FATES WARNING『PARALLELS』(1991)
1991年10月29日にリリースされたFATES WARNINGの6thアルバム。日本盤は翌1992年2月25日発売。
Billboard 200(全米アルバムチャート)で最高141位を記録した前作『PERFECT SYMMETRY』(1989年)から約2年ぶりの新作。新たなプロデューサーとしてテリー・ブラウン(RUSH、VOIVOD、CUTTING CREWなど)を迎えた、80年代から90年代へと移行する過渡期らしい内容に仕上がっています。
RUSHの名プロデューサーを引っ張ってきたことから、なんとなく70年代後半から80年代にかけてのRUSHのようなことがやりたいのかな?という印象を受けますが、いざ聴いてみるとその楽曲や音のアプローチはQUEENSRYCHEのそれに似ており、中でも『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)でのメタリックな質感に一番近いような気がしてなりません。楽曲が持つダークな空気感はまさに同作が発していたそれと共通するものもあり、なんだか兄弟作みたいだなという印象すら受けます。かつ、レイ・アルダー(Vo)のハイトーンを駆使した歌唱スタイルもどことなくジェフ・テイト(現SWEET OBLIVION)そっくりですしね。
しかし、QUEENSRYCHEの同作が正統派ヘヴィメタル的な方向性だったのに対して、今作にはもうちょっとモダンな質感が強く備わっているような気がする。実は、そのモダンな質感というのが、DREAM THEATERや同時期のVOIVODあたりと共通するものだったのかなと、30年経った今はそう感じています(ちなみに、「Life in Still Water」にはそのDTからジェイムズ・ラブリエがコーラスでゲスト参加)。
プログメタルの枠で括られるものの、意外と仰々しいプログレッシヴロックっぽさは皆無。むしろ、中期RUSHと初期QUEENSRYCHEっぽさを掛け合わせ、そこにモダンな味付けを施すことでプログメタルよりも普遍的なヘヴィメタルに近づいてしまった。それに加え、前作『PERFECT SYMMETRY』までにあったテクニカルメタル的方向性も若干後退し、必要最低限に押さえたことでその普遍性はより強まった。さらに、「Eye To Eye」や「We Only Say Goodbye」のようなポップさを強めた楽曲を含むことで、アルバムとしてのとっつきやすさも非常に強い。HR/HMアルバムとしてはかなりバランス感に優れた1枚と言えるでしょう。
しかし、そういったアルバムが1991年という歴史の節目に発表された。本作は日本を含めWarner Bros.経由でメジャー流通されたにもかかわらず、発売からしばらくして契約破棄となってしまい、ほとんどプロモーションされることなくヒットにつなげることができませんでした。かつ、同時期のツアーではPANTERAのサポートという、なんとも食い合わせの悪い組み合わせがさらにマイナス方向に作用してしまった。それもこれもすべて、1991年という時代のせいなんでしょうか……。
ただ、個人的には初めて手にしたFATES WARNINGのアルバムなだけに、思い入れも強いんですよね。久しぶりに聴いてみたけど、やっぱり良い内容ですし。若干味付けに80年代味を感じる箇所もありますが、そこも含めて愛すべき1枚だと思っています。
▼FATES WARNING『PARALLELS』
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