CRY OF LOVE『DIAMONDS & DEBRIS』(1997)
1997年8月にリリースされたCRY OF LOVEの2ndアルバム。日本盤は同年11月に、1stアルバム『BROTEHR』(1993年)のリイシュー盤とともに発売されました。
約4年ぶりに届けられた新作は、デビューアルバム同様にメジャーのColumbia Recordsから発売。前作同様、ジョン・カスター(CORROSION OF CONFORMITYなど)がプロデュースを担当した、まさに前作の延長線上にある1枚に仕上がっています。
しかし、今作ではボーカリストが前作から交代。ケリー・ホーランド(Vo, G)が前作発表から1年後に脱退し、代わりに加入したのが元LYNCH MOB、現WARRANTのロバート・メイソンという意外な人選でした。いや、意外ではないのかな。LYNCH MOBの2ndアルバム『LYNCH MOB』(1992年)でのブルージーでソウルフルな歌唱スタイルを考えれば、納得いくものだったと言えるかもしれません。
同じ制作陣にも関わらず、サウンドの質的には前作よりも薄っぺらくなったような印象を受けます。予算の関係なのか、それとも時代に合わせたミックスなのか。もうちょっとギターを前面に押し出したり、リズム隊の低音を効かせたほうがカッコいいんじゃないかと思うのですが、この手の古臭いスタイルにはこれぐらいがちょうどいいってことなんですかね。
また、ボーカリストの変更についてですが、基本的には違和感はありません。いや、アルバム1枚しか出していませんし、そもそも確たる個性があるバンドというわけではないので、フロントマンの変更はそこまで大きく影響していないような気がしました。
で、このロバート・メイソンというシンガーが非常に器用な方なので、ファンキーさ/黒っぽさという点においては前任以上ではないかと。特に高音を活かした歌唱は、このバンドが持つブラック・テイストをより強めることに成功していると思います。しかし、シンガーとしての迫力という点においては、前任のほうが一歩上かな。まあ、一長一短ありますよね。
楽曲に関しては、曲調の幅こそ広がっているものの「これ!」という突出したキメ曲は見受けられず。どれもこの手のバンドにはありがちなスタイルながらも、雰囲気作りは抜群に上手だし、演奏技術も楽曲の完成度も平均点は超えていると思うのですが……まあ、こういうバンドは全体を通して雰囲気を楽しむくらいがちょうどいいのかな。そういう意味では非常に高品質な内容ですし、インパクトという点においては前作に及びませんが、1作目がお気に入りというリスナーなら問題なく楽しめる良作だと思います。
残念ながら、CRY OF LOVEは本作リリースから間もなくして解散。ギターのオードリー・フリードはTHE BLACK CROWESに加入するという、思わず「その手があったか!」という展開を見せます。ケリー・ホーランドは2014年に亡くなっているので、ロバート・メイソン期での再結成はできなくもないですが、今のところそういった話題は伝わってこないので、しばらくは残された2枚のスタジオアルバムを楽しみたいと思います。
▼CRY OF LOVE『DIAMONDS & DEBRIS』
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