SKILLET『VICTORIOUS』(2019)
男女混合4人組ヘヴィロックバンド、SKILLETが2019年8月上旬にリリースした10thアルバム。
7作目の『AWAKE』(2009年)が全米2位まで上昇し、200万枚以上を売り上げるヒット作となり、同作からシングルカットされた「Monster」はアメリカだけでも300万枚を超えるメガヒットシングルとなりました。僕自身も同作で彼らのことを初めて知ったのですが、いわゆる“クリスチャン・ロック/メタル”の部類に入ることもあって最初は若干躊躇したものの、音そのものはモダンなヘヴィロックだったので気にせずよく聴いていた記憶があります。
本作もここ数作の延長線上にある作風ですが、スタジアムロック風の音作りにモダンなエレクトロ風味をまぶし、1曲3分台、長くても4分台前半というコンパクトな形でまとめた“イマドキ”の1枚に仕上げられています。なので、全12曲でも44分強というトータルランニングは最近のこの手のアルバムの中でもかなり聴きやすい類ではないでしょうか。
アルバムのタイトルトラック「Victorious」はLINKIN PARKのチェスター・ベニントンの死に衝撃を受け、チェスターに向けて、そしてまだ悲しみの淵にいる彼のファンに向けて書いたものとのこと。
フロントマンのジョン・クーパー(Vo, B)は「うつ病について調べて、理解して、とても悲しくなった。この曲は落ち込んでいる人たちに向けてかける言葉なんだ。チェスター・ベニントンと会ったことはないけれど、俺はLINKIN PARKの大ファンだ。彼が亡くなったとき、信じられなかった。だからもし彼に会うチャンスがあったら伝えたいことを曲にしたかったんだ。それが『Victorious』さ。葛藤している人たちが乗り越えるのを助けられれば良いな」とコメントを寄せています。
また、長いキャリアのわりにこれが初のセルフプロデュース作でもあり、ジョンと彼の妻でもあるコリー・クーパー(G, Key)が大半を手がけているとのこと。今や男女混合ボーカルのヘヴィロックバンドは多数存在しますが、その多くは女性ボーカルを主軸に起き、男性ボーカルはスパイスとして用いられることが多いと思います。が、SKILLETの場合はあくまでジョン(男性)のボーカルが軸となり、そこにコリー(女性)の歌声が合いの手のように入る。このバランス感が実は絶妙に気持ち良かったりするんですよね。
前作『UNLEASHED』(2016年)は全米3位まで上昇し、最終的に50万枚以上を売り上げましたが、あの頃よりもロックが低迷したアメリカで本作がどこまで検討するのか、非常に気になるところです。1曲1曲はアリーナロック風味のポップロックという趣ですし、こういう作品だからこそウケてほしいんだけどなあ……。
▼SKILLET『VICTORIOUS』
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