WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』(2019)
CONVERGEのフロントマン、ジェイコブ・バノン(Vo)による別バンドWEAR YOUR WOUNDSが2019年7月12日にリリースした2ndアルバム。日本盤は2日先行の同年7月10日に発売されています。
アートブックなどミックスメディア・プロジェクトの一環として発表された『DUNEDEVIL』(2017年)を含めれば3作目のアルバムとなる今作(アルバム『DUNEDEVIL』は1stアルバム『WYW』日本盤にボーナスディスクとして付属。サブスクなどでも手軽に聴くことができます)。過去2作はあくまでジェイコブのソロ/サイドプロジェクトとして制作されたものでしたが、『WYW』制作に参加したメンバーを軸にバンド形態として始動。ジェイコブがベースやピアノなどを兼任しつつ、マイク・マッケンジー(G/THE RED CHORD、STOMACH EARTH)、ショーン・マーティン(G/TWITCHING TONGUES、ex. HATEBREED)、アダム・マッグラス(G/CAVE IN、NOMAD STONES)、クリス・マッジオ(Dr/ex. TRAP THEM、ex. SLEIGH BELLS)というUSハードコア界の重鎮たちが一堂に会するスーパーバンドへと進化したわけです。
ですが、ここで展開されているのは現代的なハードコアとは一線を画する、シューゲイザーやスラッジの影響下にあるアートロックのようなサウンド。アッパーなサウンドで攻めたり叫んだりすることはなく、ダウナーなボーカル&サウンドで悲しみや絶望など負の感情が時にメランコリックに、時にエモーショナルに表現されていく……そういった意味では、CONVERGEの最新作『THE DUSK IN US』(2017年)の中で芽生え始めた方向性を一歩推し進めたものと言えるかもしれません。
トリプルギターを用いた音の厚み、ピアノやエレクトロニクスを効果的に用いた叙情性、ボーカルラインやギターが奏でるメロディの多彩さはCONVERGEでは表現できなかった世界観でしょうか。そのサウンドをエンジニアリング&プロデュースするのが当のCONVERGEの一員であるカート・バルーというのも、また興味深いところです。
『WYW』が良くも悪くも実験性の強い1枚であったことを考えると、本作で展開されているのは紛れもなく“バンドのアルバム”だということ。この違いは非常に大きく、特にCONVERGEからの流れでジェイコブのソロに触れるというリスナーには今作のほうがとっつきやすいと言えるでしょう。もちろん、CONVERGEそのものを求めると痛い目を見ることになりますが……。ただ、『THE DUSK IN US』という作品を好意的に受け入れることができたファンには間違いなく響く良作であり、ある意味では『THE DUSK IN US』と表裏一体の1枚と断言できます。
楽曲の良さや世界観、演奏面など、どれを取っても高品質な1枚。今みたいな季節に、深夜に適度な音量で楽しみたいアルバムです。
▼WEAR YOUR WOUNDS『RUST ON THE GATES OF HEAVEN』
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