CROWN THE EMPIRE『SUDDEN SKY』(2019)
2019年7月中旬に発表された、CROWN THE EMPIREの4thアルバム。日本盤未発売。
もともとはツインボーカル体制の5人組だった彼らは、アメリカ・ダラス出身のメタルコア/ポストハードコアバンド。2017年初頭にコ・リードボーカル(スクリーム担当)のデヴィッドが脱退し、アンドリュー・ヴェラスケス(Vo)を中心に置きヘイデン・ツリー(B)がスクリームを兼任する形で活動を継続。2018年にはこの4人編成で来日を果たし、日本のcoldrainとツーマンツアーを行い話題となりました。また、CROWN THE EMPIREは過去にもONE OK ROCKと全米ツアーを行った経験もあり、日本のリスナーには若干馴染みのある存在と言えるかもしれません。
4人編成となり初めて制作した本作は、過去の作品と比べるとさすがにスクリームの比率が低くなっており、アンドリューのクリーンボイスを前面に打ち出した(かつ、効果的に用いた)“わかりやすい”作風にシフトしています。
もちろん、適度なヘヴィさやザクザクした気持ち良いギターサウンドは存分に楽しむことがでいます。ぶっちゃけ、ボーカルがクリーンパート1人に重点を置くことで、ギターの見せ方/聞かせ方は以前よりも前に出たものになっているのではないでしょうか。逆に言えば、それくらい過去の作品は2人のシンガーの個性が強かったわけでもあるのですが。
バンドとしてのグルーヴやアレンジでどうこうより、本作はグッドメロディと伸びやかなボーカルを最良の形で活かした曲を作ることに重点を置いている。結果、キャッチーでコンパクトでわかりやすいアルバムが完成した、と。うん、すごくわかりやすい流れですよね。スクリームも適度な頻度で挿入され、アグレッションを表現するという点において非常によいアクセントとなっている。むしろ、昔からこれくらいの比率で構築されており、このバランスがちょうどいいんじゃないかと思えるほど。
この感じ、誰かに似ているな……とアルバムを聴き進めていたのですが、気づきました。先に挙げたcoldrainです。特にここ最近の彼らですね。「What I Am」や「Red Pills」みたいな曲を聴くと、よりそう感じられるのではないでしょうか。
歌で戦うことに対してちゃんと自信のついた最近のcoldrainは無敵の一言。最新アルバム『THE SIDE EFFECT』(2019年)はもはやメタルだラウドだハードコアだと括るのが馬鹿らしくなるくらいにオリジナリティに長けた内容で、今のCROWN THE EMPIREって実はそこに追いつこうとしているんじゃないか……そんな気すらしてきます。
それくらい歌心を持った今のCROWN THE EMPIRE。すごく優れたアルバムだと思いますが、実はこれもまだ通過点でしかないんでしょうね。そういう意味では、この次に誕生するであろう新作こそ彼らの代表作になるのではないか。そんな気がしています。今はこの変化/進化を前向きに受け入れたいと思います。
▼CROWN THE EMPIRE『SUDDEN SKY』
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