CONVERGE『JANE DOE』(2001)
2001年9月4日にリリースされたCONVERGEの4thアルバム。日本盤は同年12月28日発売。
前作『WHEN FOREVER COMES CRASHING』(1998年)を経て、ジェイコブ・バノン(Vo)、カート・バルー(G)、アーロン・ダルベック(G)にネイト・ニュートン(B)、ベン・コラー(Dr)が加わり、現在まで続く布陣の4人がここで揃うことになるCONVERGE。本作は5人編成では最後のアルバムであると同時に、Equal Vision Recordsから最後の作品にもなりました。
前作からカートがエンジリアリング、ジェイコブがミキシングにまで携わるようになりましたが、今作もその布陣での制作が継続され、かつ関わる密度がより高くなったことからか、そのサウンド/音質もより生に近いダイナミックなものが収められることに。このクオリティの向上に伴い、バンドアンサンブルもより緻密で計算され尽くされたものへと進化。現在まで続くCONVERGEの歴史を語る上で、真の意味での原点と言える歴史的名盤を完成させることとなったわけです。なお、レコーディングにはメンバー5人のほか、CAVE INのケイラブ・スコフィールド(B, G, Vo)やTHE HOPE CONSPIRACYのケヴィン・ベイカー(Vo)が「The Broken Vow」のコーラスに参加しています。
アルバム冒頭の「Concubine」や「Phoenix In Flames」など1分前後のショートチューンから、ラストを盛大に飾る11分強の「Jane Doe」まで1曲の尺は幅広く感じられるものの、その大半が2〜3分台のコンパクトなもの。かつ曲間がほとんどないシームレスな状態であることから、ショートチューン数曲からなる組曲のようにも映り、息をつく間をまったく与えてくれません。無呼吸で全力疾走を始めたかと思うと、徐々にそのテンポを落としていき、ミディアム/スロー&カオティックでヘヴィな音像が自分の周りに壁となって立ちはだかり、気づくと全12曲/45分があっという間に終了している。聴いているだけで思考が停止する、いや、考えることを放棄させられる強烈な1枚なのです。
ジェイコブのボーカルは歌というよりも、ほぼ叫び(しかも何を叫んでいるか聴き取れない)。メタルバンド的な低音グロウルとは異なるハードコア特有の高音スクリームは、リフでぐいぐい引っ張るタイプではない、変幻自在でプログレッシヴな思考を持つアンサンブルとの相性も抜群で、ヘヴィメタルからはあまり感じられない狂気性が伝わってきます。ですが、ある種前衛的にすら思えてくる音の組み合わせも、聴けば聴くほどにどこかドラマチックにすら思えてくるから不思議。随所から溢れてくるエモさは、ほかの何にも例えようがないものであり、この感情はCONVERGE以外からは感じとることができないもののような気がします(これに近い感情は、ほかのカオティックハードコア、マスコアバンドからも体感することができるのですが、ちょっと別モノ感がありますしね)。
攻撃性やエモさ、カオティックさというさまざまな側面に特化した作品は、以降も数々制作されていますが、すべてのバランスが均等に揃ったという点ではこのアルバムがベストではないでしょうか。リスナーによっては「以降のアルバムは『JANE DOE』を超えられていない」と感じているかもしれませんが、ここを起点にアルバムごとに実験を重ねていると受け取れば、「すべて別の視点で制作された別モノであり、『JANE DOE』はその始まりにすぎない」と理解することができるはずです。じゃなきゃ、ここから20年後に『BLOODMOON: I』(2021年)のような深みのあるアルバムにまで到達できませんって。
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