BOSTON MANOR『DESPERATE TIMES DESPERATE PLEASURES』(2021)
2021年10月29日にリリースされたBOSTON MANORの最新EP。日本盤未発売。
2015年以降Pure Noise Recordsに所属してきたBOSTON MANORですが、2021年夏にSharpTone Recordsと契約したことを発表したBOSTON MANOR。NECK DEEPとの欧州/USツアーを経て届けられた移籍第1弾アイテムが、この5曲入りEPとなります。
昨年5月に発表された3rdアルバム『GLUE』(2020年)で本格的な変貌を遂げた彼らですが、今作ではそこで得た手応えをさらに強く、1曲1曲に異なる味付けで反映させることに成功。もはやエモやポップパンクの枠では語りきれない存在へと進化しています。
1曲目の「Carbon Mono」や3曲目「Desperate Pleasures」は完全にBRING ME THE HORIZONの影響下にあるモダンメタルチューン。デジタルエフェクトの導入の仕方は前々作『WELCOME TO THE NEIGHBOURHOOD』(2018年)、前作と比べて格段とナチュラルなものとなり、最初からこういうバンドだったのではないかと錯覚するほど。楽曲自体はまだまだ亜流感が否めませんが、それでもメロディラインやアレンジの作り込みの完成度は目を見張るものがあります。
かと思えば、90年代のUS&UKオルタナティヴロックからの影響が随所に感じられるM-2「Algorithm」では、バンドの新たな魅力/個性が伝わる。このテイストは前作でも見え隠れしていたものではありますが、ここにきてひとつの武器として確立し始めているように映り、今後は先のモダンメタル色との2軸として勝負していくことでBOSTON MANORらしさがより色濃くなるのではないか、という気がします。
M-4「I Don't Like People (& They Don't Like Me)」もどちらかといえば、そっち側の1曲ですよね。メロディラインからは先のBMTHとの共通点も見つけられますが、味付けが完全に90's US&UKオルタナのそれで好印象。いいぞもっとやれ。
そして、EPのラストを飾る「Let The Right One In」は浮遊感の強いゴシックメタルナンバー。アルバムでいったら中盤(A面ラスト)か最後(B面ラスト)に置かれるタイプのミディアムスローナンバーで、前作『GLUE』でいうところの「On A High Ledge」や「Stuck In The Mud」あたりで試したスタイルを深化させた1曲かな。かつ、それら2曲ともメロディの質感が少々異なることもあり、新鮮に響くのではないでしょうか。
と、駆け足で5曲振り返ってみましたが、このEPでの実験がこの先控えているであろうフルアルバムにどう作用するのか。期待を煽るという意味では非常に良い役割を果たしていると思います。おそらく次作は『GLUE』の延長線上にある、よりディープな1枚になりそうですが、ここ最近の実験の成果がいよいよ開花するという点でもかなり大きな期待を寄せておきたいと思います。
▼BOSTON MANOR『DESPERATE TIMES DESPERATE PLEASURES』
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