CRAZY LIXX『STREET LETHAL』(2021)
2021年11月5日にリリースされたCRAZY LIXXの7thアルバム。
前作『FOREVER WILD』(2019年)から2年半ぶりの新作。楽曲1つひとつの完成度が非常に高く、アルバムとして過去最高の仕上がりではないかと謳われた『FOREVER WILD』に続く作品ということで、プレッシャーもあったのでは……などと勘繰ってしまいたくなりますが、そんな外野の声を弾き飛ばすほどに高品質で、いかにも彼ららしい1枚を届けてくれました。
今思えば『FOREVER WILD』は全体を通して、ちょっと品行方正な仕上がりだったような気がします。陰と陽で大雑把にわけるとすれば、(作品自体はポジティブだけど)陰側といいますか(これには賛否あるかと思いますが、いち意見として)。それこそが最高傑作的な謳い文句につながったと思うのですが、一方今作は初期のはっちゃけた……バカバカしいまでに80年代を疑似体験させてくれるヘアメタル(陽のほう)に復調している気がしないでもありません。
それは、アルバムのアートワークからも大いに伝わります。日本盤は権利の関係で街中の立て看板に描かれた文字が全部消されていますが(MOGWAIの1stアルバムと同じパターンですね)、海外盤およびストリーミングでのジャケットを見ればわかるように、おちゃらけています。おそらく2019年の初来日で新宿や渋谷を探索して味を占めたんでしょうね。と同時に、どこかサイバーなあの街の感じや日本を舞台にした映画やアニメのイメージ……これが『FOREVER WILD』以前のはっちゃけ感を呼び戻してくれた……というのは考えすぎでしょうか。
もちろん、前作で得た自信はこのアルバムにも最大限に発揮されており、1曲1曲の作り込みはお見事としか言いようのないもの。どれも80年代にヒットしたと言われても信じてしまいそうなほどに、あの時代を踏襲したHR/HM黄金期のサウンド/楽曲なのですから。ただ、『FOREVER WILD』と比べるとちょっとだけ“隙”が用意されていて、それが先に何度か記したはっちゃけ感やラフさにつながっているのかもしれません。
そんなアルバムに「Anthem For America」なんてタイトルの王道ハードロックを用意したり(笑)、抜けの良いAOHR(=Adult Oriented Hard Rock。なんて言葉はないですが)の「Reach Out」や「One Fire - One Goal」、80年代的シンセの香りがたまらない「Final Fury」、豪快なギターリフが時代を感じさせる「Street Leathal」、お約束のパワーバラード「In The Middle Of Nothing」など、とても2021年とは思えないような極上のハードロックが並ぶのですから。笑っちゃいますよね。
アルバム全体のパンチとしては前作には及ばないものの、これもまたCRAZY LIXXらしい“21世紀のヘアメタル”の教科書的作品。茶化したりバカにするのは簡単だけど、これをどこまでも真剣にやってる彼らにはもっと幸せになってほしい……と願う自分がいたりして(それこそ余計なお世話ですけどね)。
▼CRAZY LIXX『STREET LETHAL』
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