THY ART IS MURDER『HUMAN TARGET』(2019)
2019年7月下旬にリリースされた、THY ART IS MURDERの5thアルバム。
THY ART IS MURDERは2006年に結成された、オーストラリア出身の5人組デスコアバンド。2008年にデビューEP『INFINITE DEATH』を発表し、地元のインディーズチャートでトップ10入りという好記録を残しています。さらに、その後もエクストリームメタルバンドとして本国で初めてメインストリーム・チャートTOP40入りを果たしたほか、3rdアルバム『HOLY WAR』(2015年)がオーストラリア出身のエクストリームメタルバンドとして初のBillboard 200(総合アルバムチャート)TOP100入り(82位)を実現させています。
前作『DEAR DESOLATION』(2017年)から2年ぶりの新作にあたる今作は、2ndアルバム『HATE』(2012年)から4作連続でウィル・パットニー(PIG DESTROYER、MISS MAY I、SHADOWS FALLなど)をプロデューサーに迎えて制作。デスコア色を残しつつも、ジェントなどからの影響を見せつつ、さらにオールドスクールなデスメタルやグラインドコアの要素を強めている、そんな印象を受けました。
ということもあり、モダンなエクストリームミュージックを愛好する者はもちろんのこと、90年代〜ゼロ年代前半のエクストリームメタルを愛聴してきたリスナーにも非常にとっつきやすい1枚かもしれません。とはいえ、ジャンルがジャンルなので、その「とっつきやすさ」というのも一般的な「とっつきやすさ」とは次元が違うわけですが(笑)。
とにかく、オープニングの「Human Target」から4曲目「Make America Hate Again」まで、1曲1曲が3分少々と非常にコンパクトなのでスルスル聴き進めることができます。なもんで、そこからの5曲目「Eternal Suffering」の不穏なオープニング〜ブラストビート炸裂のアレンジには、思わず鳥肌が立つのではないでしょうか。個人的にはこの構成、大好きです。
後半も基本的にはコンパクトな楽曲が並ぶのですが、ラスト2曲……「Eye For An Eye」「Chemical Christ」の“異物感”は非常にクセになるものがあります。むちゃくちゃカッコいい……言語力がどんどん減退していくような、そんな壮絶さと爽快さを併せ持つこの流れ、本当に最高以外の何モノでもありません。
10曲で38分強という長さも程よいですし、何よりもオープニングの「Human Target」から何も考えずに楽しめる、有無を言わせぬ破壊力を持っている(とはいいながらも、実は歌詞がかなり社会派なので、できることなら歌詞対訳と照らし合わせて楽しんでもらいたい……とも思ったり)。日々の茹だるような暑さを忘れさせてくれる、あるいはより暑くたぎらせてくれる、最強の1枚です。
▼THY ART IS MURDER『HUMAN TARGET』
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