JOY DIVISION『UNKNOWN PLEASURES』(1979)
JOY DIVISIONが1979年6月に発表したデビューアルバム。メンバーはイアン・カーティス(Vo)、バーナード・サムナー(G, Key)、ピーター・フック(B, Vo)、スティーヴン・モリス(Dr)の4人。当時全英アルバムチャートで71位を記録しています。
「Disorder」のようにスカスカのリズムの間を空間系のエフェクトをかけたギターが埋め尽くしたりする曲もあるものの、基本的には隙間だらけの非常にシンプルなバンドアンサンブルの中にひねくれたベースラインがうねうね歌ったり、効果音的にシンセを用いたりなどしたチープなサウンド。今の感覚で聴くと非常にスカスカだし、いくらリマスタリングされた音源(最新版は2007年リマスター)でも、さすがにオリジナルは40年前のものですからね。それなりのものだと理解してから触れてもらえればと(しかし、このチープさが最終的にはクセになるんですけどね)。
パンクロックがひと段落し、そこから派生したニューウェイヴ/ポスト・パンクバンドのひとつと見なされているJOY DIVISIONですが、確かにこのアルバムにも“パンクロック以降”を匂わせる面影は残っています。「Shadowplay」や、本作で唯一ピーターがボーカルを執る「Interzone」なんてまさにそれですよね。
しかし、シンプルなリズムとリフ(ギターというよりもベースかな)が反復され、その上にイアンのエモーショナルになりすぎない歌声が乗ると不思議な空気感が出来上がる。オープニングの「Disorder」然り、エンディングの「I Remember Nothing」然り。暗黒という言葉がぴったりなこのダークさは、なかなか真似できるものではないと思います。
そういったスタイルのせいか、要所要所でTHE DOORSを思い浮かべることもあります。イアンの書く歌詞の歌詞の世界観によるものも大きいですが、ジム・モリソン(Vo)のように情熱的でセクシーな印象はまったく伝わってこない。むしろ、そういった感情の動きを排除しているとさえ思えてくるこのダウナーさ。そこにUKパンクムーブメント後の“祭りのあと”感が透けて見える気がします。
シンプルなリズムとリフの反復という点においては、ほかのポスト・パンクバンドにも通ずるものがあると思いますが、ほかのバンドがダブなどアフロ的な方向に突き進んだりする中、JOY DIVISIONにはそちら側の色は見受けられない。その後、NEW ORDERにてハウスなどのクラブミュージックへと接近していくことを考えると、この時点でその片鱗が散りばめられている、と受け取ることもできるのではないでしょうか。
とはいえ、実は僕自身「ここがすごいんだよ!」とはっきり言い切れないところがあるのも、このJOY DIVISIONというバンドの不思議な魅力と言いますか。クセになるんだけど、じゃあ何がすごいのかと言われると「う〜ん……」と唸ってしまう。特にこの1stアルバムは荒削りだったパンク上がりの下手くそバンドが、プロデューサーの手によって劇的な変化を遂げた転換期でもあっただけにね。
そういう意味では、このバンドの魅力って本作のデラックス盤の特典ディスクに収録されたライブ音源(アルバム発売後の1979年7月、マンチェスターで録音)と合わせて聴くことでようやく見えてくるんじゃないか。そんな気がします。
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