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カテゴリー「2020年の作品」の196件の記事

2021年11月25日 (木)

KYLIE MINOGUE『DISCO』(2020)/『DISCO: GUEST LIST EDITION』(2021)

2020年11月6日にリリースされたカイリー・ミノーグの15thアルバム。日本盤は同年12月4日発売。

突然のカントリー路線でリスナーを驚かせた前作『GOLDEN』(2018年)から2年半ぶりの新作は、彼女らしいディスコ/ダンス路線へと回帰した会心の1枚。全体の空気感は彼女がデビューした1980年代後半より前の、70年代後半から80年代初頭を彷彿とさせるものがあります。

これまでの彼女の楽曲にもこういったテイストは存在していましたが、ここまで全編を通して往年のディスコサウンドに特化したアルバムは初めてではないでしょうか(なにせタイトルからして土直球ですからね)。かつ、モダンなエレクトロの味付けも皆無で、質感的には現代的ながらも、使う音色やアレンジの妙により往年の空気感を作り上げることに成功している。随所にフィーチャーされるストリングスやブラスの音色がまさにそれで、「懐かしくも新鮮」というレトロフューチャー感を見事に表現できたのではないかと思います。

カイリーの歌声からも力むことなく、非常にリラックスした空気が伝わる。この良い意味での脱力感こそがディスコナンバーには必要であることを、彼女自身よく理解しているんでしょうね。なもんで、聴き手側も終始気持ちよく楽しむことができる。2020年というお先真っ暗な時代をミラーボールで照らしてくれるような、そんなポジティブさに満ちた良作です。

実際、曲ごとにプロデューサーが異なったり複数のソングライターがコライトしていたりする作風は、彼女の従来の作品と一緒ですが、とにかくここまで気合を入れて作り込んだにもかかわらず、音からは伸び伸びした感が伝わるという。これ、フロアで聴いたら最高に楽しいんだろうなあ……もちろん、自宅のスピーカーやスマホのショボいスピーカー、あるいはヘッドフォンやイヤフォンで聴いてもその魅力は十分に伝わるし、再生環境や聴くシチュエーションによっても響き方が少しずつ変わる、そんな良質のポップアルバムです。前作は前作で良かったけど、やっぱりカイリーはこうじゃなくちゃ。

 


▼KYLIE MINOGUE『DISCO』
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そんなカイリーの新作『DISCO』に、新録トラックやリミックスなど10曲追加した全26曲入りの2枚組リパッケージ・アルバム『DISCO: GUEST LIST EDITION』が2021年11月12日にリリースされました(日本盤未発売)。

新たなアートワークが使用された本作には、YEARS & YEARSをフィーチャーした「A Second To Midnight」や、UK出身のR&Bシンガーのジェシー・ウェアとのコラボ曲「Kiss Of Life」、「I Will Survive」などのヒットで知られる世界的なディスコレジェンドのグロリア・ゲイナーを迎えた「Can't Stop Writing Songs About You」、そしてデュア・リパとタッグを組んだ「Real Groove」リミックスなど、アルバム本編以上に聴き応えのある最録曲を用意。それぞれ、より濃厚なディスコサウンドを堪能することができます。

さらに、BASEMENT JAXXやPURPLE DISCO MACHINE、SYN COLEなどの手による「Say Something」「Magic」のリミックスも用意。モダンな味付けでバージョンアップしたトラックの数々は、これこそフロアで爆音にて楽しみたいものばかり。久しくクラブやDJイベントに足を運んでいませんが、早く安心して夜遊びを満喫できる世の中が戻ってきてほしいところですね……。

1年前にリリースされてからしばらく再生していなかった『DISCO』を、こういう形で再び脚光を当ててくれたのは、リスナー視点でも非常にありがたい限り。このリパッケージ・アルバムは改めて『DISCO』の魅力に気づかせてくれるという点においても、非常に大きな意味のあるアイテムだと思います。

 


▼KYLIE MINOGUE『DISCO: GUEST LIST EDITION』
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2021年11月23日 (火)

THE SZUTERS『SUGAR』(2020)

2020年6月4日に配信リリースされたTHE SZUTERSの5thアルバム。日本のみフィジカル(CD)にて2021年7月28日発売。

90年代半ばにマイク(Vo, G)&クリス(G, Vo)のズーター兄弟を中心に結成され、ポール・ギルバートのプロデュースによりアルバム『THE SZUTERS』でデビューを果たした彼ら。4作目『MAGNA-FI』(2003年)後に一度解散し、マイクはポール・ギルバートのバンドに参加するなどして音楽活動を続けてきました。

このたび、マイクのソロプロジェクトとしてTHE SZUTERS名義での活動を再開。その第1弾として『MAGNA-FI』以来17年ぶりの新作がデジタル/ストリーミングで届けられたわけです。

ハードロックの中にパワーポップの香りを散りばめた解散前のTHE SZUTERSと異なり、今回の再始動THE SZUTERSは完全なるパワーポップサウンドにシフト。ビートルズE.L.O.といったルーツミュージックはもちろんのこと、70年代後半のCHEAP TRICKや90年代以降のJELLYFISHなどと共鳴する甘美なメロディ&サウンドは、マイクのルーツを考えれば非常に納得がいくものがあり、ファンなら聴けば「ああ、THE SZUTERSが帰ってきた!」と実感できることでしょう。

もうね、アルバムタイトルやアートワークまんまの音。時代を超越した普遍性の高いポップなメロディと、曲を見事に引き立てるコーラス/ハーモニーとシンプルなバンドアンサンブル。なにせギターがここまで歪んでいないのか!と最初はびっくりしたほどで、リフで引っ張るアレンジの解散前とはまったくの別モノ感ですから。マイクのボーカルも無理にシャウトすることなく、落ち着いたトーンで楽曲に合った歌を乗せている。若干強めに歌うパートに関しても、ハードロックのそれというよりはパワーポップやロックンロールにおけるそれなんですよね。「そうそう、これこれ!」と膝を叩きそうになるくらい、いい塩梅のアンサンブルなんです。

序盤の王道パワーポップ/ロックはどれも文句なしの仕上がり。けど、中盤に置かれた「The Things That You Said」での冒頭のハーモニーや、サイケデリックなアレンジはこの手のスタイルの真骨頂といえるもので、曲中に挿入される〈La La La La〜♪〉コーラスなど含め、ルーツを大切に消化して、無理して自己流に解釈するのではなくて自然のままにまかせてアレンジしたこの曲こそ、今のTHE SZUTERSの真骨頂ではないでしょうか。

だからこそ、そのあとにシンプルでありきたりなはずの「I Don't Wanna Cry」が来ても心ときめいてしまう。そうそう、流れも大事ですよね。以降の構成/楽曲すべてに無駄が感じられず、「Fall Away」冒頭の演出(iPhoneの「あの」音から始まる)含めエヴァーグリーンの中にしっかり現代的な味付けが施されているところ含めてさすがの一言。全12曲/43分というトータルランニング含め、すべてが完璧に思えてきます。

マイクのソロ体制となったTHE SZUTERSは、早くも今年10月31日に次作『THE DEVIL'S IN THE DETAILS』をリリースしたばかり。日本では今回もCDが11月28日に発売されるそうなので、ぜひあわせてチェックしてもらいたいところです。

 


▼THE SZUTERS『SUGAR』
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2021年10月 1日 (金)

LITURGY『ORIGIN OF THE ALIMONIES』(2020)

2020年11月20日にデジタルリリースされたLITURGYの5thアルバム。フィジカル(CD、アナログ)は2021年6月4日リリース。なお、現時点で日本盤は未発売。

前作『H.A.Q.Q.』(2019年)もデジタルで先行リリース後、約半年後にフィジカルで発売されましたが、ほぼ1年ぶりとなったこの新作も同様の流れでデジタル/フィジカルでのリリースが続いたようです。それもあってか(また、こちらの情報収集力が鈍っていることもあってか)、つい最近まで完全に見逃していた本作。まさかこんな立て続けに良作を連発するなんて思ってもいなかったものでして(言い訳)。

昨年5月、『H.A.Q.Q.』をリリースするタイミングに自身がトランスジェンダーであることをカミングアウトしたハンター・ハント=ヘンドリクス(Vo, G, Electronics)。それもあってなのか、今作からは前作以上の開放感が伝わる……気がします。

作品のテイスト、およびオープニング曲「The Seperation Of HAQQ From Hael」というタイトルから、今作が前作『H.A.Q.Q.』の続編、もしくは対となるような作品であることは想像に難しくありません。ブラックゲイズをベースにしつつも、デジタルエフェクトとストリングス&ブラスといった生楽器を並列したサウンドメイクはまさに前作の延長線上にあるもの。ですが、今作はアバンギャルドさと宗教音楽的な“癒し”効果が前作以上の広がりを見せており、そのタガの外れた感覚(それでいて整合感も備わっている)は、ハンターが自己解放を遂げた結果でもあるのかな……というのはこじつけでしょうか?

序盤はインストゥルメンタル中心の構成で、中盤以降からブラックゲイズ色が徐々に増していき、それに伴うようにアバンギャルドさにも磨きがかかっていく。特に大半の楽曲がシームレスになっている流れはどこか組曲のようにも感じられる。それは、特に2曲目以降の「OIOION's Birth」「Lonely OIOION」や「The Fall Of SIHEYMN」「SIHEYMN's Lament」と2曲ペアになったタイトルからも推測は難しくありません。

かつ、終盤には14分超えの大作「Appartion Of The Eternal Church」でクライマックスを迎える。この曲で展開されるアグレッションと美しさの共存は、まさにこのバンドの真骨頂と呼べるもので、KING CRIMSONを筆頭とするかつてのプログレッシヴロックが果たした役割を現代的に昇華させ、さらに数歩前進されたものと受け取ることができます。美しいったらありゃしない。

どこか残虐性を孕みながらも、全体を覆う上品さ、気高さはクラシック音楽やオペラ音楽などとの共通点も見出せるし、先の「Appartion Of The Eternal Church」のドラマチックさからはまさにそういった音楽と共通のテイストが見つけられることでしょう。だからこそ、アルバムラストを飾る「The Armstice」の、なんとなく悲哀に満ちた空気感からはエピローグと呼ぶにふさわしいものさえ伝わってくるのです。

最高傑作との呼び声も高い『H.A.Q.Q.』に続く今作もまた、『H.A.Q.Q.』と並ぶ、いや、同作を超える傑作だと断言できるもの。全7曲/37分というコンパクトさ含め、すべてにおいてパーフェクトな1枚です。

 


▼LITURGY『ORIGIN OF THE ALIMONIES』
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2021年7月25日 (日)

ANDY BELL『THE VIEW FROM HALFWAY DOWN』(2020)

2020年10月9日にリリースされたアンディ・ベルの1stソロアルバム。日本盤は同年10月7日に先行発売。

アンディ・ベルはご存知のとおりRIDEのフロントマン(Vo, G)のひとりで、RIDE解散中にはHURRICANE #1のギタリストを経てOASISのベーシスト、さらにはリアル・ギャラガー主導によるBEADY EYEのギタリストとして活躍してきたアーティストです。RIDE以外でボーカリストとして活躍することはなかったので、特にOASIS加入以降はアンディのソロアルバムを心待ちにしていたというオールドファンは少なくなかったはずです(筆者もそのひとり)。

このソロアルバムはもともと、2016年1月のデヴィッド・ボウイの死に触発されて制作がスタートしたんだとか。OASIS〜BEADY EYE時代の盟友ゲム・アーチャー(ex. HEAVY STREO)のスタジオでいくつかの楽曲を作り上げたものの、RIDEが再結成後初となるアルバム『WEATHER DIARIES』(2017年)制作に乗り出したこともあり、ソロアルバムは一度暗礁に乗り上げます。以降もRIDEは順調に活動を続け、2019年夏には再始動後2作目となる『THIS IS NOT A SAFE PLACE』をリリース。しかし、2020年に入ると新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンで、すべてがストップしてしまいます。

この空白の時間を通じて、アンディはソロアルバム制作を再開。ちょうど同年8月に50歳の誕生日を迎えることもあり、これまでの音楽人生を総括するような内容のアルバムを完成させます。

内容はRIDE的な要素も若干感じられるものの、かといってシューゲイザーかといわれるとまったくそんなことはなく。むしろRIDEの3作目『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)で見せたソングライターとしての成熟ぶりにさらに拍車がかかったかのような、非常に聴き応えのある楽曲群を楽しむことができます。

60年代のビートルズやTHE BYRDSを経て、80〜90年代のTHE STONE ROSESやSPACEMEN 3、THE LA'Sを通過したサイケデリック感とフォーキーさ、近年のアンビエント/エレクトロユニットGLOKを通じて得たテイスト、そしてRIDE以降の音楽活動で培った作曲家/表現者としての技量が遺憾なく発揮された楽曲の数々は、全体的に穏やかながらも安心して楽しめるものばかり。RIDEでやれそうでやれないであろう作風も少なくなく、人生の折り返し地点を追加したアンディのリアルが伝わる良作と言えるのではないでしょうか。

RIDEファンはもちろんのこと、特に『CARNIVAL OF LIGHT』や再始動後の2作を気に入っているリスナーなら、すんなり受け入れられるはず。もちろんRIDEにあるような派手さは皆無ですが、バンドの4分の1ならではのエッセンスは見事に健在。今後定期的にソロ作に着手するのかどうかはわかりませんが、できることなら節目節目でこのように内向的でサイケデリックな作品を届けてもらえるとうれしいかな。

 


▼ANDY BELL『THE VIEW FROM HALFWAY DOWN』
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2021年6月 5日 (土)

THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』(2020)/『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』(2021)

2020年7月31日にリリースされたTHUNDERMOTHERの4thアルバム。日本盤未発売。

THUNDERMOTHERはスウェーデン出身の4人組女性ロックバンド。AC/DCを思わせるシンプルなハードロックンロールが特徴で、これまでに3枚のアルバムを発表しています。2020年にはAFM Recordsとワールドワイド契約し、この『HEAT WAVE』で活動ベースを一気に広げることになる……予定でした(コロナ禍さえなければ、ね)。

ソロアーティストとしても活動するデンマーク出身のギタリスト、セーレン・アンデルセンをプロデューサーに迎えて制作された本作。一聴すればサウンドやギターリフそのものはAC/DCを彷彿とさせるハイエナジー・ハードロックですが、ハスキーな女性ボーカルが乗ることで新鮮さが伝わります。僕自身はこのアルバムで初めてTHUNDERMOTHERの作品に触れたのですが、うん、これは大好物です。

序盤こそAC/DC直系……というか、まんまな音なのですが、ハードロックバンドのパワーバラードと呼ぶにふさわしい「Sleep」あたりからその様子が変化し始めます。リフそのものはAC/DCそのものな「Free Ourselves」などはあるものの、北欧バンドらしい爆走ロックンロール「Driving In Style」に「Somebody Love Me」、ハードブギー「Mexico」、メロディアスなミディアムナンバー「Purple Sky」といったバラエティに富んだナンバーがアルバムに多彩さを与えています。

女性バンドに求められる繊細さは「Sleep」や「Purple Sky」などから少々感じられるものの、基本的には性別を超越したリアル・ロックンロールを堪能できる1枚。おそらく過去のアルバムをさかのぼっても、(「Sleep」や「Purple Sky」のような曲があるかどうかは別として)全体的な基本路線はさほど変わらない、いや、変わりようのないバンドだと思うので、基本的には最新作から入るのがベストかなと。特に本作は後半の彩り豊かさが印象に残るので、気になる方はぜひ本作から手に取ってみてください。

 


▼THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』
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なお、本作は2021年5月21日に10曲入りボーナスディスクを追加&アートワークを一新したデラックス・エディションを、CD&デジタルでリリース。ボーナスディスクにはアルバム未収録の新曲のほか、「Driving In Style」「Dog From Hell」のアコースティックバージョンのほか、D-A-Dのイェスパー・ビンザー(Vo)をフィーチャーした「Sleeps」アコースティックテイク、「Thunderous」「Hellevator」のライブテイク、そしてポンタス・スニッブ(BONAFIDE)、ドレゲンBACKYARD BABIES)がゲスト参加した「Rock'n'Roll Heaven」といったレアトラックを楽しむことができます。特にアルバム未収録のスタジオ音源およびアコースティックバージョンは、アルバム本編同様に必聴の内容なので、もしフィジカルでの購入を計画している方はぜひこちらをご購入いただけると幸いです。僕もこっち買いましたから(ジャケもカッコいいし)。

今年の開催も延期となってしまった世界最大級のメタルフェス『Wacken Open Air』。2022年開催予定の同フェスに、このTHUNDERMOTHERの出演も決定しております。それまでにもう1枚くらいスタジオアルバムが出ていそうな気がしないでもないですが、本作や次のアルバムを通じて一気に名が知れ渡りそうな、そんな北欧ガレージロック/ハードロックファン必聴のバンドです。

 


▼THUNDERMOTHER『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』
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2021年5月30日 (日)

PALAYE ROYALE『THE BASTARDS』(2020)

2020年5月29日にリリースされたPALAYE ROYALEの3rdアルバム。日本盤未発売。

PALAYE ROYALEはアメリカ・ネヴァダ州ラスヴェガスにて結成された3人組ロックバンド。2008年から前身バンドにて活動を開始し、2012年に現在の名前に改名しています。メンバーはレミントン・リース(Vo)、セバスチャン・ダンジグ(G, Key)、エマーソン・バレット(Dr, Piano)という不動の3人。実は彼ら、実の兄弟なんだとか2016年に名門Sumerian Recordsからアルバム『BOOM BOOM ROOM (SIDE A)』にてデビュー。同作はジェームズ・イハ(THE SMASHING PUMPKINS)がプロデュース&ベースで参加、2017年にはHYDEのバンドVAMPSとUSツアーを経験したほか、2019年9月にはMARILYN MANSONROB ZOMBIEとのツアーを経て初来日公演も実現しています。

そのヴィジュアル・イメージから、聴く前にグラムロック/グラムメタルと決めつけてしまいがちですが、その想像は半分正解。上記に挙げたアーティストとの共通点も見つけられ、随所にグラムロックからの影響が感じられるものの、そのビートは意外にも骨太で現代的な味付けが施されていることに気づくはずです。

音楽的にはグラマラスな要素やショックロック的側面が強いものの、曲によっては古き良き時代のロックンロールやオールディーズ、パンクロック以前のガレージロックからの影響も見え隠れする。これらが2010年代以降のアレンジで展開されることで、不思議と古臭さが感じられない、モダンなヘヴィロックへと昇華されているわけです。

また、本作は古き良き時代のロックンロールを思わせる、1枚を通してひとつのストーリーを描いたコンセプトアルバムとなっています。アルバム全体で4つのブロック分けがされており、その中で架空の世界の歴史が綴られている。そして、1曲ごとにメンタルヘルスやドラッグ中毒、銃社会の危険性など現代社会ともリンクするテーマが扱われているわけです。

曲によってはMARILYN MANSONをリンクするものがあったり、「Doom (Empty)」のようにおどろおどろしいヘヴィチューンからはBLACK SABBATH的な要素も見え隠れする。要はクラシックロックからの影響を非常にわかりやすく噛み砕き、イマドキの味付けでアレンジして、歌詞では普遍的なテーマと現代社会の闇を混ぜ合わせて表現する。かつ、これらをアクや毒が強すぎない絶妙なバランスで整えることで、幅広いリスナー層に届けることを意識する。この感覚がいかにも2020年代的だなという気がしました。

そのヴィジュアルやキャラクターの立ち方も手伝って、世が世なら新たなロックスターの仲間入りをしても不思議じゃない彼ら。残念ながら本作はセールス的には大きな成功を収めてはいません(Billboard 200で最高192位)。彼らのような存在が好意的に受け入れられる世の中が再び戻ってくることを、強く願っています。

 


▼PALAYE ROYALE『THE BASTARDS』
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2021年4月 9日 (金)

OCTAVISION『COEXIST』(2021)

2021年3月24日にCDリリースされたOCTAVISIONの1stアルバム。

OCTAVISIONはギタリスト&コンポーザーとして活躍するホヴァク・アラヴェルディアンを中心とした、プログレッシヴメタル・プロジェクト。2016年に動画配信サイトに公開された、9分半にもおよぶインスト大作「Three Lives」が一部界隈で注目を集めました。同曲にはジャズ/フュージョン界で知られる超絶ベーシスト、ヴィクター・ウッテンが参加していたことでも反響を呼び、このプロジェクトの全貌を求める声は日々高まっていきました。

そして、2020年12月には各種配信サイトにて本アルバムをデジタルリリース。これに続き、日本のみで本作のフィジカルリリースが今年3月に実現したわけです。

このアルバムにはホヴァクやヴィクターのほか、MR. BIGSONS OF APOLLOなどで活躍するビリー・シーン(B)、Roman Lomtadze(Dr)、Murzo(Key)、Avo Margaryan(Blul/アルメニアの伝統的なフルート)といったプレイヤーたちが参加。さらに、タイトルトラック「Coexist」と「Apocalyptus」にはジェフ・スコット・ソート(Vo/SONS OF APOLLO、SOTOなど)もゲスト参加しております。

全体的に各プレイヤーの技巧的プレイを大々的にフィーチャーした、クラシカルな要素とモダンヘヴィネス以降のヘヴィメタルを融合させたサウンドが特徴。ベーシックな部分は“DREAM THEATER以降”と言えますが、随所に仰々しいクワイアなども取り入れられている。しかし、このプロジェクトの魅力はそこというよりは、むしろアルメニアの伝統的な管楽器Blulや中東のミステリアスな旋律を織り交ぜた「Mindwar」や「Three Lives」のような楽曲にこそ独特の個性が表れている。そういった旋律をホヴァクのテクニカルなソロプレイで、あるいはキーボードとのユニゾンプレイで表現されており、そういったところで独自性を強くアピールしています。

さらに、デジタルエフェクトも効果的に用いられており、「Mindwar」のような楽曲では2000年代以降のモダンテイストも伝わってくる。そういったところでも異色さや独特の個性も、しっかり醸し出せているのではないでしょうか。

それにしても、Blulをフィーチャーしたプログレッシヴメタルというのは、なんとも新しい。フルートなどを取り入れた旧世代のプログレは過去にも存在しましたが、音圧の高いメタリックなサウンドにこうした管楽器が取り込まれるのは、なんとも不思議なものが感じられます。一方で、ジェフのボーカルをフィーチャーした2曲は彼のパワフルな歌声と相まって、一聴した限りではSONS OF APOLLOを彷彿とさせるものがあります(こればかりは仕方ないですね)。ただ、メロディの運びや旋律は確実に差別化ができているので、聴いているうちに別モノだと理解できる。特に10分にもおよぶ超大作「Apocalyptus」は、その構成美/構築美含め圧倒的な個性を放っています。

とはいえ、やはりこのプロジェクトの魅力はインストゥルメンタルパートでの多彩さ/テクニカルさ/非凡さにあるので、歌モノはおまけといったところかな。全7曲で54分というボリュームは、この手の作品としては比較的程よいものなので、初心者でも意外と楽しめるのではないでしょうか。DREAM THEATERやSONS OF APOLLOを筆頭に、昨今のプログミュージック/プログレッシヴメタルに多少なりとも興味があるリスナーなら、触れておいて損はしない1枚です。

 


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2021年4月 1日 (木)

Roselia『Wahl』(2020)

2020年7月15日にリリースされたRoseliaの2ndアルバム。

2018年5月発売の1stアルバム『Anfang』から2年2ヶ月ぶり、中島由貴さん(B/今井リサ役)、志崎樺音さん(Key/白金燐子役)が加入してから初のフルアルバム。6thシングル「R」(2018年7月)から10thシングル「約束」(2020年1月発売)までのシングル表題曲5曲とカップリング曲「"UNIONS" Road」、アプリゲームで先行披露されていた楽曲を含むCD初収録の3曲に加え、『Anfang』にも含まれていた「Determination Symphony」「Re:birth day」「Neo-Aspect」も再収録されています。

実はこの3曲、一聴すると同じテイクのように感じられるかもしれませんが、ボーカルパートを現メンバーで再録したもの。現在のライブに近い形で再収録されているわけです。ライブでもお馴染みの楽曲も含まれているので、現編成での最初の集大成という見方もできますが、できることなら未聴の新曲がもう1つ2つ欲しかったかな(あくまで個人の感想です)。

本作の強みはなんといっても、様式美スピードメタル「FIRE BIRD」や流麗なメロディのミディアムバラード「Safe and Sound」のシングル2作が含まれていること。クセが強くて圧倒的な前者と、しなやかさと繊細さを見事に表現した後者が並んで収録されていることもそうですが、この対比が非常に気持ちよく、バンドとしての可能性をさらに一段高いところへと導いてくれます。

そこから、プログレメタル要素を含む「Avan-garde HISTORY」へと続く構成も素晴らしい。とにかくこの高い演奏技術を要する楽曲が増えたことは、バンドの力量を伸ばすという点においても非常に大きな意味があるのではないでしょうか。

終盤の「約束」から「"UNIONS" Road」への流れ、そして「Song I am.」でラストを飾る。「R」で始まり「Song I am.」という構成含め、完璧なんじゃないかなと。前作での「熱色スターマイン」〜「軌跡」という綺麗な流れも素晴らしかったですが、唯一無為の「誰にも負けない自我の強さ」を提示する今回のオープニング&エンディングも今のRoseliaらしくて最高だと思いました。

本作をガールズメタルの範疇に含めるのかどうかは聴き手の判断に委ねますが、僕は「J-ROCKのスタイルに沿ったモダンなガールズメタル」アルバムと捉えています。なお、本作はメンバー5人が実際に演奏するライブ映像(しかも2019年8月の富士急公演!)を収めたBlu-rayが2枚も付属しているので、ベスト盤感覚としても楽しめるんじゃないかな。少々値は張りますが「これさえあれば、現在のRoseliaを網羅」と言える内容じゃないかと思います。

 


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RAISE A SUILEN『ERA』(2020)

2020年8月19日にリリースされたRAISE A SUILENの1stアルバム。

メディアミックスプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』から生まれた、第3の“リアルバンド”は、2018年12月の1stシングル「R・I・O・T」から現時点(2021年4月1日)までに6枚のシングルを発表。この1stアルバムには4作目「DRIVE US CRAZY」(2020年1月発売)までに発表されたカップリング曲を含む8曲に加え、本アルバムからのリードトラック「SOUL SOLDIER」など新曲4曲からなる全12曲が収録された、まさに名刺代わりの1枚に仕上がっています。

ポップで軽やかなギターロックのPoppin'Party、女王の座を欲しいままにする王道中の王道ハードロックを奏でるRoseliaの先陣を切ったリアルバンド2組は、ゲームやアニメの世界観(およびバンドメンバーのキャラ)ありきでバンドの方向性が確立されたところが大きいと思いますが、RASに関してはまず「リアルバンドとして成立していない登場バンドの、ライブでの演奏を務める」バックバンドという役割からスタートしています。つまり、絶対的な演奏力が最初から求められていたわけです。

僕、RASに関しては楽曲よりもライブを観て圧倒されたクチでして。楽曲自体はエレクトロニコアやピコリーモの影響下にあるラウドロック/J-ROCKという印象で、非常にモダンで好印象といった感覚で接していたのですが、(このアルバムの初回盤にもライブ映像を収めたBlu-rayが付属しているので、ぜひそちらで確認してもらいたいのですが)あのライブでの技術力とパフォーマンス力、発するエネルギーにノックアウトされない人はいないんじゃないか……そう思うくらい、久々に衝撃を受けたんです。

そう感じてから、彼女たちの楽曲に再び触れてみると、CD音源としての完成度は当たり前なんですが、それと同じくらいライブを意識して制作された楽曲群なんだなと気付かされたのです。シングルの表題曲に採用された「R・I・O・T」や「A DECLARATION OF xxx」、カップリング曲ではありますが「Invincible Fighter」や「HELL! or HELL?」あたりは間違いなくライブ前提でアレンジされていますものね。一度ライブを味わってからこれらの楽曲たちに触れると、5人がステージで思い思いに表現する姿が容易にできるわけです。

アルバムのために用意された国産ラウドロックならではの「SOUL SOLDIER」など、新曲群もカッコいいったらありゃしない。あと、しっかり歌える(聴かせられる)ボーカリスト(Raychellさん)を擁しながらも、全12曲の中にバラードらしいバラードが1曲もなく、すべて前のめりで攻め攻めな姿勢なのも好印象。それによって、Raychellさんの歌が活きるだけではなく、DJかつラップボーカル的な役割の紡木吏佐の個性がより際立つ結果を生み出しているんですから。1枚目のアルバムだもの、これくらい強気でいいんですよ。表現の幅を広げるのは、この先で十分。まずはRASらしさをしっかり伝えることが重要ですから。

既存曲が3分の2を占めるという点で、昨年のベスト20作品からは敢えて外しましたが、個人的には昨年後半はポピパやRoseliaの2ndアルバムと同等にヘヴィローテーションした1枚。2021年に発表したシングルがどれも“『ERA』のその先”を感じさせるものばかりなので、気が早いですがもう2枚目のアルバムが楽しみになっています。

 


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2021年3月17日 (水)

CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020)

2020年9月18日にリリースされた、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスと元SUEDEバーナード・バトラーによるコラボアルバム。日本盤未発売。

本作は2014年に制作されていたものの、諸事情により6年以上お蔵入りとなっていた曰く付きの1枚。2020年に入ってからNeedle Mythologyというインディレーベルの目に留まり、正式リリースが実現したという経緯があります。

キャサリンにとってはTHE ANCHORESSのデビューアルバム『CONFESSIONS OF A ROMANCE NEVELIST』(2016年)発表前に関わった作品であり、バーニーにとってはEP2枚と短命に終わったTRANSと同時進行で制作に取り組んだ1枚でもあるのですが……これが非常に良いんです。僕、このアルバムの存在を2021年に入ってから知ったんですね(THE ANCHORESSの新作発売に関するプレスリリースを通して)……なんでもっと早くに出会ってなかったんだろう!? と強く思った、2020年のベストアルバムに選出すべき1枚だったのです。

キャサリンの歌を軸にしつつ、バーニーは裏方(ギタリスト&ソングライター、プロデューサー)に徹した内容なのですが、曲が進むにつれてバーニーのギタリストとしての主張がどんどん強くなっていくのが非常に興味深いんです。最初こそTHE ANCHORESSにも通ずる耽美な世界観が構築されているのですが、「Sabotage (Looks So Easy)」あたりから空気が一変。あのねちっこい激情型ギタープレイが随所にフィーチャーされ始めるのです。そうそう、これよこれ!

McALMONT & BUTLERやバーニーのソロ作で感じられたソウルフルさと、初期SUEDEにも通ずるグラマラスな要素がバランスよく散りばめられた楽曲の良さと相まって、2人の個性も曲を重ねるごとにどんどんディープさを増していく。個人的には「I Know」や「No More Tears To Cry」「The Waiting Game」あたりで楽しめる2人の化学反応と、その集大成といえるラストナンバー「F.O.H.」がツボすぎて、聴くたびに何度も鳥肌を立てたものです。いやあ、本当に素晴らしい。バーニー関連の作品でいうと、個人的には彼のソロ1作目『PEOPLE MOVE ON』(1998年)以来となる会心の仕上がりと断言したいです。

今回の正式リリースに際して、アルバムにはボーナストラック2曲を追加。ひとつはマドンナの80年代のヒット曲「Live To Tell」カバーで、こちらはTHE ANCHORESS的側面が強いアレンジと言えるかもしれません。これはこれで良きかな。もうひとつは、アルバム収録曲「The Patron Saint Of The Lost Cause」の別バージョン。リズムトラックを排除し、鍵盤ハーモニカを主軸にしたアレンジとなっています。これもこれで味わい深くて良きかな。まあ、アルバム本編は「F.O.H.」という大傑作で盛大に幕を下ろすので、この2曲はオマケ以外の何ものでもないですけどね。できれば「F.O.H.」が終わったところでワンクッションおいて、しばらくしてからボートラに触れると最適かもしれません。

いやあ、それにしても素晴らしい作品じゃないですか。THE ANCHORESS自体がMANIC STREET PREACHERSMANSUN、そしてSUEDEあたりを好むリスナーにドンピシャなアーティストであるわけですが、このコラボ作はその中でも飛び抜けてど真ん中な1枚であると同時に、時代を超越したロック/ポップスの名盤と呼ぶに相応しいのではないでしょうか。昨年リリースされたアルバムの中ではトップクラスに好きな作品です。

 


▼CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』
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