SOULFLY『TOTEM』(2022)
2022年8月5日にリリースされたSOULFLYの12thアルバム。
前作『RITUAL』(2018年)から約3年10ヶ月ぶりの新作。間隔が空いたように感じますが、その間もマックス・カヴァレラ(Vo, G)はKILLER BE KILLEDの2ndアルバム『RELUCTANT HERO』(2020年)や、息子のイゴールと立ち上げたGO AHEAD AND DIEのアルバム『GO AHEAD AND DIE』(2021年)と、意外と精力的な創作活動を続けていました。
そんな中、2021年には4thアルバム『PROPHECY』(2004年)から在籍してきたマーク・リッゾ(G)が脱退。レコーディングはマックス、息子のザイオン(Dr)、そしてマイク・レオン(B)というトリオ編成で開始し、今作のプロデューサーであるアーサー・リズク(POWER TRIP、CAVALERA CONSPIRACY、XIBALBAなど)がリードギターを担当しています(なお、ツアーではFEAR FACTORYのディーノ・カザレスがサポート参加)。
本作はザイオンの「初期SEPULTURAの名曲たちはどうやって書かれたのか?」という一言がきっかけとなり、『ARISE』(1991年)でのブレイク前夜を思わせるシンプル&ストレートなスラッシュ&デスメタルをベースにしたグルーヴメタルを展開。ラストナンバー「Spirit Animal」こそ9分半におよぶ大作ですが、それ以外の楽曲は基本的に2〜3分台のショートチューン中心で、全10曲で約40分というかなりコンパクトな内容に仕上がっています。「Spirit Animal」がなかったら30分強であることを考えると、その潔さがご理解いただけるかと思います。
従来のSOULFLY的グルーヴ感やトライバルな要素は随所に残しつつも、黎明期のSEPULTURAにも通ずる初期衝動感や焦燥感、さらにゴシックロック的な味付けも感じられる。単なる過去の焼き直しで終わらないような工夫はさすがだと思いました。
ただ、上記のような「らしさ」は伝わるものの、肝心の楽曲自体の完成度やインパクトは及第点止まりのような印象も。これぞ!と呼べるキラーチューンが見当たらないのが残念でならず、なんとなく勢いで押されて進行し、気づいたらラストの「Spirit Animal」でダラダラしたエンディングを迎えるという……ラストナンバーでのやりたいことは非常に理解できるものの、このタイミングではなかったんじゃないか? このアルバムでやることではなかったのでは?という印象も受け、最終的にはかなり薄味という感想を残してアルバムは幕を下ろすのでした。
クリス・ウルシュ(B/POWER TRIP)やジョン・ターディ(Vo/OBITUARY)のゲスト参加もそこまで大きな効果を残すことなく、なんとも言えない中途半端な印象を残す本作。当初のコンセプトとバンドとしてやりたいこと、プロデューサーが作品として残したいものの間に大きなズレが生じ、結果としてこの内容になったのではないでしょうか。決して悪くはないんだけど、もしマーク・リッゾが残っていたらさらに締まったのでは……なんてたられば話はしたくないですが、どうしてもそう考えてしまいたくなる、なんとも勿体ない1枚です。
▼SOULFLY『TOTEM』
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