BAD OMENS『THE DEATH OF PEACE OF MIND』(2022)
2022年2月25日にリリースされたBAD OMENSの3rdアルバム。日本盤未発売。
オリジナルアルバムとしては『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME』(2019年)から約2年半ぶり。その間に、2ndアルバムに新録3曲を追加したリパッケージ盤(2020年)、7曲入りアコースティックライブアルバム『LIVE』(2021年)とフォローアップ作が立て続けに発表され、かつこの3作目に収録されている楽曲(「The Death Of Peace Of Mind」「Artificial Suicide」「Like A Villain」)が2021年後半から2022年初頭にかけて連発されたので、そこまでリリース感覚が空いた印象はありません。
そんなBAD OMENSの新作。基本的には前作『FINDING GOD BEFORE GOD FINDS ME』や同作のリパッケージ盤に収録された新録曲(DURAN DURAN「Come Undone」カバー含む)の延長線上にある仕上がり。モダンなメタルコアやオルタナティヴメタルの路線を踏襲しつつ、よりEDM以降のエレクトロミュージック/エレポップのフレイバーを強めた“脱メタルコア”的作品にまとめられています。
アルバム冒頭を飾る「Concrete Jungle」然り、リードトラックの「The Death Of Peace Of Mind」や「Like A Villain」然り、メタルコア的なヘヴィパート(およびボーカルのスクリーム)は味付け側に回り、基本的には穏やかでムーディーなテイストで固められている。加えて、バイオリンをフィーチャーした「What It Cost」や“アダルト・オリエンテッド・メタルコア”なんて例えがぴったりな「Bad Decisions」、女性ボーカルをフィーチャーした「Who Are You?」などが本作の軸ではあるのは理解できるものの、まだまだ新しい領域には到達できておらず、言ってしまえば“BRING ME THE HORIZON以降”というフォロワー枠を抜けきれていない印象もあります。
ですが、この“BMTH以降”の世界観がすでに固定された魅力にもなりつつあるのも事実で、例えば前作で試みたDURAN DURANのカバーなどからもわかる彼らのルーツが、よりモダンな形で昇華され始めていることにも気づきます。かつ、それらのルーツと現在のモダンポップ、メタルコア以降のラウドロックを並列させることで、“BMTHフォロワー”というスタイルを完成の域に到達させようとしている。もしかしたら、これはこれでひとつのオリジナリティになるのではないか……そんな気すらしてきました。
本作はもうちょっと聴きやすいボリュームでまとめられていたら、さらに評価を高めていたのかもしれません。全15曲/約53分という尺は昨今のアルバムとしては多少長めに感じられます。この手のサウンドなら、正直10曲前後/40分前後くらいでちょうどいいんじゃないか?と思うのは僕だけでしょうか。特に、似たようなテンポ感/テイストの楽曲が続く内容だけに、ね。
というのも、本作中ではアップテンポの部類に入る「IDWT$」、インダストリアルメタルの流れを汲むダンサブルな「What Do You Want From Me?」、ラップコア色を強めた「Artificial Suicide」の終盤3曲における従来のメタルコア路線が本作における強いフックとなっているから。このへんとのバランス感をうまく保ちつつ、アダルト・オリエンテッド路線を極めていけば本家BMTHとはまったく異なる方向性を確立できるのではないでしょうか。ということで、ここから先の進化に期待しています。
▼BAD OMENS『THE DEATH OF PEACE OF MIND』
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