SUICIDE SILENCE『THE BLACK CROWN』(2011)
2011年7月12日にリリースされたSUICIDE SILENCEの3rdアルバム。日本盤は同年7月20日に発売されています。
1stアルバム『THE CLEANSING』(2007年)、2ndアルバム『NO TIME TO BLEED』(2009年)と着実に成長を続けてきた彼らにとって、その人気を確実なものへと決定づけたダメ押しの1枚。前作の時点で全米TOP40入り(最高32位)を果たしていたものの、本作ではついにTOP30入り(最高28位)を記録。本作で彼らに触れたというリスナーも少なくないのかもしれません。
僕は前作『NO TIME TO BLEED』をたまたま購入し彼らに音に触れていたのですが、デスコア然としていた前作の要素を残しつつも、ミドルテンポに比重を置いたメタルコア路線の楽曲が増え始めたことで、少しメジャー感が増したなという印象を受けました。とはいっても、ミッチ・ラッカー(Vo)の咆哮は相変わらず激しいままなので、そこに対して「日和った」なんて一切感じませんでしたが(コアなデスコアリスナーの中には、そう感じた方もいたのかもしれません)。
しかし、そんな本作から「You Only Live Once」というメタルコア寄りの楽曲が代表曲のひとつとして支持を集めるようになるのですから、結果としてはこの進化は好意的に受け入れられたということなのでしょう。同曲に続く「Fuck Everything」や「March To The Black Crown」といったナンバーも同系統ですが、ブラストビートを多用したブルータルな「Slaves To Substance」や「Human Violence」といった楽曲を配置したアルバム序盤から「You Only Live Once」以降の流れ、再びアグレッションが増す「Witness The Addiction」や「Smashed」などを用意した後半という流れは不思議と聴いていて疲れませんし、むしろ良い流れだなとポジティブに感じるほど。僕自身デスコアというジャンルに思いっきり傾倒していたわけではなかったので、逆に過去2作よりも本作のほうがリピートしやすい、聴きやすいと感じていたほどでした(MVはゴア感満載でしたけどね)。
終盤には不穏なギターフレーズを織り交ぜたミドルナンバー「The Only Thing That Sets Us Apart」というフックの効いた曲がありつつも、ラストはやはりこれ!と言わんばかりの「Cancerous Skies」で終了。なお、「Witness The Addiction」にジョナサン・デイヴィス(Vo/KORN)、「Cross-Eyed Catastrophe」にアレクシア・ロドリゲス(Vo/EYES SET TO KILL)、「Smashed」にフランク・ミューレン(Vo/ex. SUFFOCATION)がゲスト参加。「Cross-Eyed Catastrophe」で聴けるアレクシアの女性クリーンボイスは良いアクセントになっており、このへんも本作のメジャー感アップに貢献しているのかもしれません。
「これはハードコアなのか、それともヘヴィメタルの進化系なのか」なんて愚問は置いておいて、ヘヴィなサウンドを愛聴するリスナーにとっては「新しい波が来た!」とうれしくなるような1枚だったことだけは間違いありません。実際、そう感じていましたし。
だからこそ、カリスマ的な存在感を放っていたミッチが本作を最後にこの世を去ることになるなんて、リリース当時は想像もしていませんでした(ミッチは本作リリースから1年以上経った2012年11月1日、バイク事故で急逝)。改めて「You Only Live Once」という楽曲の歌詞が胸に沁みます。
▼SUICIDE SILENCE『THE BLACK CROWN』
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