PERIPHERY『PERIPHERY V: DJENT IS NOT A GENRE』(2023)
2023年3月10日にリリースされたPERIPHERYの7thアルバム。日本盤未発売。
前作『PERIPHERY IV: HAIL STAN』(2019年)から約4年ぶりの新作。前作で新たな可能性を秘めていることを匂わせた彼らですが、その方向性は本作で完全に開花したといっても過言ではありません。いやはや、本当にすごいアルバムを完成させてしまいましたね。
『DJENT IS NOT A GENRE』というサブタイトルからも伝わるように、PERIPHERYは本作でそういった狭く流行り廃りのある“枠”から完全に飛び出し、“Djent(ジェント)”というものを精神性として昇華させようとしています。事実、オープニングを飾る「Wildfire」なんて序盤〜中盤は多くのメタルファンがイメージする“Djent”スタイルのアレンジで楽曲が進行しますが、途中からサックスソロをフィーチャーしたジャジーな演奏が飛び込んでくる。プログメタルとしては特段不思議じゃないアレンジかもしれませんが、改めてこのバンドは狭い世界に留まっておくことなんてできないことを証明してみせます。
「Wax Wings」のようなポップスの領域に踏み込んだプログメタルもあれば、エレクトロポップ/ニューウェイヴの色合いを全面に打ち出した「Silhouette」のような楽曲も存在し、曲によってはメタルの枠すら超越している。そんな中、変拍子を巧みに取り入れつつもキャッチーなメロディで歌い上げる「Dying Star」のような5分に満たないナンバー、デスメタル的なスタイルも積極的に取り入れたブルータルな「Eerything Is Fine!」「Zagreus」も含まれており、曲の長尺や激しさ/優しさにも一切縛られない自由度の高さは過去イチではないかと言いたくなるほど。
そんな意欲作のクライマックスには、12分半におよぶ「Dracul Gras」、11分強の「Thanks Nobuo」の大作2曲が並ぶ。これまでも日本に関連したタイトルの楽曲を多数生み出してきた彼らですが、このラストナンバー「Thanks Nobuo」の“Nobuo”とはかの植松伸夫氏(『ファイナルファンタジー』シリーズの音楽制作者)のことでしょうか。PERIPHERYのことだからありえそう。そう考えると、この曲で表現されたスケール感の大きさやコード運び、サウンドエフェクトは『FF』楽曲とリンクする……ところもあるかな? なんにせよ、この曲でアルバムを締めくくるあたりにもバンドの変質/進化が伺えます。
これが到達点とは言わないものの、ひとつの通過点としてはかなり大きな意味を持つ1枚に仕上がったのではないでしょうか。メッセージ性の強いサブタイトル然り、本作を起点にこのバンドはこの先もさらに進化を続けていくんでしょうね。
▼PERIPHERY『PERIPHERY V: DJENT IS NOT A GENRE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)