ABBATH『OUTSTRIDER』(2019)
2019年7月上旬にリリースされた、ABBATHの2ndアルバム。
ABBATHとはノルウェーの伝説的ブラックメタルバンドIMMORTALのフロントマンとして活躍したアバス・エイケモ(Vo, G)が、バンド脱退後の2015年に自身の名前を冠して結成した4人組バンド。同年秋の『LOUD PARK 2015』ではアルバムリリース前にも関わらず、早くも初来日公演が実現しており、その際にはアグレッシブなステージングとは相反した、アバスの日常におけるお茶目なキャラクターが一部に話題にもなったのは記憶に新しいと思います。
2016年に発表されたデビューアルバム『ABBATH』はIMMORTAL時代からひとつのスタイルにこだわらないアバスらしく、スラッシュメタルやパワーメタルなど正統派ヘヴィメタルからの影響も見え隠れする意欲作でした(ボーナストラックとしてJUDAS PRIESTのカバーも収録されていましたしね)。ということは、本作も前の作品とは若干テイストの異なる興味深い内容に仕上がっているはず……と、僕は聴く前からワクワクしていたわけです。
実際に届いたこのニューアルバムは、ある意味で自分の想像どおり、そしてある意味では想像をはるかに超えた力作に仕上がっていました。
例えば、前作でもそうでしたが、すでにABBATHはブラックメタルという狭い範疇にこだわっていないということ。もちろんブラックメタル的要素も演奏面からふんだんに感じることができるのですが、それ以上にピュアなクラシックメタルからの影響がストレートに表れているのです。そういった点は前作同様、本作にも楽曲に彩りを与えております。
基本的な路線は前作『ABBATH』の延長線上にあると言える内容で、そこに冠しては想像どおりであったわけですが、もう一方の「想像をはるかに超えた」という点……実はこちら、アバスのルーツといえる80年代初頭のオールドスクールなHR/HM、特にブラックメタルの始祖的存在であるVENOMや彼らを生み出したNWOBHMシーン、さらにはスウェーデンのBATHORYなどからの影響が表面化。前作でのドラマチックかつオーソドックスな正統派メタルと、ブラックメタルのルーツがミックスされ、そこに現代的な演奏スタイルが加わる……はい、新しいABBATHの出来上がり、というわけです。
BATHORYからの影響という点に関しては、アルバムのエンディングを飾る「Pace Till Death」は文字どおりBATHORYのカバーでストレートに表現している。一周回ってここまでど直球なブラックメタルを、今のアバスが表現するのはいろんな意味で感慨深いものがあります。と同時に、改めてアバスというアーティストの(ブラックメタルという狭い範疇で括っておくには勿体ないほどの)非凡さを感じさせる仕上がりでもあると思いませんか。
ブラックメタルというと意図的に劣悪な録音状態の作品も少なくないですか、こういった高品質で、かつブラックメタルの進化した姿を表したアルバムが正当な評価を下されることを願ってやみません。
▼ABBATH『OUTSTRIDER』
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