ROXY BLUE『ROXY BLUE』(2019)
90年代前半にメジャーレーベルからデビューアルバム『WANT SOME?』(1992年)1枚のみを残して消えていったアメリカ・テネシー州出身のグラム・メタルバンド、ROXY BLUEが27年ぶり(笑)に2ndアルバムをリリース。海外では2019年8月上旬に、日本では同月下旬に発売されました。
Geffen Recordsがグランジ全盛の中、満を辞して送り出した“最後の大物”ROXY BLUE。デビューアルバムは僕も当時購入しており、そのわかりやすいキャッチーさが当時主流だったグランジのそれとは明らかに異なり、「おいおい、登場が5年遅かったよ……」と悲しくなったりもしましたが、完成度の高さはなかなかのものがあったと思います(個人的にはVAN HALENの影響下にあるハードブギー「Rob The Cradle」が大好きでした)。
まあ時代が時代だったので、彼らはあっけなく解散することになるわけですが、再結成はまだしも27年ぶりに2ndアルバムを発表することになるとは……誰得だよって話ですよね(笑)。
メンバーはトッド・ポール(Vo)、ジョシュ・ワイル(B)、スコッティ・トラメル(Dr)のオリジナルメンバー3人に、新メンバーのジェフ・コーロン(G)を加えた4人。ギタリストが変われば、展開される楽曲のスタイルも変わるのは仕方ない話なのですが……。
……ええーっ、ここまで変わる!?
ダークです。1994年くらいにやっていたら、当時のHR/HMリスナーから叩かれたヤツです。グランジ以降のダーク&ヘヴィなスタイルを軸に、適度にグルーヴィーなミドルナンバーが中心。ポップでグラマラスでわかりやすかった1stアルバムはなんだったの?とツッコミを入れたくなるほどに、27年前とは別のバンドになってしまいました。
27年もあれば人の趣味はここまで変わるんだという、当たり前っちゃあ当たり前の現実を突きつけられ、時の流れって残酷だね……と複雑な気持ちになったりもしましたが、ダークでレイドバックしたハードロックという点においては平均点以上の仕上がりかな。中でも「Collide」や「Blinders」といったバラード調の楽曲が良い味を出しており、ドラマチックな展開の「Blinders」は個人的にとても好み。
ただ、もともとVAN HALENスタイルのバンドだったこともあり、フロントマンの歌唱力/表現力に頼るというよりは、以前は曲のノリで突き進む方向性だったはず。それが新作では、表現力の高さが求められる微妙なスタイル(似たようなテンポ/曲調に対し、いかに変化を与えていくかが求められるスタイル)に変化したことにより、「本当にこのボーカルのままでいいの?」という新たな問題も生じております(フレッシュさ皆無の、ヘヴィロック向きなダミ声になっちゃいましたし)。困ったものです。
80年代を謳歌したHR/HMバンドが“冬の時代”である90年代を通過し、さらに新たなシーンが確立された2000年代を通過するとどう進化するのか。その見本のようなアルバムと言えるかもしれませんね。悪くはないです。ただ、ほかに聴くべき良作はたくさんあるのも事実。この名前にピンときた人は、過剰な期待をせずに手を出してみてはどうでしょう……前作ほどの感動は得られないかと思いますが、これはこれで“アリ”と思えたならみっけものかな。
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