DIAMOND HEAD『LIGHTNING TO THE NATIONS 2020』(2020)
2020年11月27日にリリースされたDIAMOND HEADの9thアルバム。日本盤未発売。
本作は2019年5月発売の『THE COFFIN TRAIN』に続くスタジオアルバムですが、厳密なニューアルバムというわけではなく、そのタイトルからもわかるようにデビュー作『LIGHTNING TO THE NATIONS』(1980年)の発売40周年を記念した再録作。さらに全7曲のセルフカバーに加え、本作にはMETALLICA「No Remorse」、LED ZEPPELIN「Immigrant Song」、JUDAS PRIEST「Sinner」、DEEP PURPLE「Rat Bat Blue」といったカバー曲も追加されており、全11曲/60分というボリューミーな内容となっています。
『LIGHTNING TO THE NATIONS』制作時のオリジナルメンバーはすでにブライアン・タトラー(G)のみ。90年代の再結成、および2002年の再始動のすべてに参加しているカール・ウィルコックス(Dr)以外、アンディ・アバーリー(G/2006年加入)、ラスマス・アンダーセン(Vo/2014年加入)、ディーン・アシュトン(B/2016年加入)という新参者ばかりですが、『DIAMOND HEAD』(2016年)や『THE COFFIN TRAIN』といった現編成で制作された2作品が非常に高クオリティで、メタルファンからも高い支持を受けていることから、この最新ラインナップで再録された名曲たちがどう生まれ変わるのか、以前から気になっていました。
サウンドメイキング自体は『THE COFFIN TRAIN』の延長線上にある、硬質で重心の低いもので、チューニングも原曲から半音下げていることもあってヘヴィさがより増している印象を受けます。また、BPMも原曲から若干落としているためか、そのヘヴィさはより強まっているのではないでしょうか。ただ、「The Price」や「It's Electric」のようなアップチューンではその効果が半減し、逆にもっさりしてしまっている印象も。そこは残念な点でした。
しかし、全体的には原曲の良さを活かしつつ、より現代的に生まれ変わった名曲群を程よくヘヴィな音像で楽しむことができるのは、昨今のサウンドに慣れた耳にはうれしいかぎり。曲によっては原曲より短くなっていたり(「Sucking My Love」)、逆に長くなっていたり(「Am I Evil?」)するケースもあり、それぞれの違いを比較するのも面白いのではないでしょうか。
あと、このペタペタしたバスドラの感触がボブ・ロックがプロデュースをしていた頃のMETALLICAにも似ていて、なんとなく彼らの『GARAGE INC.』(1998年)を聴いているような錯覚にも陥ります(笑)。つまり、1980年のオリジナル盤が『THE $5.98 E.P.- GARAGE DAYS RE-REVISITED』(1987年)なら、今作は『GARAGE INC.』……くらいの(環境面/技術面での)進化が感じられるということです。おわかりいただけたでしょうか?
気になるカバー曲についても触れておきましょう。本家DIAMOND HEADがフォロワーのMETALLICAをカバーするというのも面白い話ですが、こうやってDIAMOND HEADがプレイする「No Remorse」を聴くとアルバムの流れで違和感なく楽しめるんですよね……要するに、それだけカバーのみならずパクリ もとい、強く影響を受けているということなんでしょうね(笑)。こういう曲がDIAMOND HEADの新作に入っていても不思議じゃない、そんな印象を受けました。ある意味ではMETALLICAに対する意地悪にも思えてきますよね(苦笑)。
さらにツェッペリン、プリースト、パープルは完全にお遊びといったところでしょうか。と同時に、あのいびつなプログレッシヴさを兼ね備えたデビュー作の源泉はここだったんだなと、改めて気づかされたり。そういう、いろんな気づきを与えてくれるカバー4曲なのでした。
この再録アルバムだけを聴くと、一体DIAMOND HEADの何がすごかったのか?にはなかなかたどり着けないかもしれません。なので、ぜひオリジナル盤もあわせてチェックしてほしいなと。2作あわせて楽しむことで、いろいろと見えてくるものが必ずあるはずですから。
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