HIGHER POWER『27 MILES UNDERWATER』(2020)
2020年1月下旬にリリースされた、HIGHER POWERの2ndアルバム。日本盤未発売。
HIGHER POWERはジミー(Vo)&アレックス(Dr)のウィザード兄弟を中心に、2014年に結成された英・リーズ出身の5人組バンド。オールドスクールなハードコアにポストハードコアやメロディックパンク、エモ、グランジ、スラッシュメタルなどをミックスしたクロスオーバーサウンドが大きな武器で、2017年には1stアルバム『SOUL STRUCTURE』をインディーズからリリース。TURNSTILEやNO WARNINGなどのツアーに参加し、2018年には『DOWNLOAD FESTIVAL』のステージにも立っています。
昨年夏に老舗Roadrunner Recordsと契約し、満を辞して発表されて今作。僕は昨年末、今作から先行配信されてた「Seamless」や「Low Season」といった楽曲を通じて彼らに初めて触れたのですが……めちゃくちゃゴリゴリのハードコアなのに、どこか懐かしさを感じらせるものがあったんです。それは決して古臭いとか過去の焼き直しという意味ではなく、ノスタルジックな要素をメロディから感じ取ったという意味だったんです。
このノスタルジックな要素というのが、実は先人たち影響が色濃く表れたものなのかなと。スタイル的には90年代後半のREFUSEDに通ずるものを感じるのですが、そこにDEFTONESやHELMET、90年代初頭のTHERAPY?、ALICE IN CHAINSやJANE'S ADDICTIONあたりのエッセンスを散りばめたらこうなるのかなと。だからなのか、コアな音なのにとてもキャッチーなんですよね。
プロデュースを手がけたのは、かのギル・ノートン。PIXIESやFOO FIGHTERS、JIMMY EAT WORLD、FEEDER、FUNERAL FOR A FRIENDなどをプロデュースしてきた名手ですが、それも納得の内容です。生々しさの中にも緻密さが感じられるこのバランス感は、彼が過去に手がけた名盤にも匹敵する完成度だと思います。
正直、この手の音楽が今の若年層にどう響くのかまったく想像がつきません。きっと30代後半以上のロックを通ってきたリスナーにはどこかしら引っかかる要素が含まれていると思うのですが、今やロックやハードコア、エクストリーム・ミュージックをこよなく愛するという若年層がどれだけ残っているのか……でも、期待を込めて書かせてください。きっと彼らは1年後、その存在感をさらに高めているはずだと。
日本盤の発売予定は現在ありませんが、フェスなどでの来日を経て一気に盛り上がってもらいたい存在のひとつであり、2020年を代表する名盤になる可能性を秘めた強烈な1枚です。
▼HIGHER POWER『27 MILES UNDERWATER』
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