FLYING COLORS『THIRD DEGREE』(2019)
2019年10月初頭にリリースされたFLYING COLORSの3rdアルバム。日本未発売。
彼らはマイク・ポートノイ(Dr/ex. DREAM THEATER、SONS OF APOLLO、THE WINERY DOGSなど)やスティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE、DIXIE DREGS、ex. KANSASなど)を中心に結成された技巧派プログレッシヴロックバンド。メンバーは2人のほか、USプログレ界では知らぬ者はいないニール・モーズ(Key, Vo/TRANSATLANTIC、ex. SPOCK'S BEARDなど)、デイヴ・ラルー(B/STEVE MORSE BAND、ex. DIXIE DREGSなど)、ケイシー・マクファーソン(Vo, G/ALPHA REVなど)という5人編成で、この名前から想像できるテクニカルかつドラマチックなサウンドを武器として2011年頃からコンスタントに活動しています。
オリジナル作品としては前作『SECOND NATURE』(2014年)から5年ぶりとなる本作は、基本路線は過去2作と変わらず。5分台の楽曲が3曲、6分台が1曲、7分台が3曲、10分超の大作が2曲と相変わらずの大作志向で、全9曲で66分という長尺なトータルランニングは、最近のサブスクリプションサービスを中心とした音楽との接し方に慣れてしまった層には少々キツイかもしれませんが、思えば今年はTOOLの新作『FEAR INOCULUM』もあったことですし、意外とこういう作品もフラットに楽しまれているのかもしれませんね。
いかにもアメリカン・プログレという牧歌的なメロディ&空気感は、例えば同系統のメタル寄りプログレと比べるとユルさは否めません。いや、ユルさというか大人しいというか。もちろん、曲によってはスリリングな演奏も楽しめますよ。ですが、「歌モノAORとプログレを同時に楽しめる」くらいの軽い気持ちで接するとがっかりせずに済むかもしれません。
楽曲の持つ世界観は確実にニール・モーズ、そしてスティーヴ・モーズからのインプットが大きいのでしょう。その2人が過去に携わった作品と共通するものが大いに感じられます。個人的には、DEEP PURPLEのスティーヴ・モーズ加入第1弾アルバム『PURPENDICULAR』(1996年)とリンクするものも見つけられた気がして、「あのアルバムが好きなんだから、そりゃあ楽しめるわけだ」と妙に納得したものです。
それに、この緩やかな世界観はケイシーのボーカルのせいもあるんでしょうね。BOSTONをもっとソフトにしたようで、だけどバックがバキバキ演奏しまくるという。それもあって、個人的にツボなのかな。
ポートノイのファンは、DREAM THEATER的メタリックな方向性はSONS OF APOLLOに求めればいいわけですから、この2つのプログレ系バンドが共存できている今はありがたい状況なのでは。個人的には色の異なる2つのバンドで彼のプレイを楽しめるのはうれしい限りです(年明けにリリースされるSONS OF APOLLOの新作、すでに聴いておりますが素晴らしい出来です)。
AORとしても楽しめるし、マニアックなテクニカルロックとしても存分に楽しめる。本当に“痒いところに手が届く”バンドですね。
▼FLYING COLORS『THIRD DEGREE』
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