SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』(2021)
2021年11月5日にリリースされたSeeYouSpaceCowboyの2ndアルバム。日本盤未発売。
SeeYouSpaceCowboyは米・カリフォルニア州サンディエゴ出身の5人組バンド。バンド名は日本の人気アニメ『カウボーイビバップ』からの引用で、そのサウンドはハードコアパンクをベースにメタルコア、マスコア、サスコアなどのサブジャンルを飲み込んだ変幻自在なもの。今年5月に発表されたIF I DIE FIRSTとのスプリットEP『A SURE DISASTER』も、収録曲「Bloodstainedeyes」のMVともども一部界隈で話題となりました。
1stアルバム『THE CORRELATION BETWEEN ENTRANCE AND EXIT WOUNDS』(2019年)から2年2ヶ月ぶりのフルアルバムとなる本作は、前作以上にカオティックな内容。各曲に付けられたその複雑かつ意味深な長尺タイトルもさることながら、1曲1曲の際立った個性は特筆に値するものがあります。なにせオープニングを飾る「Life As A Soap Opera Plot, 26 Years Running」(素晴らしいタイトル!)からして一筋縄でいかない展開が用意されており、全13曲/40分というトータルランニングがその事実以上にボリューミーで濃厚に感じられるのですから。
M-3「The End To A Brief Moment Of Lasting Intimacy」のようなエモ寄りの楽曲もあるにはあるものの、その多くは奇想天外で先の読めない展開が用意されたアレンジで、聴き手をまったく飽きさせることなく(むしろ、異様な集中力の高さを保ちつつ)最後まで到達させる。ものすごい構成力/爆発力で、ここまで正直最初はついていくのがやっと。しかし、何度も聴いているうちにその複雑怪奇な世界観に引き込まれ、夢中になっている自分に気づくはずです。
カオス以外に最適な表現が見当たらない彼らの楽曲/サウンドの数々は、確かに聴き手を選ぶ類のものかもしれません。しかし、キャッチーなメロディも要所要所に用意されており、そういった甘めのメロディが突如飛び込んできたときの心を鷲掴みにされる感覚も気持ち良い。そうすると、知らぬ間に軸となるカオティックな部分にも惹かれ始めていることに気づく。言ってしまえば、THE DILLINGER ESCAPE PLANがMY CHEMICAL ROMANCEあたりとコラボしたような、そんな贅沢さすら感じられるのではないでしょうか。
また、プロデュースをKNOCKED LOOSEのアイザック・ヘイル(G)、ミックスをウィル・パットニー(EVERY TIME I DIE、THE GHOST INSIDE、KNOCKED LOOSEなど)という強力な布陣が手がけており、そういった作品にキース・バックリー(Vo/EVERY TIME I DIE)、アーロン・ギレスピー(Dr, Vo/UNDEROATH)、SHAOLIN Gといった豪華な面々が華を添えているのも本作の聴きどころのひとつ。しかも、アルバムラストを飾るタイトルトラック「The Romance Of Affliction」では先のIF I DIE FIRSTとの再コラボも実現しており、ダーク&ゴシックかつカオティックなサウンドスケープが展開されており、最後の最後に響き渡るスクリームの残響まで気を抜けない、聴きどころ満載の傑作に仕上がっています。
言葉で表現するのが非常に難しいタイプのサウンド/音楽性ではありますが、だからこそハマったときの気持ちよさは一段と強いものがある。そのヴィジュアルから伝わるカリスマ性含め、個人的にも今年後半に聴いたこの手の作品の中ではダントツの1位だと断言しておきます。
▼SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』
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