カテゴリー「2020年の作品」の190件の記事

2021年4月 9日 (金)

OCTAVISION『COEXIST』(2021)

2021年3月24日にCDリリースされたOCTAVISIONの1stアルバム。

OCTAVISIONはギタリスト&コンポーザーとして活躍するホヴァク・アラヴェルディアンを中心とした、プログレッシヴメタル・プロジェクト。2016年に動画配信サイトに公開された、9分半にもおよぶインスト大作「Three Lives」が一部界隈で注目を集めました。同曲にはジャズ/フュージョン界で知られる超絶ベーシスト、ヴィクター・ウッテンが参加していたことでも反響を呼び、このプロジェクトの全貌を求める声は日々高まっていきました。

そして、2020年12月には各種配信サイトにて本アルバムをデジタルリリース。これに続き、日本のみで本作のフィジカルリリースが今年3月に実現したわけです。

このアルバムにはホヴァクやヴィクターのほか、MR. BIGSONS OF APOLLOなどで活躍するビリー・シーン(B)、Roman Lomtadze(Dr)、Murzo(Key)、Avo Margaryan(Blul/アルメニアの伝統的なフルート)といったプレイヤーたちが参加。さらに、タイトルトラック「Coexist」と「Apocalyptus」にはジェフ・スコット・ソート(Vo/SONS OF APOLLO、SOTOなど)もゲスト参加しております。

全体的に各プレイヤーの技巧的プレイを大々的にフィーチャーした、クラシカルな要素とモダンヘヴィネス以降のヘヴィメタルを融合させたサウンドが特徴。ベーシックな部分は“DREAM THEATER以降”と言えますが、随所に仰々しいクワイアなども取り入れられている。しかし、このプロジェクトの魅力はそこというよりは、むしろアルメニアの伝統的な管楽器Blulや中東のミステリアスな旋律を織り交ぜた「Mindwar」や「Three Lives」のような楽曲にこそ独特の個性が表れている。そういった旋律をホヴァクのテクニカルなソロプレイで、あるいはキーボードとのユニゾンプレイで表現されており、そういったところで独自性を強くアピールしています。

さらに、デジタルエフェクトも効果的に用いられており、「Mindwar」のような楽曲では2000年代以降のモダンテイストも伝わってくる。そういったところでも異色さや独特の個性も、しっかり醸し出せているのではないでしょうか。

それにしても、Blulをフィーチャーしたプログレッシヴメタルというのは、なんとも新しい。フルートなどを取り入れた旧世代のプログレは過去にも存在しましたが、音圧の高いメタリックなサウンドにこうした管楽器が取り込まれるのは、なんとも不思議なものが感じられます。一方で、ジェフのボーカルをフィーチャーした2曲は彼のパワフルな歌声と相まって、一聴した限りではSONS OF APOLLOを彷彿とさせるものがあります(こればかりは仕方ないですね)。ただ、メロディの運びや旋律は確実に差別化ができているので、聴いているうちに別モノだと理解できる。特に10分にもおよぶ超大作「Apocalyptus」は、その構成美/構築美含め圧倒的な個性を放っています。

とはいえ、やはりこのプロジェクトの魅力はインストゥルメンタルパートでの多彩さ/テクニカルさ/非凡さにあるので、歌モノはおまけといったところかな。全7曲で54分というボリュームは、この手の作品としては比較的程よいものなので、初心者でも意外と楽しめるのではないでしょうか。DREAM THEATERやSONS OF APOLLOを筆頭に、昨今のプログミュージック/プログレッシヴメタルに多少なりとも興味があるリスナーなら、触れておいて損はしない1枚です。

 


▼OCTAVISION『COEXIST』
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2021年4月 1日 (木)

Roselia『Wahl』(2020)

2020年7月15日にリリースされたRoseliaの2ndアルバム。

2018年5月発売の1stアルバム『Anfang』から2年2ヶ月ぶり、中島由貴さん(B/今井リサ役)、志崎樺音さん(Key/白金燐子役)が加入してから初のフルアルバム。6thシングル「R」(2018年7月)から10thシングル「約束」(2020年1月発売)までのシングル表題曲5曲とカップリング曲「"UNIONS" Road」、アプリゲームで先行披露されていた楽曲を含むCD初収録の3曲に加え、『Anfang』にも含まれていた「Determination Symphony」「Re:birth day」「Neo-Aspect」も再収録されています。

実はこの3曲、一聴すると同じテイクのように感じられるかもしれませんが、ボーカルパートを現メンバーで再録したもの。現在のライブに近い形で再収録されているわけです。ライブでもお馴染みの楽曲も含まれているので、現編成での最初の集大成という見方もできますが、できることなら未聴の新曲がもう1つ2つ欲しかったかな(あくまで個人の感想です)。

本作の強みはなんといっても、様式美スピードメタル「FIRE BIRD」や流麗なメロディのミディアムバラード「Safe and Sound」のシングル2作が含まれていること。クセが強くて圧倒的な前者と、しなやかさと繊細さを見事に表現した後者が並んで収録されていることもそうですが、この対比が非常に気持ちよく、バンドとしての可能性をさらに一段高いところへと導いてくれます。

そこから、プログレメタル要素を含む「Avan-garde HISTORY」へと続く構成も素晴らしい。とにかくこの高い演奏技術を要する楽曲が増えたことは、バンドの力量を伸ばすという点においても非常に大きな意味があるのではないでしょうか。

終盤の「約束」から「"UNIONS" Road」への流れ、そして「Song I am.」でラストを飾る。「R」で始まり「Song I am.」という構成含め、完璧なんじゃないかなと。前作での「熱色スターマイン」〜「軌跡」という綺麗な流れも素晴らしかったですが、唯一無為の「誰にも負けない自我の強さ」を提示する今回のオープニング&エンディングも今のRoseliaらしくて最高だと思いました。

本作をガールズメタルの範疇に含めるのかどうかは聴き手の判断に委ねますが、僕は「J-ROCKのスタイルに沿ったモダンなガールズメタル」アルバムと捉えています。なお、本作はメンバー5人が実際に演奏するライブ映像(しかも2019年8月の富士急公演!)を収めたBlu-rayが2枚も付属しているので、ベスト盤感覚としても楽しめるんじゃないかな。少々値は張りますが「これさえあれば、現在のRoseliaを網羅」と言える内容じゃないかと思います。

 


▼Roselia『Wahl』
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RAISE A SUILEN『ERA』(2020)

2020年8月19日にリリースされたRAISE A SUILENの1stアルバム。

メディアミックスプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』から生まれた、第3の“リアルバンド”は、2018年12月の1stシングル「R・I・O・T」から現時点(2021年4月1日)までに6枚のシングルを発表。この1stアルバムには4作目「DRIVE US CRAZY」(2020年1月発売)までに発表されたカップリング曲を含む8曲に加え、本アルバムからのリードトラック「SOUL SOLDIER」など新曲4曲からなる全12曲が収録された、まさに名刺代わりの1枚に仕上がっています。

ポップで軽やかなギターロックのPoppin'Party、女王の座を欲しいままにする王道中の王道ハードロックを奏でるRoseliaの先陣を切ったリアルバンド2組は、ゲームやアニメの世界観(およびバンドメンバーのキャラ)ありきでバンドの方向性が確立されたところが大きいと思いますが、RASに関してはまず「リアルバンドとして成立していない登場バンドの、ライブでの演奏を務める」バックバンドという役割からスタートしています。つまり、絶対的な演奏力が最初から求められていたわけです。

僕、RASに関しては楽曲よりもライブを観て圧倒されたクチでして。楽曲自体はエレクトロニコアやピコリーモの影響下にあるラウドロック/J-ROCKという印象で、非常にモダンで好印象といった感覚で接していたのですが、(このアルバムの初回盤にもライブ映像を収めたBlu-rayが付属しているので、ぜひそちらで確認してもらいたいのですが)あのライブでの技術力とパフォーマンス力、発するエネルギーにノックアウトされない人はいないんじゃないか……そう思うくらい、久々に衝撃を受けたんです。

そう感じてから、彼女たちの楽曲に再び触れてみると、CD音源としての完成度は当たり前なんですが、それと同じくらいライブを意識して制作された楽曲群なんだなと気付かされたのです。シングルの表題曲に採用された「R・I・O・T」や「A DECLARATION OF xxx」、カップリング曲ではありますが「Invincible Fighter」や「HELL! or HELL?」あたりは間違いなくライブ前提でアレンジされていますものね。一度ライブを味わってからこれらの楽曲たちに触れると、5人がステージで思い思いに表現する姿が容易にできるわけです。

アルバムのために用意された国産ラウドロックならではの「SOUL SOLDIER」など、新曲群もカッコいいったらありゃしない。あと、しっかり歌える(聴かせられる)ボーカリスト(Raychellさん)を擁しながらも、全12曲の中にバラードらしいバラードが1曲もなく、すべて前のめりで攻め攻めな姿勢なのも好印象。それによって、Raychellさんの歌が活きるだけではなく、DJかつラップボーカル的な役割の紡木吏佐の個性がより際立つ結果を生み出しているんですから。1枚目のアルバムだもの、これくらい強気でいいんですよ。表現の幅を広げるのは、この先で十分。まずはRASらしさをしっかり伝えることが重要ですから。

既存曲が3分の2を占めるという点で、昨年のベスト20作品からは敢えて外しましたが、個人的には昨年後半はポピパやRoseliaの2ndアルバムと同等にヘヴィローテーションした1枚。2021年に発表したシングルがどれも“『ERA』のその先”を感じさせるものばかりなので、気が早いですがもう2枚目のアルバムが楽しみになっています。

 


▼RAISE A SUILEN『ERA』
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2021年3月17日 (水)

CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020)

2020年9月18日にリリースされた、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスと元SUEDEバーナード・バトラーによるコラボアルバム。日本盤未発売。

本作は2014年に制作されていたものの、諸事情により6年以上お蔵入りとなっていた曰く付きの1枚。2020年に入ってからNeedle Mythologyというインディレーベルの目に留まり、正式リリースが実現したという経緯があります。

キャサリンにとってはTHE ANCHORESSのデビューアルバム『CONFESSIONS OF A ROMANCE NEVELIST』(2016年)発表前に関わった作品であり、バーニーにとってはEP2枚と短命に終わったTRANSと同時進行で制作に取り組んだ1枚でもあるのですが……これが非常に良いんです。僕、このアルバムの存在を2021年に入ってから知ったんですね(THE ANCHORESSの新作発売に関するプレスリリースを通して)……なんでもっと早くに出会ってなかったんだろう!? と強く思った、2020年のベストアルバムに選出すべき1枚だったのです。

キャサリンの歌を軸にしつつ、バーニーは裏方(ギタリスト&ソングライター、プロデューサー)に徹した内容なのですが、曲が進むにつれてバーニーのギタリストとしての主張がどんどん強くなっていくのが非常に興味深いんです。最初こそTHE ANCHORESSにも通ずる耽美な世界観が構築されているのですが、「Sabotage (Looks So Easy)」あたりから空気が一変。あのねちっこい激情型ギタープレイが随所にフィーチャーされ始めるのです。そうそう、これよこれ!

McALMONT & BUTLERやバーニーのソロ作で感じられたソウルフルさと、初期SUEDEにも通ずるグラマラスな要素がバランスよく散りばめられた楽曲の良さと相まって、2人の個性も曲を重ねるごとにどんどんディープさを増していく。個人的には「I Know」や「No More Tears To Cry」「The Waiting Game」あたりで楽しめる2人の化学反応と、その集大成といえるラストナンバー「F.O.H.」がツボすぎて、聴くたびに何度も鳥肌を立てたものです。いやあ、本当に素晴らしい。バーニー関連の作品でいうと、個人的には彼のソロ1作目『PEOPLE MOVE ON』(1998年)以来となる会心の仕上がりと断言したいです。

今回の正式リリースに際して、アルバムにはボーナストラック2曲を追加。ひとつはマドンナの80年代のヒット曲「Live To Tell」カバーで、こちらはTHE ANCHORESS的側面が強いアレンジと言えるかもしれません。これはこれで良きかな。もうひとつは、アルバム収録曲「The Patron Saint Of The Lost Cause」の別バージョン。リズムトラックを排除し、鍵盤ハーモニカを主軸にしたアレンジとなっています。これもこれで味わい深くて良きかな。まあ、アルバム本編は「F.O.H.」という大傑作で盛大に幕を下ろすので、この2曲はオマケ以外の何ものでもないですけどね。できれば「F.O.H.」が終わったところでワンクッションおいて、しばらくしてからボートラに触れると最適かもしれません。

いやあ、それにしても素晴らしい作品じゃないですか。THE ANCHORESS自体がMANIC STREET PREACHERSMANSUN、そしてSUEDEあたりを好むリスナーにドンピシャなアーティストであるわけですが、このコラボ作はその中でも飛び抜けてど真ん中な1枚であると同時に、時代を超越したロック/ポップスの名盤と呼ぶに相応しいのではないでしょうか。昨年リリースされたアルバムの中ではトップクラスに好きな作品です。

 


▼CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』
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2021年3月 7日 (日)

KING 810『AK CONCERTO NO.47, 11TH MOVEMENT IN G MAJOR』(2020)

2020年11月13日にリリースされたKING 810の4thアルバム。日本盤未発売。

デヴィッド・ガン(Vo, G)とユージーン・ギル(B, G, Dr)の2人体制になって初のアルバム『SUICIDE KING』を2019年1月に自主リリースした彼らですが、そこから約2年を経て届けられた今作。今回もデヴィッドを中心に同じ布陣、同じスタイルで制作されたことが伺える仕上がりとなっています。

前作にてハードコア色が後退し、一方でニューメタル色が濃くなりはじめていましたが、今作ではその色合いがさらに強まることに。オープニングを飾る「AK Concerto No. 47」では、DISTURBEDのデヴィッド・ドレイマン(Vo)を彷彿とさせるパーカッシヴな歌唱スタイルに驚かされることでしょう。(恐らく)打ち込みで構成されたリズムトラックはこのミドルヘヴィな曲調に非常に合っており、かつそこにデヴィッド・ガンの新たな歌唱法が加わることで……懐かしさを感じずにはいられません。

かと思えば、前作からの流れを汲むリードトラック「Hellhounds」では、MARILYN MANSONあたりを彷彿とさせる作風(MVではビジュアルも)で無駄にスケールの大きさをアピール。続く「Love Under Will」のようなデジタル・ゴシックと言わんばかりの曲調も、早くもこのバンドのカラーにマッチしており好印象を与えます。

前半は前作の延長線上にあるミドルヘヴィのニューメタルスタイルで押し通しますが、後半に入るとそのカラーに少しずつ変化が。「Dukes」での若干跳ね気味なリズム&ギターリフは、本作において良いアクセントになっているように案じました。さらに「House Of Dust」ではテンポを上げることでさらなる高揚感を与え、インダストリアル調の「Love Bomb」、グルーヴィーな「Suicide Machines」と良い流れを作り、ラストの「2a」で盛大に締めくくる。後半から終盤にかけて、尻上がりに良くなっていく印象を与える内容だと思いました。

もはやRoadrunner時代の2作とは完全に別モノへとシフトしたKING 810。“全米一危険なバンド”なんて謳い文句も今は昔、これはこれでアリのような気もしてきました。グルーヴメタルやニューメタルを2020年代に再生するという意味では、彼らが本作で果たした役割は非常に大きなものがあると思うし、このアルバムも高く評価されるべき作品だと言えるでしょう。しかし、目新しさや“2020年ならでは”の要素は皆無。上のような見方を外せば、単なる懐古主義で片付けられてしまいそうで勿体ないなと。LIMP BIZKITKORN、MARILYN MASONなどの90年代後半のグルーヴメタル、DISTURBED以降のニューメタルを好むリスナーに今こそ触れていただきたい1枚。

にしても、良いアルバムタイトルですね。この際過去のキャリアを切り離して、新鮮な気持ちで接してもらいたいなかなかの良作です。

 


▼KING 810『AK CONCERTO NO.47, 11TH MOVEMENT IN G MAJOR』
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2021年2月16日 (火)

THE WHITE STRIPES『MY SISTER THANKS YOU AND I THANK YOU: THE WHITE STRIPES GREATEST HITS』(2020)

2020年12月4日にアメリカでリリースされたTHE WHITE STRIPES初のグレイテストヒッツ・アルバム。同作はイギリスおよびアイルランドで2021年2月26日に、日本を含むそれ以外の諸外国では2021年2月12日に発売。

2011年2月に解散を発表しているTHE WHITE STRIPESですが、意外にもその手のコンピ盤はこれまで未発売。解散から10年という歳月を経て、レーベルの枠(Sympathy For The Records Industry / V2 Recoreds / Warner Bros. Records / Third Man Records)を超えてジャック・ホワイト(Vo, G)のプライベートレーベルThird Man Recordsの配給元Columbia Recordsからのリリースとなります。

アルバム未収録の「Let's Shake Hands」や「Jolene」(ライブの定番となっている、ご存知ドリー・パートンのカバー)を含む全26曲入りという大ボリュームで、各アルバムから満遍なく(1st『THE WHITE STRIPES』:4曲、2nd『DE STIJL』:4曲、3rd『WHITE BLOOD CELLS』:5曲、4th『ELEPHANT』:4曲、5th『GET BEHIND ME SATAN』:4曲、6th『ICKY THUMP』:3曲)セレクトされています。大半がシングルカットされたりMVが制作されたりした、耳馴染みの強く曲ばかりなので、これからTHE WHITE STRIPESに触れようというビギナーにも打って付けの内容ですし、久しぶりにこのバンドのキャリアを振り返りたいリスナーにも手っ取り早い1枚ではないでしょうか。

Tws_time実は今回このアルバムを紹介しようと思ったのは、その内容ではなく収録時間/容量にギョッとしたからです。Wikipediaには全26曲/79:28と記されていますが、実際にCDを読み込むと「81:32」という驚異的な数字が表示されます。

 

……CDっていつから82分近くも収録できるようになったの?(汗)

 

The1975この話題、実は1年前にも友人たちの間としていまして。昨年リリースされたTHE 1975の最新アルバム『NOTES ON A CONDITIONAL FORM』、こちらもCDを購入して再生しようとしたら「80:32」との表示が。恐らく自分が所持するCDの中で最長の1枚はこれだなと実感しました。

それ以前にも80分数秒という作品にはお目にかかっていましたし、技術的には不可能でないことも(特にライターになる前は合成樹脂メーカーに勤めていたので)理解していました。ただ、それをすべての再生機器で楽しめるかといったら、また別の話。古いタイプのプレイヤーやCDJ、CD-Rドライブでは最後まで再生したり、特にCD-Rドライブでのリッピングしたりするのは難しいかもしれません(最後の数曲を読み取れないというケースが多いはず)。

要するに、それだけCDの素材となるポリカーボネートの品質が向上したこと、プレス技術やデータの記憶技術が進化したこと、再生機器の性能がアップしたからこそ実現したわけです。とはいえ、これが全世界共通化といわれると実は疑問もあり。特に今回のTHE WHITE STRIPESは日本盤がBlu-spec CD2というBlu-rayと同じ素材/技術を用いたディスクなので、使用機器さえしっかりしていれば問題なく再生/リッピングできますが、これが輸入盤となるとちょっとした“賭け”が生じるかもしれません。

自分が勤めていた20年前と比べたら素材の品質も世界的に向上しているとは思いますが、それでもたまにバラツキがあるのは否めない。以前、別の80分近くある作品の輸入盤を購入したら、ラスト3曲が再生/リッピング不可というトラブルに見舞われました。再生機器数台で試したり、CD-Rドライブも新しいものに買い替えたものの、まったく同じ結果。要はブツ側が悪いわけです。最終的には購入店で事情を説明して返品、代わりに同作品の日本盤を購入しましたが、そちらは問題なく再生/リッピングできました。

……そんなことを思い出しながら、現在日本盤からリッピングしたTHE WHITE STRIPESを再生しておりますが、問題なく楽しめております。きっとこのサイトを読んでいる方の多くはストリーミングサービスで本作を楽しんでいるかと思いますが、もしこれからフィジカル購入を予定していましたら、安い輸入盤よりも日本盤で安心をとるか、アナログ盤に逃げるか検討いただけると。もちろん、すべての輸入盤が再生不可ではないですし、数百分〜数十分の1でNG品にぶつかるといった程度だとは思います。あ、あと再生機器のご確認もお忘れなく。

今回はこれが書きたくて、このアルバムをピックアップしました(笑)。内容とはまったく関係ないですが。あ、もちろん内容は最高です!(付け足し程度かよ)

 


▼THE WHITE STRIPES『MY SISTER THANKS YOU AND I THANK YOU: THE WHITE STRIPES GREATEST HITS』
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2021年2月13日 (土)

GEORGE LYNCH & JEFF PILSON『HEAVY HITTER』(2020)

2020年12月18日にリリースされたジョージ・リンチ&ジェフ・ピルソンのカバーアルバム。日本盤(輸入盤に帯を付けた仕様)は同年12月23日に発売されています。

DOKKEN時代の盟友であり、最近はT&NやTHE END MACHNEで活動をともにするジョージとジェフ。本作ではジェフのプロデュースのもと1950〜2000年代の非HR/HM曲を中心にセレクトされています。カバーの内訳は以下のとおり(カッコ内の年数は原曲リリース年)。

01. One Of Us [ジョン・オズボーン/1995年]
02. You Got The Love [RUFUS & CHAKA KHAN/1974年]
03. I Feel The Earth Move [キャロル・キング/1971年]
04. Ordinary World [DURAN DURAN/1993年]
05. Music [マドンナ/2000年]
06. Apologize [ONEREPUBLIC/2007年]
07. Nowhere To Run [MARTHA & THE VANDELLAS/1965年]
08. Kiss [プリンス/1986年]
09. It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine) [R.E.M./1987年]
10. Champagne Supernova [OASIS/1995年]
11. Lucille [リトル・リチャード/1957年]

これらの楽曲をジョージ(G)、ジェフ(B)、ブライアン・ティッシー(Dr)というT&Nまんまのメンツで演奏し、その大半をウィル・マーティンというニュージーランド出身のシンガーが歌唱。「You Got The Love」でマーク・トリエン(BULLETBOYS)、「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」にてジェフがそれぞれボーカルを担当しています。また、「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」ではFISHBONEのアンジェロ・ムーアもオルガンでゲスト参加しております。なかなかとっ散らかったメンツですね(笑)。

選曲はまあ置いておいて、アレンジや演奏ですが……某氏は本作を酷評しておりましたが、そこまで言うほどか?と。原曲の良さはそのままに、しっかりジョージらしくハードロックしていて聴きやすく、個人的にはかなり好印象な1枚なのですが。ウィル・マーティンのクセのない歌唱が「I Feel The Earth Move」「Nowhere To Run」といったソウルフルな楽曲でまったく活きていないという難点はあるものの(「Kiss」はこれで正解だけど)、逆に「Ordinary World」や「Music」のような現代的なポップソングにはぴったり合っているのでプラマイゼロといったところでしょうか。そんな中で、マーク・トリエンがいい味出してます。全部マークが歌ったら……とも考えたけど、マークが歌う「Champagne Supernova」とかまったく想像できないので、これで正解だったのでしょうね。

とにかくアレンジと演奏がかなり高得点です。最近のジョージ関連の作品は比較的ハズレが少ないですが、そこにジェフという気心知れた仲間かつプロデューサーとしてもそれなりの実力を発揮する方が携わったことで、平均点以上の仕上がりになった。もうこれ、今後は全部ジェフにプロデュースしてもらえよと思ってしまうのは間違っているのでしょうか(笑)。

某氏は自分が以前のように歌えないやっかみですよね。早くお経ボーカルから脱してほしい……と脱線してしまいましたが、本作は原曲を知るリスナーはもちろん、知らないHR/HMリスナーでもジョージ・リンチの新作として存分に楽しめるはずです。

 


▼GEORGE LYNCH & JEFF PILSON『HEAVY HITTER』
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2021年1月 1日 (金)

2020年総括

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、それまでの日常がガラリと一変。エンタメ界にも多大なる影響を与え、ライブの在り方も“コロナ以前”と“コロナ以降”とで何もかもが変わってしまった感が強いのではないでしょうか。正直なところ、ワクチンができたところで“コロナ以前”のような生活を取り戻せるとは思っておらず、ここから先さらに新しい在り方を見つけないといけないのではないか。そう感じずにはいられません。

また、音楽の聴き方や接し方に関しても“おうち時間”が増えたこと、ライブやフェスといった体験が減ったことも影響し、だいぶ変化が生じた1年だったと思います。ぶっちゃけ、CDの購入枚数も2019年以前と比べてグンと落ちましたし。その一方で、Bandcampなどを通じてデジタルで購入する頻度はかなり高くなりましたが、やはりApple MusicやSpotifyといったサブスクリプションサービスを通じて新しい音楽と向き合う機会が格段に増えたと言わざるを得ません。

そんな中で、例年のようにこの1年のまとめをどうしようかと、実は2020年初夏から悩んでいました。事実、上半期まとめのあとからいろいろ考え始め……年末も考えがまとまらず、気づけば大晦日。で、ひとつ出した結論は「アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、20作品に縛ろう」ということ。メタル系に関してはリアルサウンドさんでのまとめ記事がありますので、そちらを参考にしていただきつつ、2020年のまとめはこの1エントリーに集約させたいと思います。

ということで、ズラッと20作品まとめて載せていきます。順位は付けず、アルファベット→50音順で掲載していきます。

 

BRING ME THE HORIZON「Kingslayer feat. BABYMETAL」(楽曲)

 

chelmico『maze』(アルバム)

 

JAMES DEAN BRADFIELD『EVEN IN EXILE』(アルバム)

 

LiSA『LEO-NiNE』(アルバム)

 

NiziU「Make you happy」(楽曲)

 

NOTHING『THE GREAT DISMAL』(アルバム)

 

POPPY「All The Things She Said」(楽曲)

 

TAYLOR SWIFT『FOLKLORE』(アルバム)

 

ULTRAÍSTA『SISTER』(アルバム)

 

阿部真央『まだいけます』(アルバム)

 

伊藤美来『Rhythmic Flavor』(アルバム)

 

イヤホンズ『Theory of evolution』(アルバム)

 

えりぴよ (ファイルーズあい)「♡桃色片想い♡」(楽曲)

 

楠木ともり『ハミダシモノ』(EP)

 

スタァライト九九組「再生讃美曲」(楽曲)

 

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会「NEO SKY, NEO MAP!」(楽曲)

 

乃木坂46「I see...」(楽曲)

 

宮本浩次『ROMANCE』(アルバム)

 

森七菜「スマイル」(楽曲)

 

ラブリーサマーちゃん『THE THIRD SUMMER OF LOVE』(アルバム)

 

メタル系は先のキュレーション連載での年間ベスト記事で選出しているので、アルバムは1枚も選ばず。むしろ楽曲単位でBMTH×BABYMETALを選出しました。ある意味、この曲が2020年の自分を象徴する1曲なのかもしれません。あ、あとNOTHINGはあえてメタルの枠から外して、こちらで選んでみました。そのほうが自分的にしっくりきたので。

あと、宮本浩次さんはオリジナルアルバム『宮本、独歩。』を最初は選んでいたものの、単純に歌の力だけで圧倒させられたという意味で(そして、このタイミングに初インタビューが実現したという意味でも)カバーアルバムのほうを選びました。

なお、この中で再生回数が多かった上位3曲は、楠木ともり「ハミダシモノ」、えりぴよ (ファイルーズあい)「♡桃色片想い♡」、NiziU「Make you happy」。アルバム単位で再生回数が多かった上位3作品はイヤホンズ『Theory of evolution』とJAMES DEAN BRADFIELD『EVEN IN EXILE』、ここには入れませんでしたがRAISE A SUILEN『ERA』でした。

以上、かなりさらっとしたまとめになりましたが……全体的な年間まとめとなると、これくらいのモチベーションしか保てないんですよ(苦笑)。偏ったジャンルでまとめればまた違うんでしょうけど……そういう意味では、こういったまとめモノも2020年が最後かな。なんて消極的なことを年始から書くのもアレですが。

とにかく2021年が2020年よりも精神的に余裕を持って過ごせますように。本当にそれだけです。

 

2020年12月31日 (木)

PALLBEARER『FORGOTTEN DAYS』(2020)

2020年10月23日にリリースされたPALLBEARERの4thアルバム。

PALLBEARERは2008年に結成されたアメリカ・アーカンソー州リトルロック出身の4人組ドゥームメタルバンド。2010年のデモをきっかけに、先鋭的なバンドを多く輩出しているカナダのProfound Lore Recordsと契約し、『SORROW AND EXTINCTION』(2012年)を筆頭に3枚のアルバムを制作しています。中でも3rdアルバムにあたる前作『HEARTLESS』(2017年)は初の全米TOP200入り(最高187位)を果たし、知名度を上げる結果を導き出しました。

新たにNuclear Blast Recordsと契約して発表した3年ぶりの新作『FORGOTTEN DAYS』は、SUNN O)))やEARTHとの仕事で知られるランドール・ダンがプロデュースを担当。そのアルバムタイトルや、なんとも不気味さを醸し出すアートワークに関連するように、“家族(有形無形の喪失)”をテーマにした内容で、ヘヴィで引き摺るようなミドルナンバー中心で構成されています。

まさに音圧の洪水と言わんばかりのサウンドプロダクションは、重苦しくも物悲しさが強く伝わるメロディと見事にフィットしており、BLACK SABBATH期のオジー・オズボーンを思わせるブレット・キャンベル(Vo, G)の歌声と相まってより悲壮感を強く演出することに成功。また、「Stasis」や「Silver Wings」などで聴けるようなアナログシンセの効果音も、本作の世界観に見事にマッチしており、不気味さがなお一層映える結果を導いています。

大半の楽曲が6分以上(3〜4分台は2曲のみ)で、アルバム中央には本作のクライマックスと言える12分超の大作「Silver Wings」が配置されています。この曲のドラマチックさもまた最高の一言で、ひたすらダーク&ヘヴィに喪失感を表現しています。ギタリストが2名所属していますが、この手のバンドにありがちな2本でのユニゾンで“音の壁”を作ることだけに執着するのではなく、いろいろ工夫したアンサンブルを楽しめるのもこのバンドの魅力であり、本作の聴きどころではないでしょうか。特に6、7分を超える長尺曲ではそういったアレンジ能力に秀でた部分が強く表出し、PALLBEARERならではの個性が最大限に発揮されています。

前作『HEARTLESS』ではもう少し多彩さの感じられる音楽性にシフトし始めていましたが、そういった実験を経た今作では(そういった経験も無駄にすることなく)原点の重要性を強くアピールした作風へと回帰。先のギターアンサンブルも多彩さもこういった実験あってこそかもしれませんね。

先鋭的な要素は少ないかもしれませんが、この(アンダーグラウンドの世界における)王道感はほかの何者にも変えがたい。まさに、PALLBEARERが4作目にして到達したひとつの“答え”と言えるのではないでしょうか。年末年始にまったり楽しむのに最適な1枚です。

 


▼PALLBEARER『FORGOTTEN DAYS』
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2020年12月30日 (水)

GHØSTKID『GHØSTKID』(2020)

2020年11月13日にリリースされたGHØSTKIDの1stアルバム。日本盤未発売。

GHØSTKIDはESKIMO CALLBOYのメンバーだったセバスチャン“Sushi”ビースラー(Vo)が最新作『REHAB』(2019年)を最後に脱退(2020年2月)したのをきっかけに結成された4人組メタルコアバンド。メンバーには同郷ドイツのメタルバンドTO THE RATS AND WOLVESのメンバーやスウェーデン人ドラマーなどを含み、ESKIMO CALLBOY時代の延長線上にあるエレクトロニコアをベースに、いわゆるオチャラケたイメージを排除したインダストリアルメタル調のストロングスタイルを楽しむことができる、まさに“今”の音に仕上げられています。

パーティロック路線皆無のシリアルな路線は、ダークでゴシック調の作風はBRING ME THE HORIZON『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)以降の流れを組むものとあって、個人的には大歓迎。Sushiのボーカルはスクリームを多用しつつもしっかり歌メロを聴かせるスタンスで、そこも含めてとっつきやすさが強いのではないでしょうか。

また、ドイツ人ラッパーのティミ・ヘンドリクスをフィーチャーした「This is Nøt Høllywøød」、メタルコアバンドHEAVEN SHALL BURNからマルクス・ビスコフ(Vo)をゲストに迎えた「Supernøva」、大御所メタルバンドKREATORからミレ・ペトロッツァがボーカルで参加した「Crøwn」など同郷からの豪華ゲストも多数参加しており、Sushiの新たな門出を祝福しています。特に「This is Nøt Høllywøød」に関してはHOLLYWOOD UNDEADのジョニー3ティアーズ(MC)をフィーチャーした別バージョンも用意。こちらは“Hollywoodつながり”で選ばれたのでしょうか。意外なようだけど共通項も少なくない2組だけに、このバージョンもなかなかだと思います。

1曲1曲の完成度やアルバムとしてのまとまりも非常に高く、デビュー作にしては上出来すぎだと思います。ただ、その出来過ぎ感が鼻につく部分もあり、伸び代という部分があまり見つけられない気がします。言い方を変えれば、全体の雰囲気が「○○っぽい」とか「○○の流れを汲む」と表現できるものの、GHØSTKIDらしい絶対的な個性が見つけられない。半年後、1年後に強く記憶に残るアルバムかと言われると、ちょっと反応に困ってしまう1枚でもあるのかな。その点を次のアルバムで打破して初めて、GHØSTKIDが真の意味でのデビューを飾ることになるんじゃないか。そんな気がしています。

厳しいことを書きましたが、それもこれも非常に高クオリティなアルバムだからこそ。ひとまずしばらく聴き倒してみますが、本作の真の評価は2ndアルバムが出てからなんじゃないでしょうか。なんにせよ、今後の動向に注目しつつ、気が早すぎますが次作を期待して待ちたいと思います。

 


▼GHØSTKID『GHØSTKID』
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