WHITESNAKE『THE BLUES ALBUM』(2021)
2021年2月19日にリリースされたWHITESNAKEの最新コンピレーションアルバム。
本作は昨年6月発売の『THE ROCK ALBUM』、11月発売の『LOVE SONGS』に続く、<Red, White and Blues Trilogy>と題した新編集によるベストアルバム三部作の最終章。Red=ラブソング、White=ロックアンセム、Blue=ブルースをテーマに選曲された楽曲群が、最新リマスター&リミックスにより新たな形に生まれ変わりまとめられています。
今作は文字通り、ブルース“寄り”の楽曲を集めたもの。WHITESNAKEでブルースナンバーといえば、それこそ70年代後半から80年代初頭の名盤たちからの楽曲を多数イメージするかと思いますが、そこは今のデヴィッド・カヴァーデイルのこと。本格的全米進出を果たす『SLIDE IT IN』(1984年)以降の作品からピックアップされた楽曲群のみで構成されており、初期の彼らに多少なりとも魅せられた身としては若干の肩透かしは否めません。
以下、収録曲の内訳です。
M-4:『SLIDE IT IN』(1984年)
M-3、13、14:『WHITESNAKE』(1987年)
M-4、6、12:『RESTLESS HEART』(1997年)
M-8:『INTO THE LIGHT』(2000年/ソロ)
M-10:『LIVE: IN THE SHADOW OF THE BLUES』(2006年)
M-2、7、11:『GOOD TO BE BAD』(2008年)
M-1、9:『FOREVERMORE』(2011年)
過去2作にあったようなアウトテイク(未発表曲)は今回皆無。『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)からは1曲も選ばれていません。まあブルースっぽい曲、ほとんどなかったしね。入れるならせめて「Sailing Ships」かなと思ったんですけど、違ったようです(単純に収録容量の問題も大きいかと。本作は3作中もっとも少ない14曲ですが、トータルランニングは78分ありますし)。
「Give Me All Your Love」がブルースか?と問われると確かに疑問ですが、この曲をシンプルに演奏したら確かにブルースなんですよね。まあ、あの音がすべての元凶なわけなので、ここではその話題は置いておきます(苦笑)。また、個人的にはCOVERDALE・PAGEあたりからも1曲くらい選んでくれてもよかったのに、と思っていたのですが、そっちはそっちで間もなく30周年エディションの準備があるようなのでタマを残しておきたいのでしょう。
で、ザーッと通して聴いてみたのですが……ある程度納得できる、無難な戦局かなと。でも、『THE ROCK ALBUM』との違いってなんだろう?と。だって、先の「Give Me All Your Love」なんて『THE ROCK ALBUM』にも収録されているんですから、最初は何かの間違いかと思いましたよ。それ入れるんだったら、ほかにもセレクトすべき曲はあっただろ、と。「Too Many Tears」も被りっちゃあ被りですが、『LOVE SONGS』に収録されたのはカヴァーデイルのソロアルバム『INTO THE LIGHT』バージョンで、こっちは『RESTLESS HEART』バージョン。そこでカサ増しするほど曲が少ないわけじゃないでしょうに。もうちょっと3作購入する側のことも考えてほしかったな(まあ、そういうコンセプトなんだよ!と言われてしまったらそれまでですが)。
過去2作同様、今作でも録音の時代/環境/エンジニアが異なる音源を統一感の強いリミックスにより再構築。『WHITESNAKE』の音も『RESTLESS HEART』の音も、続けて聴いて違和感なく楽しめます。というか、『WHITESNAKE』のサウンドは数年前のリマスターバージョンよりも派手さが抑え気味で、個人的に好み。これはあれですかね、2000年代以降のアルバムに合わせた結果なんでしょうかね。「Steal Your Heart Away」や「If You Want Me」あたりを聴いて、そう感じました。
あと、個人的ツボはもうひとつ。終盤の4曲……「A Fool In Love」「Woman Trouble Blues」「Looking For Love」「Crying In The Rain」の流れが非常によかったこと。「A Fool In Love」はアレンジ的に「Crying In The Rain」の亜流と切り捨てることもできなくはないけど、アリーナロック期のWHITESNAKEによるブルースの解釈がよくわかる4曲ではないかと思いました。「Looking For Love」もブルースというよりはヘヴィバラードの類なんだけど、この並びで聴くと確かにブルースだなと納得させられます(フェードアウトしないエンディングも良し)。それと、肝心なのが「Crying In The Rain」。オープニングに付け加えられた音やシンセやオルガンを強調したミックス含め、どこか『SAINTS AND SINNERS』(1982年)収録のオリジナルバージョンへのオマージュが見え隠れします(ギターはジョン・サイクスのギターは相変わらずうるさいけど。笑)。
そんなわけで、三部作がこれですべて揃いました。この3枚を聴けばWHITESNAKEのすべてがわかる……わけではありません(苦笑)。世の中的なWHITESNAKEを知るにはこれでいいのかもしれませんが、真の意味でのWHITESNAKEを知りたければ、輸入盤で発売中の3枚組ベストアルバム『30TH ANNIVERSARY COLLECTION』(2008年)を手にすることをオススメして、このレビューを締めくくりたいと思います。
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