THE DAMNED THINGS『IRONICLAST』(2010)
2010年12月14日にリリースされたTHE DAMNED THINGSの1stアルバム。日本盤は翌2011年1月12日に発売。
2009年に始動したこのバンドは、FALL OUT BOYの前身であるメタル系バンドに在籍していたジョー・トローマン(G, Vo)&アンディ・ハーレー(Dr)がANTHRAXのスコット・イアン(G)の声をかけ、コラボを始めたことがきかっけ。その際、当時ANTHRAXのメンバーだったロブ・カッジアーノ(G)も加わることになるのですが、2009年時点ではこのコラボレーションが新たなサイドプロジェクトにまで進展するとは、当のジョーも思っていなかったようです。
しかし、そこにEVERY TIME I DIEのキース・バックリー(Vo)という逸材がハマることで、このプロジェクトは一気に動き出します。キースが歌詞を書き、ジョーやロブ、スコットが曲を制作。レコーディングではロブがベースおよびエンジニアを兼務し、ニック・ラスクリネクツ(DEFTONES、FOO FIGHTERS、HALESTORMなど)がミックスを手がけることで完成したのが、このデビューアルバムです。
メロディ的にはFALL OUT BOYに通ずるキャッチーさ、メロディアスさが強いものの、サウンドやバンドアンサンブルはANTHRAXやEVERY TIME I DIEの影響下にあるヘヴィでガッツの強いもの。しかし、それらが合わさることで生まれる楽曲は、そのどのバンドにも似ているようで似ていないという、不思議な現象を引き起こしています。強いて言うなら、「1980年前後のHR/HMとパンクを通過したサウンドで、70年代のTHIN LIZZYやDEEP PURPLE、MOTÖRHEAD的なクラシックロックを表現」する……どこかFOO FIGHTERS的でもあり、THE HELLACOPTERS的でもあるという。だけどもうちょっとストーナーロック的な香りも感じられて、「独特なクセがあるのに不思議とわかりやすい」ハードロックを展開しているのです。
「We've Got A Situation Here」や「A Great Reckoning」あたりを聴くと、ある人はFOO FIGHTERSを思い浮かべるかもしれません。しかし、僕の中では「ヘヴィになったTHIN LIZZ」という認識なんですよね。もしくは「THIN LIZZYがストーナーロックに挑戦」という。いろんな化学反応の結果がこれなんでしょうけど、EVERY TIME I DIEのフロントマンがこんなにキャッチーでわかりやすいハードロックを歌っていることも、FALL OUT BOYとANTHRAXが合体するとこうなるんだってことも、全部意外であると同時に必然なのかなと。
THE HELLACOPTERSをよりメタリックにするとこうなるのかな、なんて思いながらリリース当時はリピートしていたことを、今ふと思い出しました。キースの歌声もどことなくニッケっぽいしね。THE HELLACOPTERS亡き2010年以降、どれだけこのアルバムを重宝したことか。でも、このバンドも短命で2012年には一度活動を停止していまいます。しかし、約8年後にコアメンバーはそのままに、よりパワーアップした2ndアルバム『HIGH CRIMES』(2019年)が届けられたときは、どれだけうれしかったことか。しかも、「よりモダンなのに、不思議とレイドバックしている」という進化を遂げていたんだから、たまったものじゃないですよ(笑)。
これまでストリーミング配信されていなかったのが不思議ですが、つい最近ようやく国内でも聴けるようになったので、昨年発売の『HIGH CRIMES』とあわせてチェックしてみてください。上に挙がったようなバンドにピンと来た方なら絶対に引っかかるはずなので。
▼THE DAMNED THINGS『IRONICLAST』
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