LINDEMANN『F & M』(2019)
2019年11月下旬にリリースされたLINDEMANNの2ndアルバム。全11曲入りの通常盤とボーナストラック2曲を追加したデラックス盤の2形態を用意(日本盤は海外デラックス盤に対訳を付けた直輸入盤仕様)。
LINDEMANNは、RAMMSTEINのフロントマンであるティル・リンデマン(Vo)とPAINやHYPOCRISYなどのデスメタルバンドで活躍したスウェーデン人のピーター・テクレン(All Instruments)からなるユニット。2015年に全編英語詞による1stアルバム『SKILLS IN PILLS』はドイツやフィンランドで1位を獲得し、長く待たれていたRAMMSTEINのニューアルバムまでの良いつなぎの役割を果たしてくれました。
あれから約4年を経て、奇しくもRAMMSTEIN待望の新作『(untitled)』(2019年)と同じ年にリリースされたLINDEMANNの2ndアルバムは全曲ドイツ語詞によるコンセプチュアルな1枚。ティル・リンデマンとハンブルグにあるタリア劇場とのコラボレーションによる、グリム兄弟の童話『ヘンゼルとグレーテル』を現代風に解釈した戯曲(2018年上演)からインスパイアされた作品となっています。
プレスリリースによると「恐怖、貧困、裕福、カニバリズム、死など」がテーマになっており、同戯曲からの5曲と新たに制作された6曲から構成されています。ちなみに戯曲に用いられたのはM-3「Allesfresser」、M-4「Blut」、M-5「Knebel」、M-8「Schlaf ein」、M-11「Wer weiß das schon」(実際に使用されたものとは一部アレンジが異なるとのこと)。
もともとは今年4月、文字通り『HÄNSEL UND GRETEL』というタイトルで発表予定でしたが、RAMMSTEINの新作とリリース時期がかぶることから遅れたのでしょうか、それとも新たに制作された楽曲が追加されることになり11月まで持ち越しになったのでしょうか。どちらにせよ、すごく良いタイミングでの発表になったのではないでしょうか。
気になる内容は、前作『SKILLS IN PILLS』の延長線上にありつつも、RAMMSTEINの新作にも通ずるサウンド/テイストが用いられており、非常に聴きやすいものに仕上がっています。デジタル色を適度に含むバンドサウンドを軸に、中には「Schlaf ein」「Wer weiß das schon」のようにクラシカルなバラード、フォーキーなパートを持つ「Knebel」(曲後半から突如ヘヴィに転調)、タンゴ調の「Ach so gern」みたいな楽曲もあり、意外と楽曲の幅は広く感じられます(ボーナストラック「Ach so gern (Pain Version)」はバンド&デジタルなアレンジで、こちらもカッコいい!)。
楽曲の大半をピーターが作曲していることからRAMMSTEINのそれとは多少異なるものの、結局ティルが母国語で歌えば“それっぽく”なることも証明されたのではないでしょうか。RAMMSTEINの新作が気に入った人なら間違いなく一発で受け入れられるはずです。
なお、日本盤は対訳が付いているので(輸入盤よりも少々値が張りますが)オススメです。さらに、こちらのRAMMWIKIなるファンサイトで各曲のテーマを知ると、歌詞の意味合いもより深く感じられるのではないでしょうか。相変わらずゲスいだけじゃなくて、深いことも歌っているので、チェックしてから聴くことをオススメします。
▼LINDEMANN『F & M』
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