KAATO『SLAM!』(2019)
オーストラリア出身のハードロックバンド、KAATOが2019年3月に発表した2ndアルバム。ここ日本では幾度にわたり来日公演を行っており、この4月に実施されたジャパンツアーも大盛況だったと伝え聞いております。
カート・ロウニー(Vo)とミカ・ノーティネン(B)の2名が正式メンバーで、レコーディングにはACCEPTのクリストファー・ウィリアムス(Dr)も全面参加。なんて話を聞くと、どれだけヘヴィなサウンドなんだろう……と勘違いしそうですが、本作で展開されているのは70年代の古き良き時代のクラシック・ロック(グラムロック色強し)を現代的に昇華するのではなく、現在の技術でまんまプレイしたらこうなりましたという内容なのです。
思えばオーストラリアって愚直にクラシック・ロックを追求するバンドが多いですよね。そのオリジネーターでもあるAC/DCしかり、WOLFMOTHERしかり、AIRBOURNEしかり、JETしかり。このKAATOもその延長線上にあると言っても過言ではありません。
ダイナミックなバンドサウンドと、どこかグラマラスさを感じさせるメロディやフレーズの数々、そういった要素で構築される楽曲群は正直、「70年代半ばに存在したB級グラムロックバンドのリマスター/リイシュー」と言われたら信じてしまうぐらい当時の空気感を感じさせるもの。もちろんこれは褒め言葉で、今やこういったスタイルを継承するバンドが表舞台に大手を振って活躍することが減っているだけに(GRETA VAN FLEETはまた別の解釈でブレイクした気がするので、ここに含めるのはやめておきます)、KAATOのようなバンドが日本で受け入れられているという事実には感慨深いものがあります。
全7曲(日本盤のみボーナストラック1曲追加)、うち1曲「Slam!」は80秒程度で続く「Glamour Queen」へのイントロダクションなので、歌モノは実質6曲。トータルでも30分程度という短さはまさに70年代のロックそのもの。と同時に、フィジカルよりもデジタルでのリリースが主流になりつつある現在においては、これくらいの長さでアルバムとして発表されてもなんら違和感なし。むしろ、初めてこのバンドの作品に触れてみようというリスナーにとってはちょうどよい曲数/長さなのではと思います。
力強いギターリフとカートのセクシーな歌声を軸に展開されていく楽曲の数々は、単なるクラシック・ロックの焼き直しだけでは終わらない、原石ならではの魅力が至るところから感じられます。例えばTHE STRUTSあたりが好きというリスナーにも確実に響くものがあるでしょうし、最近のバンドはよくわからないけど70〜80年代のハードロックは今も好きという層にも十分にアピールする。そんな、さらなるブレイクの可能性を秘めた“開戦前夜”的な内容で、彼らにハマるのは今からでも遅くないと教えてくれる1枚です。