IT BITES『ONCE AROUND THE WORLD』(1988)
IT BITESが1988年3月にリリースした2ndアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年4月下旬に発売されています。
ASIAのマネジメントが契約、レーベルもVirgin Records(北米以外)&Geffen Records(北米)と確実に“第二のASIA”を目論んでメディアに売り込もうとされていたIT BITES。確かにその意図もわからなくないですが、むしろこのバンドはもう少しハードロック的な香りが強かったこともあり、良い意味で当時のHR/HMムーブメントに乗ろうとしたところもあったのではないでしょうか。
全英チャート35位まで上昇したデビューアルバム『THE BIG LAD IN THE WINDMILL』(1986年)から2年ぶりに発表された本作は、前作の延長線上ではあるものの、適度なプログレ感と適度なニューウェイヴ感(時代的にもニューロマ以降やTEARS FOR FEARSあたりのそれ)、そして適度はハードロック感が備わった高性能ポップメタル作に仕上がっています。
シングルヒットもした「Kiss Like Judas」(全英76位)や「Midnight」のようなキャッチーでコンパクトな楽曲もあれば、同じくシングルカットされたけどプログレ感満載の長尺曲「The Old Man And The Angel」(全英72位)や「Once Around The World」も含まれている。前者は9分半、後者は約15分という容赦なさ(笑)。思えば前作『THE BIG LAD IN THE WINDMILL』の時点では長尺曲って6分台が最長だったので、ここで一気にプログレ度が増したんですね。むしろ僕、リアルタムではこのアルバムから入っていたので、当時は「ああ、こういうバンドなんだ」と自然と納得していましたけど。
メロディの憂いは完全にブリティッシュバンドのそれで、例えば昨日紹介したCUTTING CREWあたりにも通ずる繊細さやセンチメンタリズムが存在する。これは絶対にアメリカのバンド、あるいはほかのヨーロッパ諸国のバンドにも真似できないものだと思います。「Yellow Christian」のメロディ&アレンジのひねくれ具合なんて、絶対にイギリス産だなってわかるものですし。これ、好きな人にはたまらないですよね。
シンセの音色に時代を感じるのは仕方ないとはいえ、フランシス・ダナリー(Vo, G)のテクニカルなギタープレイや、安定感のある(と同時に軽やかな)リズム隊のプレイ、80年代らしいキラキラ感に満ちたキーボードなど、とにかく華やかさに満ちた1枚だと思います。
日本や海外での評価を決定づけた代表作ではあるものの、本国でのチャート的には前作より若干劣るんですよね(全英43位)。もちろん、そんなのは数字上だけのもので、本作の完成度を測るものではありません。捨て曲なし、文句なしの傑作。IT BITESの入門編としてぜひ手にとってみてください。
なお、本作は現在ストリーミングサービスではアルバム単体での配信は行われておらず、数年前にリリースされた“初期オリジナルアルバム3作+ライブアルバム+シングルC/W曲網羅”の4枚組CD『WHOLE NEW WORLD (THE VIRGIN ALBUMS 1986-1991)』(2014年)の中で聴くことができます。僕もこの4枚組を購入しましたが、手頃な価格でオリメン時代の音源を楽しめるのでオススメです。
▼IT BITES『ONCE AROUND THE WORLD』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD)
