SODOM『GENESIS XIX』(2020)
2020年11月27日にリリーされたSODOMの16thアルバム。
1st EP『IN THE SIGN OF EVIL』(1985年)でのデビューから今年で35周年。当時からのメンバーはすでにトム・エンジェルリッパー(Vo, B)のみですが、今作では名作『AGENT ORANGE』(1989年)などでプレイしたフランク・ブラックファイア(G)が復帰。さらに、バンド始まって以来のツインギター編成となり、デビュー以来まったく衰えを感じさせないスラッシュメタルサウンドにさらに拍車がかかることとなりました。
ベルネマン(G)&マッカ(Dr)というトリオ編成で10年近くにわたり活動してきたものの、トムの中にツインギター編成のアイデアが浮かび、結成以来最大の変革期を迎えようとします。しかし、この提案をベルネマンが拒んだことで、トムはベルネマン&マッカを解雇。新たに旧友ブラックファイアとヨーク・ゼーガツ(G)、そしてハスキー(Dr)の3人を迎えます。ハスキーはのちに脱退するも、新たにトニ・メルケル(Dr)が加入し、今年6月からレコーディング開始。昨年先行リリースされたEP『OUT OF THE FRONTLINE TRENCH』(2019年)収録曲「Genesis XIX」をタイトルに冠した、4年ぶりのフルアルバムがこうして完成しました。
アルバムにはトニ・メルケルを含む現編成で再録された「Genesis XIX」を含む全12曲収録。1分少々の荒々しいインストナンバー「Blind Superstition」で幕を開けると、続く「Sodom & Gomorrah」からは息つく間もないほどに首尾一貫アグレッシヴかつスピーディーなスラッシュメタルチューンが連発されていきます。「Genesis XIX」再録バージョンもオープニングに仰々しいSEが付け加えられておりますが、アレンジなどは基本的に変わらず。どの曲も暴力的で、ストレートながらも不意を衝く展開も交えられており、4〜6分前後にまとめられた聴き応えのある演奏を楽しむことができます。
これまでもレコーディングではギターを複数重ねて録音することはあったので、音源としては前作までと大きな変化は感じないかもしれません。リフワークにしても同じフレーズを2人で弾くことで厚みが増すといった程度で、現編成の真価はライブでこそ問われるものだと思うので、ここでは「リフもソロもカッコいいです!」という頭の悪い感想にとどめておきます(笑)。
終盤になるとようやくミディアムテンポの「Occult Perpetrator」が登場しますが、それもこれ1曲のみ。ハードコアに攻めるラストの「Friendly Fire」まで、計55分間ほぼ気が緩む瞬間がありません。トムのボーカルも絶好調ですし、曲も文句なしでカッコいい。要するに、いつもどおりってことです。この手のサウンドでここまでの高クオリティを保ち続けるのは至難の技だと思いますが、今回に関しては特にトム以外のメンバーをすべて交代させたことが功を奏したのではないかと思っています。
“ジャーマン・スラッシュ三羽烏”と呼ばれたDESTRUCTION、KREATOR、SODOMが近年も強烈なアルバムを生み続けているこの事実。SLAYER亡き今、SODOMが今もまだ攻撃の手を緩めないことを素直に喜びたいと思います。。
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