RAISE A SUILEN『ERA』(2020)
2020年8月19日にリリースされたRAISE A SUILENの1stアルバム。
メディアミックスプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』から生まれた、第3の“リアルバンド”は、2018年12月の1stシングル「R・I・O・T」から現時点(2021年4月1日)までに6枚のシングルを発表。この1stアルバムには4作目「DRIVE US CRAZY」(2020年1月発売)までに発表されたカップリング曲を含む8曲に加え、本アルバムからのリードトラック「SOUL SOLDIER」など新曲4曲からなる全12曲が収録された、まさに名刺代わりの1枚に仕上がっています。
ポップで軽やかなギターロックのPoppin'Party、女王の座を欲しいままにする王道中の王道ハードロックを奏でるRoseliaの先陣を切ったリアルバンド2組は、ゲームやアニメの世界観(およびバンドメンバーのキャラ)ありきでバンドの方向性が確立されたところが大きいと思いますが、RASに関してはまず「リアルバンドとして成立していない登場バンドの、ライブでの演奏を務める」バックバンドという役割からスタートしています。つまり、絶対的な演奏力が最初から求められていたわけです。
僕、RASに関しては楽曲よりもライブを観て圧倒されたクチでして。楽曲自体はエレクトロニコアやピコリーモの影響下にあるラウドロック/J-ROCKという印象で、非常にモダンで好印象といった感覚で接していたのですが、(このアルバムの初回盤にもライブ映像を収めたBlu-rayが付属しているので、ぜひそちらで確認してもらいたいのですが)あのライブでの技術力とパフォーマンス力、発するエネルギーにノックアウトされない人はいないんじゃないか……そう思うくらい、久々に衝撃を受けたんです。
そう感じてから、彼女たちの楽曲に再び触れてみると、CD音源としての完成度は当たり前なんですが、それと同じくらいライブを意識して制作された楽曲群なんだなと気付かされたのです。シングルの表題曲に採用された「R・I・O・T」や「A DECLARATION OF xxx」、カップリング曲ではありますが「Invincible Fighter」や「HELL! or HELL?」あたりは間違いなくライブ前提でアレンジされていますものね。一度ライブを味わってからこれらの楽曲たちに触れると、5人がステージで思い思いに表現する姿が容易にできるわけです。
アルバムのために用意された国産ラウドロックならではの「SOUL SOLDIER」など、新曲群もカッコいいったらありゃしない。あと、しっかり歌える(聴かせられる)ボーカリスト(Raychellさん)を擁しながらも、全12曲の中にバラードらしいバラードが1曲もなく、すべて前のめりで攻め攻めな姿勢なのも好印象。それによって、Raychellさんの歌が活きるだけではなく、DJかつラップボーカル的な役割の紡木吏佐の個性がより際立つ結果を生み出しているんですから。1枚目のアルバムだもの、これくらい強気でいいんですよ。表現の幅を広げるのは、この先で十分。まずはRASらしさをしっかり伝えることが重要ですから。
既存曲が3分の2を占めるという点で、昨年のベスト20作品からは敢えて外しましたが、個人的には昨年後半はポピパやRoseliaの2ndアルバムと同等にヘヴィローテーションした1枚。2021年に発表したシングルがどれも“『ERA』のその先”を感じさせるものばかりなので、気が早いですがもう2枚目のアルバムが楽しみになっています。
▼RAISE A SUILEN『ERA』
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