作では「Welcome To Bushwackers」でのジェフ・ベック(G)とジョン・ウォーターズ(Spoken Words)のみ。後者は『ピンク・フラミンゴ』『ヘアスプレー』『シリアル・ママ』などカルト的作品で人気を誇る映画監督。こういった構成からも、バンドとしての個性を確立させたHOLLYWOOD VAMPIRESの自信が感じられるのではないでしょうか。
気になるカバー曲はジョニー・サンダース「You Can't Put Your Arms Around A Memory」、デヴィッド・ボウイ「Heros」、THE JIM CARROLL BAND「People Who Died」という、前作での選曲と比べたら多少マニアックな3曲。そうか、前作が発売された頃はボウイ、存命だったんですね……時の流れの残酷さを感じさせてくれます。なお、「You Can't Put Your Arms Around A Memory」ではジョー・ペリーが、「Heroes」ではジョニー・デップがそれぞれリードボーカルを担当しており、どちらも良い味出しまくり。特に「Heroes」は出色のカバーではないかと思います。
ちなみに、日本盤のみ2枚組ライブCD『HOLLYWOOD VAMPIRES LIVE』が付いた限定仕様も用意。こちらは2016年5月の音源とのことで、1作目に収録されていなかった「20th Century Boy」(T. Rex)、「Pinball Wizard」(THE WHO)、「Come Together」(THE BEATLES)、「Rebel Rebel」「Suffragette City」(ともにデヴィッド・ボウイ)、「Ace Of Spades」(MOTÖRHEAD)なども収録。そうか、2015年末〜2016年明けと続いたんですね、レミーとボウイ。
あ、AEROSMITH「Sweet Emotion」や「Train Kept A Rollin'」、アリス・クーパー「Eighteen」も楽しめるので、4000円ちょっと払ってCDを2タイトル購入するつもりなら、お安いもんじゃないかなと。オリジナルアルバム『RISE』同様、こちらもオススメです。
▼HOLLYWOOD VAMPIRES『RISE』
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