DIRTY HONEY『DIRTY HONEY』(2021)
2021年4月23日にリリースされたDIRTY HONEYの1stフルアルバム。現時点で日本盤未発売。
2019年春に発表された6曲入りEP『DIRTY HONEY』に次ぐまとまった作品集で、今年発表されたデジタルシングル4曲のうちAEROSMITHのカバー「Last Child」を除く3曲が本作に収録されています。タイトルと色違いのジャケットのせいで、前述のEPとこのアルバム、内容が一緒か、もしくはEPに新曲を追加しただけでは?と思われがちですが、EP収録曲はこのフルアルバムの8曲には一切含まれていないのでご安心を。つうか、同タイトルと色違いジャケってまぎらわしいね?
さて。本来なら昨年春の『DOWNLOAD JAPAN』で初来日を果たし、日本のロックファンの前で華々しいデビューステージを繰り広げる予定だった彼ら。残念ながらコロナの影響で来日が中止になってしまったことで、依然ここ日本での知名度は低いまま。すでにアメリカでは前EP収録曲がヒットし、ALTER BRIDGEやGUNS N' ROSES、THE WHOのオープニングアクトを務めるなどして「期待の新人」としての地位を高めております。
そんな状況下で、ついに日の目を見た1stフルアルバム。プロデュースを手がけるのは、彼らを発掘したと言われるニック・ディディア(POWDERFINGER、INCUBUS、STONE TEMPLE PILOTSなど)。EPから引き続きのプロデュースとなりますが、このバンドの魅力を遺憾無く発揮したサウンドプロダクションは非常に好感の持てるもので、良い意味で80〜90年代のメインストリームサウンドを倣ったものと言えるでしょう。
ですが、楽曲自体は(EPのレビューにも書いたように)70年代のロッククラシックをベースにした土着的なもので、そこに80年代のハードロックが持つ煌びやかさ、90年代のグランジ……中でもSOUNDGARDENやALICE IN CHAINS、STONE TEMPLE PILOTSあたりに備わっていた華やかさが散りばめられている。ロック不毛と言われる2021年においてはいささか時代錯誤ながらも、ロック全盛期を通過したリスナーにとっては救世主と言わんばかりの魅力持つバンド/アルバムと言えるでしょう。
LED ZEPPELINやAEROSMIT、AC/DCを通過したグルーヴィーなロックサウンドを下地に、HUMBLE PIEやFREE、あるいはジャニス・ジョプリンあたりを彷彿とさせるルーツ感、さらにはGUNS N' ROSES的な危うさやキラキラ感が伝わるアレンジは非常にツボを押さえたもので、かつメロディにはキャッチーさが備わっている。マーク・ラベル(Vo)のボーカルからはアクセル・ローズやクリス・コーネルが持つ色気と、スティーヴ・マリオットやポール・ロジャースのような渋みが伝わる。とても2020年代のバンドとは思えない……という点においてはGRETA VAN FLEETと重なるものがありますが、こちらのほうが個人的に好感を持てるのは、やはり「小難しいことを考えず、とりあえずロックンロール」感が強いところでしょうか(笑)。いや、これって非常に大事なんですよ?
成功を夢見てLAに出てきたという点も非常にオールドスクールですし、すべてにおいて(僕の中では)理想的なロックバンド。全8曲で32分という昔ながらのトータルランニング含め、完璧すぎる1stアルバム。あとは、どれだけ若い世代に響くかどうか……そこが一番の課題なんですが、どうにかそこをクリアしてもらいたいものです。
▼DIRTY HONEY『DIRTY HONEY』
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