EXPLOSIONS IN THE SKY『THE WILDERNESS』(2016)
2016年4月にリリースされた、EXPLOSIONS IN THE SKYの6thアルバム(一部では7thアルバムという表記も)。
『PRINCE AVALANCHE』(2013年)、『LONG SURVIVOR』(同年)、『MANGLEHORN』(2014年)といった映画のサウンドトラックは次々に制作していたものの、オリジナルアルバムとしては前作『TAKE CARE, TAKE CARE, TAKE CARE』(2011年)から実に5年ぶりとなります。
個人的にはEXPLOSIONS IN THE SKYって静と動を巧みに使い分けつつも、分厚い轟音ギターを重ねた激情的なアンサンブルで聴き手を高揚させるインストゥルメンタル・ポストロックという印象が強かったのですが、このアルバムでその考えを改めさせられました。
ここで展開されているのは、ポストロックっちゃあポストロックなのですが、それ以前の「動」の要素を極力抑え気味に、エレクトロニカやアンビエントなどの要素を強めた、シンフォニックなサウンドスケープが展開されています。つまり、癒しであったり繊細さであったり、そういった感情の機敏さが丁寧に表現されている。そんなイメージを受けたのです。
もちろん、随所随所にこれまでの彼らを彷彿とさせるエネルギッシュなプレイが散りばめられており、それらが程よいアクセントになっていますが、決してそれがメインになっているわけではない。むしろ、先に挙げた「分厚い轟音ギターを重ねた激情的なアンサンブル」をできるだけ避け、別の形でドラマチックさを演出しているように感じられます。
映画のサントラを3作立て続けに制作してきたこともあってか、そのドリーミーでピースフルな世界観はどこかシネマティックで、なんとなく裏に隠されたストーリーすら浮かび上がってくる。適度なノスタルジーも感じさせつつも、使用している楽器や音像はエレクトロ色を強めた近代的なものというアンバランスさも絶妙で、ただ気持ちよく聴き過ごしてしまうには勿体ない、非常に手の込んだ1枚と言えるのではないでしょうか。
バンドにとっては間違いなく新境地へと到達した1枚であり、リスナーにとってはいろいろと“試される”実験作でもある。かといって、ここで彼らが完全に変わってしまったというわけではなく、あくまで2016年というタイミングにもっともふさわしい表現方法がこれだった、ということだけなんじゃないでしょうか。事実、その後に実現したフジロックでの来日公演では過去の楽曲を交えることで、より緩急が際立った極上のパフォーマンスを楽しむことができましたから。
▼EXPLOSIONS IN THE SKY『THE WILDERNESS』
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