THE BRINK『NOWHERE TO RUN』(2019)
イギリス・ケンブリッジを拠点に活動する5人組バンド、THE BRINKが2019年5月に発表したデビューアルバム。
ここ10年くらい80'sリバイバルといいますか、あのきらびやかな時代のサウンドやヴィジュアルを模倣したバンドがちらほら見受けられます。そういったバンドが当時のようなメガヒットを生み出しているかというと、決してそんなこともなく、むしろリスナーとして喜んでいるのは若い世代ではなく80年代に青春を謳歌したオッさんたち(自分を含む)なのではないか、と思うわけです。
で、このTHE BRINKというバンドも80'sリバイバルの流れにあるバンドと呼んでも間違いないようで、鳴らされている音は80年代のメインストリームにあったハードロックっぽい。キャッチーなメロディと楽曲、適度にハードでギターが前に出たバンドアンサンブル。そうそう、こういうバンドたくさんいたよね、って言いたくなるような、そんな音。しかし、単なる焼き直しとは違う魅力が彼らには感じられるんですね。
メロディだけ聴くと、あの時代のHR/HMというよりはメタルコア以降のバンドにも通ずるものがあったり、カラッとしているんだけどアメリカのこの手のそれとは異なり、常に一定の湿り気も残されている(それって「カラッとしている」というのか、という疑問も残りますが)。つまり、確実に90年代のオルタナを通過した音/楽曲なんですよ。
僕、このアルバムを聴いていて思い浮かべたのが……実はFUNERAL FOR A FRIENDだったんですよ。いや、全然違うんですけどね、スタイルは。だけど「Save Goodbye」や「Take Me Away」といった壮大さを持つ楽曲からは、同バンドが持っていたスケール感に通ずるものがあるんじゃないかって。共感してくれる方、いらっしゃいますでしょうか?
かと思えば、ヘアメタル的なパワーチューン「Little Janie」があったり、いかがわしさ全開の「Said & Done」やワイルドなミドルナンバー「One Night Only」みたいな曲もある。パワーバラード「Wish」もあるし、初期MOTLEY CRUEがやっても不思議じゃないメロディアスな「Are You With Me」もある。結局、テン年代を生きる若者が80年代、90年代、ゼロ年代にカッコよかったHR/HMバンドの要素をマッシュアップしたらこうなりました、というアルバムなのかなと。この感覚、めっちゃ面白いと思います。
で、このバンドのヴィジュアルを見たんですが……。
あれ、小汚い(笑)。そこは90年代以降なのね。あと、下手側のギタリスト(イジー・トリックスという方)は女性? 写真や映像を観る限りではそう認識したのですが、どうも違うような……今やジェンダーレスな時代ですからね。そういうことがあっても不思議じゃない(どうやらこの方、EDM系DJとしても活躍していらっしゃるようです)。
まあとにかく。単なる80'sリバイバルでは終わらない彼らの魅力、ぜひ音源から感じてみてください。