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カテゴリー「2020年の作品」の204件の記事

2022年5月10日 (火)

GAUPA『FEBERDRÖM』(2020)

2020年4月3日にリリースされたGAUPAの1stフルアルバム。日本盤未発売。

GAUPAは2017年に結成された、スウェーデン・ファールン出身の男女5人組バンド。スウェーデン語で「山猫(=lynx)」を意味するバンド名の彼らは、ドゥーミーでサイケデリックなプログロックサウンドと紅一点のエマ・ネスランド(Vo)の妖艶かつ呪術的なボーカルスタイルを武器に活動を展開。2018年にセルフタイトルの1st EP『GAUPA』を発表したのを機に、北欧のメタルフェスで知名度を上げていきます。

この1stフルアルバムは先のEPの延長線上にある作風で、ズルズルと引きずるようなストーナーロックサウンドを軸に、随所にサイケでフォーキーなテイストを散りばめることで怪しげな世界観を構築。かつ、ビョークを彷彿とさせるエマのメタル離れしたボーカルスタイルと相まって、時代錯誤のサイケデリック・ワールドが目の前で繰り広げられていくことになります。

強弱のメリハリがしっかりしたアレンジが非常に効果的に響き、囁くようであり念仏を唱えるようにも聞こえる歌唱スタイルとの相性も抜群。タイトルの多くはスウェーデン語ですが、歌詞自体は英語で表現されているので耳馴染みも良い。BLACK SABBATHよりも情念の強さを感じさせる音作りと、ヒステリックになることなく浮遊感の強さを提示し続ける女性ボーカルが織りなす独特の空気感は、一度体験してしまうとクセになることでしょう。

大半の楽曲が3〜5分台と、聴きやすい尺なのもありがたい。ストーナー/ドゥームロックやプログロックと聞くと、どうしてもスローで長尺な楽曲を思い浮かべてしまいますが、そういった点でも本作に収録された楽曲群は非常に敷居が低く、メタルやヘヴィ系があまり得意ではないリスナーにもとっつきやすい印象。「Mjölksyra」の冒頭などはかなりノイジーですが、歌が入るとまた空気が一変するから不思議です。

奏でる音に関してはは2020年代からかなりかけ離れた方向性ですが、ボーカルの存在感によってまた違った印象を与えてくれるGAUPAというバンド。スリリングなバンドアンサンブルと浮遊感の強いボーカルという水と油のような組み合わせが生み出す独創性を、ぜひお楽しみください。

なお、彼らは新たにNuclear Blast Recordsと契約し、今年11月18日には2ndアルバム『MYRIAD』のリリースも決定しています。先行配信が始まったリード曲「RA」もMVともども最高の仕上がりなので、こちらの到着も今から楽しみです(日本リリース元が若干心配ですが……)

 


▼GAUPA『FEBERDRÖM』
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2022年5月 6日 (金)

GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』(2019)

2019年8月19日にリリースされたジンジャー・ワイルドハートの8thアルバム。日本盤未発売。

最初に上記の日程でRound Recordsを通して10曲入りアルバムとしてデジタルリリースされ、翌2020年初頭にCDおよびアナログ盤が限定販売。同年5月21日には「Good Times Are In The Mail」「lil ol Wine Drinker Me」の2曲を追加した全12曲入りアルバムとして、サブスクなどで一般流通しています。

2019年というと、ジンジャー(Vo, G)、CJ(G, Vo)、ダニー(B, Vo)、リッチ(Dr)の“クラシックラインナップ”THE WiLDHEARTSが10年ぶりのアルバム『RENAISSANCE MEN』(2019年)で本格復帰したタイミング。それもあってなのか、ソロ作として直近の2枚……『GHOST IN THE TANGLEWOOD』(2017年)、『THE PESSIMIST'S COMPANION』(2018年)がアメリカーナ風レイドバックした落ち着いた作風だったのに対し、ここでは再び本来の彼らしいエネルギッシュでハード&ヘヴィ、だけどメロウでキャッチーな作品集にまとめられています。

ヘヴィな音像でエフェクティヴ、ミドルテンポ中心の作風は、シンプルなバンドサウンドで疾走感の強いパンク/パワーポップな『RENAISSANCE MEN』からの反動なのでしょうか。ソングライターとしての充実度はもちろん『GHOST IN THE TANGLEWOOD』や『THE PESSIMIST'S COMPANION』からの流れを汲みつつ、多重録音を用いたハーモニーなどの効果もあって、同じような質感のメロディ(「Pound Coins & Kitchen Roll」あたりは前作に入っていても不思議じゃない)でもまったく違って聴こえるから不思議です。

ここで展開されているヘヴィだけどキャッチー、ときどきサイケデリックなテイストも、ジンジャーが元来から持ち合わせている要素のひとつで、バンド時代でいったら名作『P.H.U.Q.』(1995年)、あるいは迷作『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)あたりと通ずるものがあるのかな。特に厚みのあるコーラスワークや「Love Is」から「Saturday Matinee」で試みた曲間なしの組曲風アレンジからは、『P.H.U.Q.』での経験が大いに反映されているように感じます。

もっと言えば、初期のソロ作(2000年代初頭から同年代後半にかけて)でイメージしていた青写真(やりたかったこと)が今は完璧に形にできるようになった。長年の試行錯誤を経て到達した、ソロ・ロックアーティスト=ジンジャー・ワイルドハートのひとつの“ゴール”がこれなのかな。

残念ながら、本作を最後にジンジャーの完全オリジナル新作アルバムは世に出ておりません。しばらくバンド活動が充実していたこと、あるいはコロナ禍に突入したことなどが理由かもしれませんが、アーシーな路線を経て再び“ジンジャーらしさ”に徹した本作の次に、彼がどんな“道”を選ぶのかが非常に気になります。

 


▼GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』
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2022年4月25日 (月)

RINA SAWAYAMA『SAWAYAMA』(2020)

2020年4月17日にリリースされたリナ・サワヤマの1stフルアルバム。日本盤未発売(デジタルのみ、ボーナストラック含む仕様で配信)。

リナ・サワヤマは新潟県出身のアーティスト。4歳でロンドンに渡ったのを機に現地での生活を続け、大学在籍中に音楽活動を開始。2017年にTHE 1975やPALE WAVESなどが所属するDirty HitからEP『RINA』でデビューを果たし、近年はエルトン・ジョンやチャーリー・XCXなどのとコラボレーションで知名度を高め、2023年公開予定の映画『ジョン・ウィック:チャプター4』にメインキャストとして出演することも決定しています。

先日の『Coachella Valley Music and Arts Festival』でそのパフォーマンスを目にし圧倒されたという音楽ファンも少なくなかったはずです。事実、僕自身もそのひとりで、音源自体も素晴らしかったもののライブではその魅力がさらに濃く発揮されることに気付かされました。あれはもう、ヘヴィミュージックを愛聴するリスナーにこそ届いてほしいステージですよ。

さて。メタルファンの中には昨年秋発売のMETALLICA『ブラックアルバム』(1991年)トリビュートアルバム『THE METALLICA BLACKLIST』(2021年)での「Enter Sandman」カバーでその名を知ったという方も少なくないはず。そんな彼女のフルアルバムは、同カバーでも堪能できた“エッジーなギター”を大胆にフィーチャーした楽曲も少なくなく、さらにオルタナロックを通過したモダンなダンスポップ、R&Bに通ずるムーディなミディアム/スローナンバーなどバラエティに富んだ楽曲群を楽しうことができます。

アルバム冒頭を飾る「Dynasty」や「Stfu!」、「Who's Gonna Save U Now?」あたりは、先の「Enter Sandman」カバーにも通ずるテイストが保たれており、そこに「Paradisin'」のようなポップ色の強い楽曲(この曲あたりはPOPPYのファンにも響くものがあるのでは)、往年のR&Bダンスチューンを思わせる「Love Me 4 Me」やイマドキの味付けが施されたミディアムナンバー「Bad Friend」などが加わることで、幅広い層にアピールする作品にまとめ上げられています。昨今のK-POPに偏見なく接することができる層やアメリカのヒットチャートに敏感なリスナーはもちろんのこと、ダンスミュージックを通過したヘヴィロックを好むリスナーなど、ファンベースを限定することなくいろいろな人たちに届いてほしい1枚です。

また、本作は2020年秋にアルバム未収録曲やエルトン・ジョンとのコラボ曲「Chosen Family」、THE 1975のカバー「Love It If We Made It」など11曲を収録したボーナスディスク付きデラックス・エディションも発売。アルバム本編収録曲のリミックスやアコースティックバージョンなども含まれており、アルバム『SAWAYAMA』のの魅力をさらに多方面へと引き出した副読本的作品と言えるのではないでしょうか。アルバム本編とあわせて全25曲/約87分とボリューミーな内容にはなってしまいますが、まずは本編をじっくり味わってから、ボーナスディスクでより深く彼女の魅力に浸ってみることをオススメします。

 


▼RINA SAWAYAMA『SAWAYAMA』
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2022年4月22日 (金)

bdrmm『BEDROOM』(2020)

2020年7月3日にリリースされたbdrmmの1stアルバム。日本盤は同年7月8日発売。

bdrmm(“bedroom”と読む)は2016年にライアン・スミス(Vo, G)が宅録で制作したデモ音源がラジオで紹介されたことを機に、実弟のジョーダン・スミス(B)らとともに結成された英・ハル出身の5人組バンド。メンバーはスミス兄弟のほか、ジョー・ヴィッカーズ(G)、ダニー・ハル(Synth, Cho)、ルーク・アーヴィン(Dr)で、いくつかのシングルを経て2019年に現在のSonic Cathedral Recordingsと契約して以降、いくつかのEPを経てこのフルアルバムに到達。この春にはRIDEのUKツアーにサポートアクトとして帯同することも決定しています。

アルバムのレコーディングおよびミックスは、バンドと長く活動を共にしてきたFOREVER CULTのアレックス・グリーヴスが担当。シューゲイザーやドリームポップの範疇に含まれるその毒則的なサウンドは、同ジャンルのオリジネーターほどの強い個性は感じられないものの、デビュー作としては十分すぎるほどの完成度を誇る1枚に仕上がっています。

オープニングを飾る「Momo」はほぼインストゥルメンタルと呼んでも差し支えない構成で、いかにもアルバムの1曲目にふさわしい仕上がり。荒々しさや破綻といった要素こそ皆無ながらも、適度な美しさを放ちながら聴き手も自分たちならではの音世界へと導こうとします。だからこそ、続く「Push / Pull」「A Reason To Celebrate」といった楽曲がより個性的に、より力強く響くのではないでしょうか。

SCHOOL OF SEVEN BELLSやM83といったドリーミーなサウンドを武器としたバンドを多数輩出したSonic Cathedral Recordingsらしく、bdrmmの楽曲の多くもその傾向が強く、轟音ギターでかき乱すよりも空間系エフェクトを多用したアルペジオやフレージングでひんやりとした独創的世界を構築していく。「Push / Pull」や「If That What You Wanted To Hear?」などはまさにそういったスタイルの代表例と言えるでしょう。だからこそ、轟音ギターを多用した「If...」のようなスタイルの楽曲が逆に映える結果につながる。

また、「A Reason To Celebrate」にはMY BLOODY VALENTINEがアルバム『LOVELESS』(1991年)で試みたスタイルとの共通点も見受けられ、思わずニヤリとさせられるし、アルバムのおへそ部分に当たる「Happy」「(The Silence)」「(Un)Happy」の流れは起伏こそ大きくないものの、どこかドラマチックさが伝わってくる構成で往年のシューゲイザー作品とリンクしていることにも気づく。全体を通して、過去のオリジネーターたちへのリスペクトも伝わる良心的な内容と言えるかもしれません。

だからこそ、このバンドらしいオリジナリティをいち早く確立させて、ジャンルの壁を超えた存在に成長してほしい。そう願わずにはいられない、今後の飛躍が大いに期待できるデビュー作品です。

なお、日本盤にはボーナストラックとしてアンディ・ベル(RIDE)がGLOK名義でリミックスした「A Reason To Celebrate (GLOK Remix)」を追加収録。こちらも“いかにも”な仕上がりなので、ツアー帯同の件も含めぜひRIDEおよびアンディのファンに届いてほしい1曲(そして1枚)です。

 


▼bdrmm『BEDROOM』
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2022年4月21日 (木)

FONTAINES D.C.『A HERO'S DEATH』(2020)

2020年7月31日にリリースされたFONTAINES D.C.の2ndアルバム。

前年4月に発売されたデビューアルバム『DOGREL』(2019年)が本国アイルランドで最高4位を記録したほか、全英9位、米・Billboard Heatseekers Albums最高14位という好記録を樹立。ツアーも軒並みソールドアウトを記録し、その勢いのまま2020年夏には『Glastonbury Festival』へ出演する予定でしたが、コロナ禍の影響で白紙に。しかし、バンドはそんなことお構いなしにデビュー作の勢いのまま、2019年夏から2ndアルバム制作に突入するのでした。

成功を収めた前作から引き続き、プロデュース&ミックスにダン・キャリー(BLACK MIDIWET LEG、ケイ・テンペストなど)を迎えて制作された今作。若さゆえの焦燥感が伝わる性急なビートが印象に残ったデビュー作と比較すると、この2作目のアルバムではより重心が低くなった印象を受けます。それはアルバム冒頭を飾る「I Don't Belong」を聴けばおわかりいただけるはずです。続く「Love Is The Main Thing」はドラムこそアップビートを刻んでいますが、そこに乗るベースやギター、ボーカルの浮遊感の強さと相待って、不思議なディレイ感覚を味わうことができます。

そう、このアルバムでは貫禄のみならず、上記2曲からもしっかり伝わるサイケデリック感もより増しており、そのバランス加減にこのバンドならではのオリジナリティが芽生え始めているのです。ボーカルは歌うというより、まるで念仏を唱えているかのよう……ではなく、ある種ポエトリーリーディングの延長線上にあるような歌唱スタイルで、このへんは好き嫌い分かれるかもしれません。が、前作で述べたような1970年代末以降のポストパンクや80年代後半の抒情的UKロックを愛聴してきたリスナーには、すんなりと受け入れられるものがあると思います。

楽曲の幅も徐々に広がり始めており、前作にありそうでなかった「Televised Mind」や「A Hero's Death」あたりは今後のキラーチューンになりそうな予感すら伝わりますし、「A Lucid Dream」や「You Said」のように前作の延長線上にある楽曲もしっかり用意されているほか、「Oh Such A Spring」みたいにじっくり聴かせるスローナンバーも備わっている。「Living In America」のサイケデリック感なんて聴けば聴くほどに味わい深いですし、「I Was Not Born」のストレートなノリも王道感が強まっており好印象。「Sunny」で聴けるボーカルアンサンブルもクセになるし、ラストナンバー「No」の抒情的にしようと思えばできるのに、あえてそうさせないメロディラインなど、とにかくいろんな点で個性が突出し始めており、前作で満足したリスナーをさらにおなかいっぱいにさせてくれる1枚ではないでしょうか。

あと、今作の興味深い点といえば、どの曲も前作以上に長くなっていること。平均4分以上ある楽曲が増えたことで、前作と同じ曲数(11曲)なのにトータルランニングが約7分も増えている(前作は約40分で、今作は約47分)。アレンジにいろいろこだわるようになった結果が、こういったところに表れたということでしょうか。ある意味では前作以上に聴く人を選ぶ作品かもしれませんが、新人バンドが短期間で成長する様を楽しめるという点ではUKロック必聴の1枚です。

 


▼FONTAINES D.C.『A HERO'S DEATH』
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2022年1月26日 (水)

GHOSTEMANE『ANTI-ICON』(2020)

2020年10月21日に配信リリースされたGHOSTEMANE(ゴーストメイン)の8thアルバム。フィジカルでは同年12月18日にアナログ盤のみ発表、日本盤未発売。

昨日紹介したUNDERØATHの最新作『VOYEURIST』(2022年)にて、「Cycle」という楽曲にフィーチャリングされていたGHOSTEMANE。同名義やエリック・ゴーストなどの通り名を使用する彼は、2010年頃から音楽活動を開始し、2014年にはミックステープを発表しているようです。フルアルバムのほかに多数のEPやコンピレーションアルバム、ILL BIZやGASM、SWEARRとしても作品を発表しています。

そのサウンドはヒップホップやトラップミュージックのみならず、ハードコアやブラックメタル、ドゥームメタル、インダストリアルメタルなど“こちら側”との親和性が高いもので、今回紹介する『ANTI-ICON』というアルバムもトラップを通過したポストハードコア/インダストリアルメタルという印象の、リズムに特化したエクストリームミュージックが展開されています。

全体を通して感じられるのは、90年代半ばから後半にかけてのNINE INCH NAILSマリリン・マンソンなどのインダストリアル寄りのオルタナティヴメタルではないでしょうか。そこにラップボーカルが乗ることで現代的なスタイルと受け取ることができますが、聴く人が聴けば「懐かしい!」と感じる作品かもしれません。

例えば、「Hydrochloride」で聴くことができるアンサンブル/アレンジは『BROKEN』(1992年)『THE DOWNWARD SPIRAL』(1994年)の頃のNINを彷彿とさせるし、「Anti-Social Mascochistic Rage [ASMR]」でのドープな作風は『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)『MECHANICAL ANIMALS』(1998年)期のマンソンと重なるものがある。そこに「AI」などを筆頭とした重低音を強調させたモダンなサウンドメイクが加わることで、単なる過去の焼き直しでは済まされない刺激を体験することができるわけです。

また、「Melanchoholic」などで見せるムーディーかつダークなボーカルも彼の持ち味のひとつで、それこそトレント・レズナーがもっとも繊細だった時期のボーカルとリンクするものがある。また、「The Winds Of Change」や「Falling Down」のようにアコギをフィーチャーした楽曲も含まれており、こういったゴシック調ナンバーで見せる艶やかさは本当に往年のNINと重なるものがあります。これはたまらんですわ。

アートワーク(特にジャケットで掲げた鉄仮面を実際に被った裏面)のカッコよさ含め、ぜひメタル系リスナーにまで届いてほしい1枚。ヒップホップに対していまだに偏見を持っている方なら、なおさら本作に触れていただきたいものです。

なお、現時点での最新作EP『FEAR NETWORK II』(2021年)もメタル/ラウド系リスナーに響く内容ですので、あわせてチェックしてもらえるとうれしいです。

 


▼GHOSTEMANE『ANTI-ICON』
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2021年12月11日 (土)

THE MONKEES『THE MONKEES LIVE: THE MIKE & MICKY SHOW』(2020)

THE MONKEESのマイク・ネスミスが現地時間12月10日、78歳で亡くなりました。自分もYahoo!ニューズの公式コメンテーターとして、このニュースについてコメントを書かせていただいています(詳細はこちらの記事後半に掲載されているコメントより)。

THE MONKEESは自分が小学生低学年の頃、初めて能動的に触れた洋楽アーティストでした。もちろんきっかけは、当時再放送されていた『ザ・モンキーズ・ショー』を観て。TBSでの再放送だったか東京12チャンネル(現・テレビ東京)での再放送だったかの記憶は曖昧ですが、日本語吹き替えで小学生にも親しみやすかったシットコム形式の内容や、はっきりとキャラの違いが描かれていた4人の個性、そして胸躍るオープニングテーマや毎回後半に1曲紹介されるTHE MONKEESのヒット曲。これらが当時アニソンや戦隊モノ、歌謡曲しか知らなかった自分にはキラキラして見えて(聞こえて)、気づいたら日本独自企画のベストアルバムを小遣いを貯めて購入し、デイヴィ・ジョーンズにファンレター(当時通っていた学習塾の先生に、日本語で書いた手紙を英訳してもらい、それを見様見真似で清書した)を送ったりしたものでした。

僕にとって、能動的に聴き始めたという点において今の自分の音楽的原点となっているのが、その時期に触れたTHE MONKEESとYellow Magic Orchestra。どちらもかけがえのない、特別な存在なのです(YMOについては、また別の機会に)。

というわけで、マイク存命時最後のリリースとなったライブアルバムを紹介させてください。

本作は2020年4月3日にリリースされたアルバムで、ピーター・トーク死去(2019年2月)後最初の作品でした(日本盤未発売)。発売タイミングがちょうどコロナ禍に突入した最初の時期で、ロックダウンなどと重なったこともあり、僕自身リリースを知ったのはずいぶん後になってからでした。

本音源はピーター逝去後に行われたアメリカ公演(2019年3月および6月)で収録されたもの。タイトルどおり、マイク・ネスミスとミッキー・ドレンツの2人に大勢のサポートメンバーが加わることで、非常に豪華かつ聴きやすい形のアレンジで表現された名曲の数々は、オリジナル音源以上に新鮮に響きます。

ミッキーが歌う「Last Train To Clarksville」からスタートするというのも良いですし、かつミッキーの歌声が若い頃とさほど大きくイメージが違っていないことにも驚かされる。以降、ミッキーとマイクのリード歌唱曲が交互に披露されたり、ときに一緒に歌ったりと、極上のパワーポップチューン/カントリーポップナンバーが次々に繰り出されていきます。知っている曲も2人のボーカルで表現されることで新鮮に響き、若干新曲に触れているような錯覚にも陥ります。いやあ、いい曲多いな、本当に。

どの曲も2〜3分程度のコンパクトさということもあり、全25曲で78分というトータルランニングもそれほど疲れることなく楽しめるもの。いわゆるグレイテストヒッツ的な内容/作品とは異なるものの、THE MONKEESというバンドが最後の最後まで現役として生きた記録として、非常に大きな意味のある1枚ではないでしょうか。

なお、THE MONKEESは今年11月14日にフェアウェルツアーを終えたばかり。そこから1ヶ月経たずしてマイクはこの世を去ったわけですが、もしかしたらそのツアーの模様もいずれ何らかの形で発表されるかもしれません。が、今はこの最新ライブアルバムを聴いて、THE MONKEESの功績を讃えたいと思います。

 


▼THE MONKEES『THE MONKEES LIVE: THE MIKE & MICKY SHOW』
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2021年12月 3日 (金)

EMMA RUTH RUNDLE & THOU『MAY OUR CHAMBERS BE FULL』(2020)/『THE HELM OF SORROW』(2021)

2020年10月30日に配信リリースされたエマ・ルース・ランドルTHOUのコラボレーションアルバム。海外では同年12月4日にフィジカル(CD、アナログ)発売となり、日本でも12月9日から輸入盤国内仕様が流通しております。

エマ・ルース・ランドルはポストロックやフォークミュージックの要素を織り交ぜたスタイルのアメリカ人女性シンガーソングライター。一方、THOUは2005年に結成されたスラッジ/ドゥームメタルバンドと、一見ベクトルの異なる2組が2019年4月にオランダで行われたRoadburn Festivalにて初共演。これを機に、同年8月には2組によるセッション/レコーディングが実現し、2020年のロックダウンを経て1年越しに音源として届けられることになったわけです。

基本的にはTHOUによるスラッジメタルサウンド(ボーカル入り)にエマがメロディアスでソフトなボーカルを載せるという形で、形的にはMETALLICAルー・リードとコラボした珍作『LULU』(2011年)に似たものを感じます。ただ、あっちはルー・リード主導で作られた楽曲をMETALLICAが演奏していた形でしたが、こちらは全体的にTHOU主体のようにも聴こえるし、でもメロディを聴くとエマ主導のようにも受け取れる。そういった意味では、真のコラボレーションが実現しているということでしょう。

全7曲でトータル36分、3〜5分台の曲が大半ですが、オープニングを飾る「Killing Floor」は約7分、ラストの「The Valley」は約9分といかにもスラッジ/ドゥームメタルバンドらしい尺。どの曲も重く遅くという王道のスタイルですが、逆にこのスローテンポがエマの歌/メロディを映させることにも成功しており、実は非常に計算して作られているのではないかという気がしてきます。

しかも、ただエマがメロウに歌っているだけではなくTHOUのフロントマン、ブライアン・ファンクもしっかりスクリームしまくっています。2人が交互に歌いスクリームすることもあれば、メロウなボーカルと金属的なスクリームが重なり合うこともあるのですが、そこでも決して両者の個性を打ち消すことはない。要は、それだけ2人の個が確立され、際立ったものだということがこの異色のハーモニーからも伝わるわけです。

アルバムラストを飾る「The Valley」なんてスラッジやドゥームの域を超えて、どこかオルタナフォークやトラッドミュージックのようにも響く仕上がりで、曲中にフィーチャーされたフィドルの音色も良い味を出しています。

 


▼EMMA RUTH RUNDLE & THOU『MAY OUR CHAMBERS BE FULL』
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本作から数ヶ月遅れて、同セッションで生まれながらもアルバムから漏れた4曲をまとめたEP『THE HELM OF SORROW』も2021年1月15日にリリースされています。こちらは日本未発売。

こちらは『MAY OUR CHAMBERS BE FULL』と比べると、若干エマのカラーが強い印象を受けるかな。冒頭を飾る「Orphan Limbs」の序盤でみせるポストロック感はまさにそういう雰囲気ですが、曲が進むにつれて不穏さがより強まり、終盤にエクストリームさが一気に増す構成は「ポストロック経由のエクストリームメタル」そのもの。続く「Crone Dance」や「Recurrence」は『MAY OUR CHAMBERS BE FULL』の延長線上にあるカラーで、ラストの「Hollywood」はTHE CRANBERRIESのカバー。原曲の片鱗を残しつつもしっかりTHOUらしい味付けが施されており、かつエマのシンガーとしての個性もしっかり見つけられる良カバーではないでしょうか。

アルバムとしてのトータル性や完成度という点において、このEP収録曲を本編から分けたの納得いくところ。逆に、このEPは『MAY OUR CHAMBERS BE FULL』を心の底から楽しめたリスナーに向けた、2組からの“デザート”的なプレゼントなのかなと。アルバム単体としても成立するプロジェクトだけど、このEPを補足的に聴くことでよりディープに楽しめる。そんな連作のような気がします。

なにはともあれ、ラウド&エクストリームなサウンドが好きで、かつポストロック/オルタナティヴな女性SSWも好きというリスナーは絶対に聴いておくべき2作品です。

 


▼EMMA RUTH RUNDLE & THOU『THE HELM OF SORROW』
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2021年11月25日 (木)

KYLIE MINOGUE『DISCO』(2020)/『DISCO: GUEST LIST EDITION』(2021)

2020年11月6日にリリースされたカイリー・ミノーグの15thアルバム。日本盤は同年12月4日発売。

突然のカントリー路線でリスナーを驚かせた前作『GOLDEN』(2018年)から2年半ぶりの新作は、彼女らしいディスコ/ダンス路線へと回帰した会心の1枚。全体の空気感は彼女がデビューした1980年代後半より前の、70年代後半から80年代初頭を彷彿とさせるものがあります。

これまでの彼女の楽曲にもこういったテイストは存在していましたが、ここまで全編を通して往年のディスコサウンドに特化したアルバムは初めてではないでしょうか(なにせタイトルからして土直球ですからね)。かつ、モダンなエレクトロの味付けも皆無で、質感的には現代的ながらも、使う音色やアレンジの妙により往年の空気感を作り上げることに成功している。随所にフィーチャーされるストリングスやブラスの音色がまさにそれで、「懐かしくも新鮮」というレトロフューチャー感を見事に表現できたのではないかと思います。

カイリーの歌声からも力むことなく、非常にリラックスした空気が伝わる。この良い意味での脱力感こそがディスコナンバーには必要であることを、彼女自身よく理解しているんでしょうね。なもんで、聴き手側も終始気持ちよく楽しむことができる。2020年というお先真っ暗な時代をミラーボールで照らしてくれるような、そんなポジティブさに満ちた良作です。

実際、曲ごとにプロデューサーが異なったり複数のソングライターがコライトしていたりする作風は、彼女の従来の作品と一緒ですが、とにかくここまで気合を入れて作り込んだにもかかわらず、音からは伸び伸びした感が伝わるという。これ、フロアで聴いたら最高に楽しいんだろうなあ……もちろん、自宅のスピーカーやスマホのショボいスピーカー、あるいはヘッドフォンやイヤフォンで聴いてもその魅力は十分に伝わるし、再生環境や聴くシチュエーションによっても響き方が少しずつ変わる、そんな良質のポップアルバムです。前作は前作で良かったけど、やっぱりカイリーはこうじゃなくちゃ。

 


▼KYLIE MINOGUE『DISCO』
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そんなカイリーの新作『DISCO』に、新録トラックやリミックスなど10曲追加した全26曲入りの2枚組リパッケージ・アルバム『DISCO: GUEST LIST EDITION』が2021年11月12日にリリースされました(日本盤未発売)。

新たなアートワークが使用された本作には、YEARS & YEARSをフィーチャーした「A Second To Midnight」や、UK出身のR&Bシンガーのジェシー・ウェアとのコラボ曲「Kiss Of Life」、「I Will Survive」などのヒットで知られる世界的なディスコレジェンドのグロリア・ゲイナーを迎えた「Can't Stop Writing Songs About You」、そしてデュア・リパとタッグを組んだ「Real Groove」リミックスなど、アルバム本編以上に聴き応えのある最録曲を用意。それぞれ、より濃厚なディスコサウンドを堪能することができます。

さらに、BASEMENT JAXXやPURPLE DISCO MACHINE、SYN COLEなどの手による「Say Something」「Magic」のリミックスも用意。モダンな味付けでバージョンアップしたトラックの数々は、これこそフロアで爆音にて楽しみたいものばかり。久しくクラブやDJイベントに足を運んでいませんが、早く安心して夜遊びを満喫できる世の中が戻ってきてほしいところですね……。

1年前にリリースされてからしばらく再生していなかった『DISCO』を、こういう形で再び脚光を当ててくれたのは、リスナー視点でも非常にありがたい限り。このリパッケージ・アルバムは改めて『DISCO』の魅力に気づかせてくれるという点においても、非常に大きな意味のあるアイテムだと思います。

 


▼KYLIE MINOGUE『DISCO: GUEST LIST EDITION』
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2021年11月23日 (火)

THE SZUTERS『SUGAR』(2020)

2020年6月4日に配信リリースされたTHE SZUTERSの5thアルバム。日本のみフィジカル(CD)にて2021年7月28日発売。

90年代半ばにマイク(Vo, G)&クリス(G, Vo)のズーター兄弟を中心に結成され、ポール・ギルバートのプロデュースによりアルバム『THE SZUTERS』でデビューを果たした彼ら。4作目『MAGNA-FI』(2003年)後に一度解散し、マイクはポール・ギルバートのバンドに参加するなどして音楽活動を続けてきました。

このたび、マイクのソロプロジェクトとしてTHE SZUTERS名義での活動を再開。その第1弾として『MAGNA-FI』以来17年ぶりの新作がデジタル/ストリーミングで届けられたわけです。

ハードロックの中にパワーポップの香りを散りばめた解散前のTHE SZUTERSと異なり、今回の再始動THE SZUTERSは完全なるパワーポップサウンドにシフト。ビートルズE.L.O.といったルーツミュージックはもちろんのこと、70年代後半のCHEAP TRICKや90年代以降のJELLYFISHなどと共鳴する甘美なメロディ&サウンドは、マイクのルーツを考えれば非常に納得がいくものがあり、ファンなら聴けば「ああ、THE SZUTERSが帰ってきた!」と実感できることでしょう。

もうね、アルバムタイトルやアートワークまんまの音。時代を超越した普遍性の高いポップなメロディと、曲を見事に引き立てるコーラス/ハーモニーとシンプルなバンドアンサンブル。なにせギターがここまで歪んでいないのか!と最初はびっくりしたほどで、リフで引っ張るアレンジの解散前とはまったくの別モノ感ですから。マイクのボーカルも無理にシャウトすることなく、落ち着いたトーンで楽曲に合った歌を乗せている。若干強めに歌うパートに関しても、ハードロックのそれというよりはパワーポップやロックンロールにおけるそれなんですよね。「そうそう、これこれ!」と膝を叩きそうになるくらい、いい塩梅のアンサンブルなんです。

序盤の王道パワーポップ/ロックはどれも文句なしの仕上がり。けど、中盤に置かれた「The Things That You Said」での冒頭のハーモニーや、サイケデリックなアレンジはこの手のスタイルの真骨頂といえるもので、曲中に挿入される〈La La La La〜♪〉コーラスなど含め、ルーツを大切に消化して、無理して自己流に解釈するのではなくて自然のままにまかせてアレンジしたこの曲こそ、今のTHE SZUTERSの真骨頂ではないでしょうか。

だからこそ、そのあとにシンプルでありきたりなはずの「I Don't Wanna Cry」が来ても心ときめいてしまう。そうそう、流れも大事ですよね。以降の構成/楽曲すべてに無駄が感じられず、「Fall Away」冒頭の演出(iPhoneの「あの」音から始まる)含めエヴァーグリーンの中にしっかり現代的な味付けが施されているところ含めてさすがの一言。全12曲/43分というトータルランニング含め、すべてが完璧に思えてきます。

マイクのソロ体制となったTHE SZUTERSは、早くも今年10月31日に次作『THE DEVIL'S IN THE DETAILS』をリリースしたばかり。日本では今回もCDが11月28日に発売されるそうなので、ぜひあわせてチェックしてもらいたいところです。

 


▼THE SZUTERS『SUGAR』
(amazon:国内盤CD / MP3

 

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