STARSET『HORIZONS』(2021)
2021年10月22日にリリースされたSTARSETの4thアルバム。日本盤未発売。
前作『DIVISIONS』(2019年)から約2年ぶりの新作。バンドの代表作となった2ndアルバム『VESSELS』(2017年)に匹敵する、全16曲/71分という長尺な1枚に仕上がりました。
“シネマティック・ロックバンド”というコンセプトをそのまま具現化した、EDMなどエレクトロニックサウンドを全面にフィーチャーしたアレンジ/アンサンブルと、伸びやかでキャッチーなメロディが武器の本作。もはやメタルコアだとかDjent(ジェント)だとかハードロックだとか、それこそエレクトロニックミュージックだとかいった細かいジャンル分けが不必要なほど、独自のスタイルが確立されています。
ギターサウンドはある程度強く打ち出されているものの、それ以上耳に残るのはシンセや歌メロのほう。壮大さを伴うアンサンブルは過去イチの作り込みで、リズムトラック(時にそれは生ドラムであり、ある時には打ち込みでもある)のEDMにも通ずる強力な重低音で地盤を固めているから、どの曲も安定感が強い。かつ、曲と曲をシームレスにつなぐ工夫(ナレーションだったり、シンセなどによるインタールードだったり)が非常に凝っており、コンセプトアルバムというよりはひとつのロックオペラを聴いているような錯覚に陥る。このへんも過去作同様ではあるものの、作り込みの度合いが過去イチ。どれだけ気合い入れたんだって話ですよ。
前作『DIVISIONS』は大きな変化を伴う1枚ということで、一部のファンからは不評だったと耳にします。しかし、その延長線上にありながらネクストレベルへと到達した今作は、問答無用の内容ではないでしょうか。
個人的には序盤の「Icarus」〜「Earthrise」への流れが圧巻だと感じています。中でも後者の完成度は非常に高いものがあり、この手のバンドの楽曲ではスリリングさとキャッチーさのバランスが非常に絶妙。あとあと調べたらやはりというか、アルバムリリース直近のリードシングルとして先行配信されています。
この手のサウンドはBRING ME THE HORIZON以降、いたる場面で耳にしますが、ひとつのコンセプトに基づきメタリックな側面とエレクトロニックな側面を両立させ、かつ分断することなく自然な形でミックスできるという点において、STARSETのこの新作はひとつの極みと言えるのではないでしょうか。モダンなサウンドに抵抗がなく、かつ歌ものラウドロックを愛聴するリスナーにはうってつけの1枚。実に2021年らしい良作だと思います。
▼STARSET『HORIZONS』
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