AVATARIUM『THE FIRE I LONG FOR』(2019)
2019年11月下旬にリリースされたAVATARIUMの4thアルバム。
AVATARIUMは紅一点のジェニー・アン・スミス(Vo)を擁するスウェーデンのドゥームメタルバンド。もともとはCANDLEMASSのレイフ・エドリング(B)が2012年に立ち上げたプロジェクト・バンドで、翌2013年にセルフタイトルアルバムでデビュー。その後、レイフは健康上の理由でライブ活動から撤退し、現在はソングライティング面などでバンドに関与しています。なので、バンドは現在パーマネントのベーシストが不在。ジェニー、マーカス・イデル(G)、アンドレアス・“ハボ”・ヨハンソン(Dr)、リカード・ニルソン(Key)の4人を中心に活動を続けています(レイフは現在もCANDLEMASSではライブ活動を継続)。
本作でも聴くことができるヘヴィな楽曲群は、オジー・オズボーン在籍時の初期BLACK SABBATHが武器としたドゥーミーなハードロックと、ロニー・ジェイムズ・ディオ期のBLACK SABBATHが得意としたメロウでドラマチックな正統派ヘヴィメタルがミックスされ、かつモダンな味付けで仕上げられたものが中心。もちろん、そこは過去3作同様のスタイルではあるのですが、今作ではこれまでには見られなかった新たな試みも用意されています。
それは、メンバーのマーカス・イデル(G)がインタビューで語るRAINBOWやLED ZEPPELIN、THE DOORSといったクラシックロックからの影響が色濃く表れている点でしょう。低音を活かしたヘヴィさが際立つものの随所にオールディーズ・テイストが散りばめられた「Rubicon」や、ブルージーかつソウルフルなトラッドバラード「Lay Me Down」、サイケながらも直線的なロックンロール色も強い「Shake That Demon」、アンビエント性も感じられるピアノバラード「Stars They Move」といった楽曲はまさにこういった影響下にあると断言できます。
こういった緩急に跳んだ楽曲群を前にすると、本作が単なる“BLACK SABBATHをベースとしたドゥームメタルの焼き直し”ではないことはご理解いただけるはず。特にマーカスの奏でるアコースティックギターやリカードのピアノ&オルガンをフィーチャーしたムーディなアレンジは、このアルバムにおける大きなフックとなっておりAVATARIUMが数多のドゥームメタルバンドとは一線を画する存在へと進化したことが伺えます。
同郷の大先輩でありレイフという共通人物を持つCANDLEMASSも昨年、バンドをネクストレベルへと導いた力作『THE DOOR TO DOOM』をリリースしていますが、こういった温故知新的ジャンルですらモダンな形へ進化を遂げているあたりに、現在のシーンの面白みを感じ取れるのではないでしょうか。ぜひCANDLEMASSとセットで楽しんでもらいたい良作です。
▼AVATARIUM『THE FIRE I LONG FOR』
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