BRYAN ADAMS『GET UP』(2015)
2015年10月2日にリリースされたブライアン・アダムスの13thアルバム。日本盤は同年10月16日発売。
新作スタジオ音源としては70年代の名曲カバー集『TRACKS OF MY YEARS』(2014年)から約1年ぶり、新曲で構成されたオリジナルアルバムとしては『11』(2008年)から約7年半ぶりの新作。その7年の間には、『BARE BONES』(2010年)、『LIVE AT SYDNEY OPERA HOUSE』(2013年)とライブ作品も立て続けに発表されていたので、意外と空いた感覚はなかったですよね。
『11』では一部楽曲で盟友ロバート・ジョン“マット”ラングを迎え、基本的にセルフプロデュースで制作を進めていましたが、今作ではELOやTRAVELING WILBURYSのメンバーにしてジョージ・ハリスンやトム・ペティ、ポール・マッカートニーなどのプロデュースでも知られるジェフ・リンがトータルプロデュースを担当。全13曲で構成された本作ですが、新曲は9曲のみで、そのほかの4曲はその新曲のアコースティックバージョン(この別ていくのみブライアン自身がセルフプロデュース)。かつ、1曲1曲が2〜3分という古き良き時代のロック/ポップスを踏襲した構成で、アルバム自体約36分という短い尺なのです。これ、アコースティックバージョンを除いたら26分くらいなんですよ(苦笑)。
そんな短い内容ですが、どの曲もブライアンらしいキャッチーなポップロックばかり。直前にルーツ回帰的な『TRACKS OF MY YEARS』を経たこともあってか、従来の彼らしさにレイドバック感も加わり、かつジェフ・リンらしいサウンドメイクによってビートルズ・ライクな質感へと昇華されている。ソングライティング自体はブライアンとおなじみジム・ヴァランスとのタッグ中心なのですが、そもそもブライアン自身がこういうモードなんでしょう。
あと、『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)などでコラボしたフィル・ソーナリー(ex. THE CURE、ex. JOHNNY HATES JAZZ)も「That's Rock And Roll」でコライトしたほかギターを担当していたり、「Go Down Rockin'」で初期からの仲間であるキース・スコットがギターを弾いていたりするものの、レコーディングの大半をブライアンとジェフ・リンが担当しているのも、過去の代表作との大きな違いでしょうか。エンジニアリングやミキシングのみならず、演奏面でもジェフによる“ビートルズっぽさ”が大きく作用しているようです。
2023年時点での最新作『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)との共通点も見受けられ、現在に至る最新の基本スタイルはここでひとつ完成した感もあるのかな。もともと持ち合わせていた要素ではあるものの、ここまで特化させたのはヒット云々を抜きに、やりたいことをやって余生を過ごしたいという思いも強かったのかもしれません。もはや20〜30代の頃のようなメガヒットを狙うより、童心に帰って音楽を楽しむほうが合っている気がしますしね。
▼BRYAN ADAMS『GET UP』
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