THE DOGS D'AMOUR『IN THE DYNAMITE JET SALOON』(1988)
海外では1988年9月に、ここ日本では翌1989年2月にリリースされたTHE DOGS D'AMOURの記念すべきデビューアルバム。正確には80年代前半にインディーズから、現在とは異なる編成でのアルバムが発表されているので2枚目に当たりますが、いわゆる黄金期のラインナップ=タイラ(Vo, G)、バン(Dr)、ジョー・ドッグ(G)、スティーヴ・ジェイムズ(B)による1作目ということで、タイラ自身が「これこそが1stアルバム」と公言しております。
ここ日本では1988年秋に6曲入りセルフタイトルのミニアルバムを発表しており、正式な日本デビュー作はこちらになります。僕自身もこのミニアルバムを先に手にして、続いてフルアルバムの『IN THE DYNAMITE JET SALOON』を聴いた記憶があります。
アメリカでは当時、GUNS N' ROSESを筆頭とした“スリージー・ロック”(Sleazy:薄っぺらい、安っぽい、)が人気を博しており、本国や日本では「第2のガンズ」をキャッチコピーとしたハードロックバンドがたくさんデビューしました。実はこのTHE DOGS D'AMOURも「ガンズに対する、イギリスからの回答」みたいな声がいくつか見受けられたのですが、よくよく聴けばそういった意思のもとに活動/表現しているバンドではないことはおわかりいただけるかと思います。
パンク以降のパブロック、ガレージロック、グラムロックをベースにしたサウンドはハードロックで括るにはちょっとスカスカだし、かといってパンクほど攻撃的で前のめりでもない。適度なユルさと肌感覚で「あ、こいつらヤベエ」と思わせてしまう危うさが同居したサウンド、そのケバケバしいルックスといった要素からヘアメタルやグラムメタルの枠で括られそうになるものの、視点を変えれば伝統的なブリティッシュロックの系譜にあるとも言えるわけでして。そこは全部「時代のせい」と言ってしまえばそれまでなのですが、まああの時代でなければここまで大プッシュされることもなかったのかなと。一長一短ですね。
前半にキャッチーでポップな楽曲が多く配置され、実際「I Don't Want You To Go」(全英78位)や「How Come It Never Rains」(同44位)はシングルヒットも記録。「Medicine Man」あたりもポップさも捨てがたいですよね。
かと思えば、後半にはHANOI ROCKSにも通ずる「Gonna Get It Right」や「Wait Until I'm Dead」、スワンプロック風「Billy Two Rivers」などルーツに忠実なロックンロールが満載。そうそう、彼らはガンズ云々よりもHANOI ROCKS的だったんですよね。だから、そのルックス以上に音を聴いてピンと来るものがあったのかも。タイラのボーカルも時代の主流だったハイトーンではなく、しゃがれ声の中音域でしたしね。
ちなみに、ボーナストラックとして追加された3曲は本作より前にシングルとして発表された楽曲。シングルヒットもした「Kid From Kensington」(全英88位)も含まれており、無駄にお得感あり。
なお、彼らは現在も活動を続けており、紆余曲折を経て本作での黄金ラインナップに戻っております。来日とか難しいだろうけど、また生で観たいなあ。
▼THE DOGS D'AMOUR『IN THE DYNAMITE JET SALOON』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / 海外盤5CD / MP3)
続きを読む "THE DOGS D'AMOUR『IN THE DYNAMITE JET SALOON』(1988)" »