VOLBEAT『SERVANT OF THE MIND』(2021)
2021年12月3日にリリースされたVOLBEATの8thアルバム。
本国デンマークで最高2位、オーストリアやフィンランド、ドイツ、スイスでは1位を獲得した前作『REWIND, REPLAY, REBOUND』(2019年)から2年4ヶ月ぶりの新作。デビューから一貫して制作に関わるヤコブ・ハンセン(DIZZY MIZZ LIZZY、PRETTY MAIDS、AMARANTHEなど)が引き続きプロデューサーとして参加しています(共同プロデューサーとしてメンバーのマイケル・ポールセン、ロブ・カッジアーノもこれまで同様に名を連ねています)。
今年で結成20周年という節目のタイミングに届けられた今作は、過去最高のキャッチーさが印象的だった前作を昇華しつつ、これまでのキャリアを総括するようなバラエティ豊かな内容に。オープニングを飾る「Temple Of Ekur」や「Wait A Minute My Girl」で軽快さやストレートさを提示しつつも、続く「The Sacred Stones」ではヘヴィメタルバンド的な重々しさ、「Shotgun Blues」ではガッツのあるビートでメタル/ラウドファンをも魅了する。どの曲も非常にキャッチーなメロディが乗せられており、数回聴いただけで口ずさめるような親しみやすさは前作での経験が見事に反映されているように感じます(もちろん、彼らはこれまでもキャッチーさに磨きをかけてきましたが、今作ではその側面に拍車がかかったという意味です)。
また、演奏面も聴き応えのあるものばかりで、個人的にはMETALLICAからの影響濃厚ではと感じる「Shotgun Blues」での中盤以降のアレンジがお気に入り。そういえば彼ら、本作の直前にMETALLICAのブラックアルバム(1991年)のトリビュート盤『THE METALLICA BLACKLIST』(2021年)にも「Don't Tread On Me」で参加していましたものね。納得の仕上がりです。
以降もヘヴィロカビリーという例えがハマりそうな「The Devil Rages On」、グルーヴィーなリズムが心地よい「Say No More」、ストレートな疾走感がどことなくV系っぽくもある「Heaven's Descent」、前作での経験が見事に反映されたポップロック「Dagen Før」(この曲には同郷デンマークのポップロックバンドALPHABEATの女性シンガー、スティーム・ブラムセンをフィーチャー)、ヘヴィさとポップさが共存する「The Passenger」、VOLBEAT流サーフロックな「Step Into Light」、デスメタル風オープニングに唸らされるメタルナンバー「Becoming」、METALLICAの「Wherever I My Roam」を思わせるギターリフが印象的な「Mindlock」、約8分におよぶ大作メタルチューン「Lasse's Birgitta」と、60分超のトータルランニングにもかかわらずまったく飽きさせない内容に仕上がっています。ある意味では、ここ数作彼らが試してきた実験の集大成とも言える内容ではないでしょうか。個人的にも最近の彼らの作品ではもっともお気に入りです。
海外デラックス盤および日本盤には複数のボーナストラックを用意。日本盤および海外盤共通で、スウェーデンのハードコアバンドWOLFBRIGADE「Return To None」、THE CRAMPSやロイ・オーソンでおなじみの「Domino」の各カバー、USデスメタルバンドJUNGLE ROTのデイヴ・マトリース(Vo, G)をフィーチャーした「Shotgun Blues」別バージョン、マイケル単独歌唱による「Dagen Før」の4曲に加え、日本盤には「I Only Wanna Be With You」の2019年ライブテイクが収められています(海外盤には同ライブテイクの代わり、先のMETALLICA「Don't Tread On Me」カバーを追加)。海外デラックス盤はCD2枚組仕様ですが、日本盤はCD1枚に80分という収録容量限界に挑んだ仕様となっています。
これだけの力作を完成させたあとなだけに、やっぱりこれらの充実した楽曲群をライブでダイレクトに楽しみたいところですよね……前作での来日も実現しませんでしたし、ここは来年あたりに……と希望を持ちたいところです。あと、せっかく日本盤をきっちりリリースしてくれている事実に対しても、リスナーとしてしっかりフォローしていきたいですよね、バンドの日本における展開のためにも。
▼VOLBEAT『SERVANT OF THE MIND』
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