BLACK SWAN『SHAKE THE WORLD』(2020)
BLACK SWANが2020年2月中旬に発表したデビューアルバム。日本盤は海外に数日遅れでリリースされています。
BLACK SWANはロビン・マッコーリー(Vo/MICHAEL SCHENKER FEST、ex. MCAULEY SCHENKER GROUPなど)、レブ・ビーチ(G/WINGER、WHITESNAKEなど)、ジェフ・ピルソン(B/FOREIGNER、ex. DOKKENなど)、マット・スター(Dr/MR. BIG、エース・フレーリーなど)という80年代以降のHR/HMシーンにてたびたび名前を目にする名手たちが一堂に会した“スーパーバンド”のひとつ。昨年の今頃、ジェフがこのバンドについて言及する場面があったそうで、もともとはロビン、レブ、ジェフの3人で進めていたプロジェクトからマットに声がかかり、その数日後にはレコーディングに参加したとのこと(すでにドラム以外のパートはレコーディング済みだったそう)。
ソングライティングは上記のようにマット以外の3人で進めたのでしょう。一体この3人でどんな曲/音が作れるのか……要はMSGとWINGERとDOKKENですからね。80年代的なスタジアム・ハードロックを想像した人、ある意味正解です。けど、思ったよりも湿り気の強いメロディの正統派HR/HMだったのは、良い意味で予想を裏切ってくれてうれしかったな。
ロビンの哀愁味が強い歌声を前面に打ち出しつつ、メジャー感の強いHR/HMを表現する。もちろん、親しみやすい歌メロを備えつつ、楽器隊(主にギター)の派手さを見せることも忘れない。BON JOVIやWHITESNAKE、DEF LEPPARDなどがヒットチャートを席巻した80年代後半のUSメタルシーンを彷彿とさせる楽曲群はどれもクオリティが高いもので、ぶっちゃけ2020年の今これをやる必要があるのか?と疑問を感じることもゼロではありませんが、“やれる”人たちが“やるべきこと”をやっただけのこと。逆に、“やれる”人たち今これをやっていないから、彼らがやったと考えればいいわけで、こういったバンドが今誕生してこういうアルバムを世に放ったことは必然だったのです。
マイナーキーのミドルナンバー中心ながらも、シャッフルビートが心地よい「Big Disaster」、疾走感の強い「Shake The World」や「Unless We Change」、HEARTにも通ずるポップバラード「Make It There」、じっくり聴かせるスローナンバー「Divided/United」など楽曲も緩急に富んでいる。全11曲(日本盤ボーナストラック除く)で約57分と決して短くなないトータルランニングながらも、最後まで飽きずに楽しめるのは1曲1曲の完成度の高さや個性が際立っているからこそ。さすが職人!と納得してしまう高品質の1枚です。
ロビンはMSFではゲイリー・バーデンやグラハム・ボネットに次ぐ3番手だし、レブはWHITESNAKEでは常に2番手的扱いで、ジェフは現在のFOREIGNERでも裏方的印象が強い。マットもMR. BIGではパット・トーピーのサポートという意味合い濃厚だったので、全員が現在のシーンの中で“日陰”的存在なわけです。そういった人たちがBLACK SWAN(=黒い白鳥、コクチョウ。「予測できないことが出来事が起こる」の意)という名前で再び日陽に飛び出していく。そりゃ応援したくなりますよね。各メンバーとも自身のメインバンドでの活動が忙しいので、ツアーや来日公演などは今のところ望めそうもありませんが、ぜひ機会があったら一度ライブを観てみたいものです。きっとそのときは、各バンドのカバーもあるでしょうしね(笑)。
▼BLACK SWAN『SHAKE THE WORLD』
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