BLACK MIDI『CAVALCADE』(2021)
2021年5月28日にリリースされたBLACK MIDIの2ndアルバム。
名門Rough Tradeからリリースされた前作『SCHLAGENHEIM』(2019年)からほぼ2年というスパンで届けられた本作。今年1月に発表されたとおりメンバーのマット・ケルヴィン(Vo, G)がメンタルヘルスの不調でレコーディングを含むバンド活動から離脱しており、残されたジョーディ・グループ(Vo, G)、キャメロン・ピクトン(Vo, B, Synth)、モーガン・シンプソン(Dr)の3人に、ツアーメンバーのカイディ・アキンニビ(Sax)とセス・エヴァンス(Key)を加えた5人で本作を制作しています。
本作の原型は2019年の時点でほぼ完成していたようですが、そこから従来のジャムセッション型楽曲制作から離れ、上記の5人でより奇想天外な楽曲の詰め方を進めたとのこと。その結果……完全に“化け”ましたね。
正直、前作の時点では「う〜ん?」と判断に悩んだんです。ホンモノなのかハイプなのか……すごいのはわかるんだけど、素直に受け入れられない自分がいる。そのへんは前作のレビューからも浮き出ていますが、今作に関しては完全に抜けきっており、オリジナリティが確立されたんじゃないか。そんな気がしています。
冒頭の「John L」を聴くと、きっと誰もが「これって80年代のKING CRIMSONじゃん!」とツッコミそうな気がするのですが、そこにアフロビート的な躍動感と、フランク・ザッパ的な変態性をミックスすることで、なんとも形容し難いものに生まれ変わっている。以降の楽曲も静と動を反復しながら、前作とは一風ことなるアバンギャルドなサウンド&アレンジが展開されており、曲が進むごとにグイグイと引き込まれていく。「Diamond Stuff」あたりからはゴスや宗教音楽、さらにはジャズのテイストも感じられ、本当に一筋縄ではいかないんですよ。
じゃあ、本作でプログレ側に振り切ったのか?と問われると、実はそうでもないんじゃないかという気もしていて。だったら、前作の時点ですでにプログレだったもんなあ、と。むしろ本作で表現されているのは、プログレが前時代的な代物となり、ニューウェイヴ以降のポストロック・アーティストたちが新たな活路を見出した際に得たスタイルの延長線上にあるんじゃないか……そんな気がしてなりません。要するに、広意義でのプログロックということには違いありませんが。
もっと言うとこれ、ZAZEN BOYSっぽいなと……思った方、少なくないんじゃないでしょうか。
要所要所に強いクセが散りばめられているのに、アルバムラストを飾る10分もの対策「Ascending Forth」までするすると聴き進められてしまうのも、前作から大きく成長した結果なのでしょう。とにかくすごいアルバム、ありがとう。今回は素直に楽しみます!
▼BLACK MIDI『CAVALCADE』
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