THE JEFF HEALEY BAND『SEE THE LIGHT』(1988)
1988年9月にリリースされたTHE JEFF HEALEY BANDの1stアルバム。日本盤は海外から2ヶ月遅れの、同年11月に発売されました。
THE JEFF HEALEY BANDはカナダ出身のジェフ・ヒーリー(Vo, G)を中心に結成されたトリオバンド。ジェフは1歳のときに病気で盲目となりながらも、3歳でギターを手にし、膝上にギターを乗せて弾く独自のスタイルで注目を集めます。
Arista Recordsと契約後、発表された本作はジミー・アイオヴィン(ブルース・スプリングスティーン、U2、SIMPLE MINDSなど)やグレッグ・ラダニー(ジャクソン・ブラウン、ウォーレン・ジヴォン、ドン・ヘンリーなど)、トム・パヌンジオ(アリス・クーパー、BLACK SABBATH、DEEP PURPLEなど)をプロデューサーに迎え制作。トリオ編成ならではのスリリングな演奏と、ブルージーながらも耳触りが良いAOR寄りの楽曲が楽しめるロックアルバムに仕上がっています。
音だけ聴けば、これが盲目のギタリストが歌いプレイしたアルバムとは思えないはず。それくらいジェフのギタープレイは卓越したものがあり、それはエリック・クラプトンやジョニー・ウィンター、あるいはスティーヴィー・レイ・ヴォーンにも通ずる、親しみやすさとマニアックさが同居したスタイルで、ロックファンなら間違いなく楽しめる要素が満載だと思います。ボーカリストとしても派手さこそ皆無ながらも説得力の強い歌を楽しむことができるので、これらの名前にピンときたリスナーなら絶対に引っかかるものがあるはずです。
楽曲に関しても、先に挙げたようなギタリストのアルバム同様に、単なるギター・オリエンテッド・アルバムでは終わっておらず、しっかり“聴かせる”ことに徹した完成度の高いナンバーが並びます。全12曲の内訳はオリジナルが半分、ZZ TOPやフレディ・キングなどブルースなどのカバーと外部ライター提供楽曲が半分。中でもジョン・ハイアットの貢献度が非常に高く、全米5位を記録した名バラード「Angel Eyes」も彼の手によるものです。
リリース当時、TBSで日曜深夜に放送されていたHR/HM系音楽番組『PURE ROCK』で紹介されたことで、僕は彼らを知ったわけですが、そこから数ヶ月後には「Angel Eyes」がUS TOP40を紹介する番組でもオンエアされ、改めてアルバムを手にしたという経緯があります。当時高校生だった自分にはちょっと敷居が高いイメージの強かった1枚ですが、よくよく聴くと(先に触れたように)AORっぽさもあって意外と聴きやすい。特にTHE BLACK CROWESがヒットした90年代前半にはジョニー・ウィンターなどの延長で本作を楽しむことができました。なので、ブルースロックやソウル、カントリーなどの影響下にあるハードロックが好きというリスナーなら、本作にスッと入っていきやすいのではないでしょうか。
2000年頃からはソロ名義で音楽活動を続けていたジェフですが、2008年3月にガンのため41歳で逝去。思えば視力を失ったのもガンが原因だったので、彼の人生は常に病魔と隣り合わせだったのかもしれません。
▼THE JEFF HEALEY BAND『SEE THE LIGHT』
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