CRYPTOPSY『THE BOOK OF SUFFERING』(2019)
CRYPTOPSYが2019年6月中旬にリリースした日本限定アルバム。
全8曲が収録された本作は、同年7月中旬に実現した7年ぶりの来日公演を記念して企画されたもので、もともとはアルバム前半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』(2015年)、後半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』(2018年)が初出という、連作となったシリーズEPをひとまとめにした内容となっています。
現在のメンバーはフロ、マット・マギャキー(Vo)、クリス・ドナルドソン(G)、オリヴィエ・ピナール(B)、フロ・モーニエ(Dr)の4人。ロード・ワーム(Vo)が脱退してからもだいぶ経ちますし、もはやこの4人編成は安定感すら感じられます。
事実、僕も7月13日の代官山UNIT公演に足を運んでいますが、計算され尽くしたプレイの数々と、音数が多いにも関わらずすべての音の粒が感じ取れるほどクリアなサウンドは、この手のバンドとしては異例といえるもので、熱狂的なリアクションを見せるオーディエンスとの相乗効果により、今まで観た彼らのステージの中でも一番と呼べる内容でした。まあとにかく、フロ・モーニエ先生の千手観音ドラミングが圧巻の一言で、あれだけ連打しても音の粒一つひとつが感じられるのは奇跡的だなと思うわけです。観られて本当によかった。
さて、改めてアルバムの話題に戻りましょう。前述のとおり、本作は2つの録音時期が異なるEPをひとつにまとめたもので、2作品の間には3年というタイムラグが生じています。しかし、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』のラストである4曲目「Framed by Blood」と、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』のオープニング曲である5曲目「The Wretched Living」の間にその“3年の差”は一切感じられません。そこには『THE BOOK OF SUFFERING』というひとつのテーマのもとに制作された連作という要素も大きく影響しているのでしょうか。
むしろ、アナログでいうところのA面(『TOME I』)とB面(『TOME II』)という形で、うまく色付けされているとさえ感じられる。つまり、これら8曲は本来収まるべき場所に、収まるべき形で収まったと言えるのではないでしょうか。
メロディやドラマチックさは皆無で、終始無慈悲なまでに轟音で攻めまくり、ときには複雑怪奇な展開で聴き手を驚かせる、CRYPTOPSYならではの個性はどの曲でも健在。むしろ、1曲1曲の際立ちはなかなかのものがあると思います。それはアルバムという形を想定して録音したものではなく、4曲のみというEPとして録音したのも功を奏しているのかもしれませんね。
正式なオリジナルアルバムではありませんし、この形で聴くことができるのは日本のファンのみですが、エクストリームメタルのエクストリームたる所以を存分に味わえる貴重な1枚はぜひとも2019年のうちに触れておいてもらいたいところです。
▼CRYPTOPSY『THE BOOK OF SUFFERING』
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