SWEET OBLIVION『RELENTLESS』(2021)
2021年4月9日にリリースされたSWEET OBLIVIONの2ndアルバム。
元QUEENSRYCHE、現OPERATION: MINDCRIMEのジェフ・テイト(Vo)を中心に結成されたバンド(というかプロジェクト)。イタリアのプログレッシヴ/テクニカルメタルバンドDGMのシモーネ・ムラローニ(G, B)とタッグを組んだセルフタイトルのデビューアルバム『SWEET OBLIVION』(2019年)からほぼ2年ぶりの今作では、シモーネに代わり新たにイタリアのメロディックメタルバンド、SECRET SPHEREのアルド・ロノビレ(G)をパートナーに迎え制作しました。
アルドがプロデュースを手がけることもあり、レコーディグメンバーも一新された本作。前作ではQUEENSRYCHEの大ヒット作『EMPIRE』(1990年)を彷彿とさせるミドルヘヴィのダークな楽曲中心でしたが、今作延長線上にある作風なのは変わらず。ただ、そこに名作『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)、もっと言えばそれ以前の『RAGE FOR ORDER』(1986年)あたりに見られた質感が復調し、若干クラシカルメタル/メロディックメタル度が増しているように感じられます。
Frontiers Recordsというイタリアのレーベルからのリリースというのも大きいのでしょうが、この2作ともにイタリアの人気メタルバンドのブレインが制作を仕切っています。シモーネもアルドも間違いなく、80年代から90年代初頭のQUEENSRYCHEは通過しているはずですし、いろいろな問題はあれどジェフ・テイトという稀代の名ボーカリストと一緒に仕事できることはうれしかったはず。つまり、自身のオリジナリティとジェフらしさ……往年のQUEENSRYCHEらしさのバランスをどう図り、それを提示するかという使命があったはず。両プロデューサーはその任務を見事に果たしたわけですが、この2ndアルバムでのアルドの仕事ぶりはジェフや我々の想像する以上のものがあるように思えます。
ぶっちゃけ、ジェフが参加した2000年以降のアルバムの中でもっとも優れているんじゃないか……そう思えてしまうほど、ここで展開されている世界観、楽曲、サウンド、ジェフのボーカルパフォーマンスすべてが「本来ファンが聴きたかったGEOFF TATE's QUEENSRYCHE」なのですから。
随所にフィーチャーされたギターのツインリードフレーズ、そしてドラマチックな展開を持つメロディとアレンジ。『EMPIRE』と『OPERATION: MINDCRIME』の中間に位置するメロディアスなメタルサウンド(そう、ハードロックではないんです)に引っ張られるように、ジェフのボーカルトーンも次第に高くなっていく。アルバム中盤、特に「Remember Me」や「Anybody Out There」「Aria」あたりの楽曲はそういった期待に応えるものが備わっているはずです。
これはうれしい誤算だったなあ。もうOPERATION: MINDCRIMEは素直に諦めて、SWEET OBLIVIONに本腰入れてくれたらなあ。毎回気鋭のアーティストとタッグを組んで、「僕の考えるQUEENSRYCHE」をジェフと一緒に表現してくれたら、それはそれで楽しいじゃないですか(主に自分が。笑)。
▼SWEET OBLIVION『RELENTLESS』
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